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2011.01.28 Fri
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- 1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/27(木) 09:22:20.58 ID:sz15Npx90
-
8月某日
純「面白かったねー、祭り!」
憂「うん!」
純「あー、でも焼きとうもろこし…私も食べればよかったかなー?」
憂「純ちゃん…あんまり食べると…」
純「ストップ!それ以上はダメだよ、憂!」
憂「う…うん」
純「って、もう着いちゃったか…憂の家」
憂「あ…葉書来てる…。梓ちゃんからだ」
純「なになに?あぁ…残暑見舞いだね。私もジャズ研の先輩達に出そうかなー?」
憂「………」 -
- 2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/27(木) 09:24:37.23 ID:sz15Npx90
-
純「おっと…じゃあ私そろそろ帰るね!」
憂「…あ!待って!送って行くよ!」
純「でも…いいの?そろそろ唯先輩帰ってくるんじゃ…?」
憂「ちょっと待ってて。葉書置いてくるから…」
純「うん…」
◇ ◇
純「…」
憂「…」
純「憂?さっきから何か変だけど…どうしたの?」
憂「純ちゃん…あのね…?」
純「?」 -
- 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/27(木) 09:26:35.09 ID:sz15Npx90
-
◆ ◆
翌日
梓「…暇だなぁ」
梓「夏休みの宿題…は殆ど終わったし」
梓「トンちゃんの餌…はさっきあげたし」
梓「…練習しようかな」
ピリリリリリ ピリリリリリ
梓「電話…憂からだ」
ピッ
梓「もしもし?憂?」 -
- 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/27(木) 09:29:14.62 ID:sz15Npx90
-
憂『……』
梓「もしもーし?」
憂『梓ちゃん…』
梓「どうしたの?何かあったの?」
憂『今からお家に行っても…いいかな?』
梓「え?…いいよ?…実は留守番してて、退屈だったんだ」
憂『それじゃあ…行くね?』
梓「うん!待ってるから」
ピッ
梓「憂…どうかしたのかな…?」 -
- 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/27(木) 09:30:59.59 ID:sz15Npx90
-
◇ ◇
ピンポーン
梓「はーい!」
ガチャ
憂「……」
梓「いらっしゃい。憂」
憂「梓ちゃん…」
梓「憂?」
憂「…ごめんなさい」
梓「え…?」
憂「ごめんなさい…!」
梓「あの…えぇと…」
憂「…」
梓「と…とりあえず上がってよ!…ね?」
憂「…うん」 -
- 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/27(木) 09:32:59.80 ID:sz15Npx90
-
◇ ◇
梓「…はい、麦茶」
憂「…」
梓「憂?」
憂「ごめんなさい…」
梓「もぅ…謝ってばっかじゃわかんないよ?」
憂「…」
梓「説明…してくれる?」
憂「うん…」 -
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/27(木) 09:35:06.29 ID:sz15Npx90
-
憂「昨日…プール行ったでしょ?」
梓「うん、面白かったね!」
憂「あの時…お姉ちゃんの話…したよね?」
梓「え?…あぁ…ごめん、あの時ちょっと言い過ぎたかも」
憂「ううん…いいの。…私、やっと気付いたんだ」
梓「気付いた?」
憂「お姉ちゃんを分かってくれる人はいるんだ、って」
憂「梓ちゃんは…お姉ちゃんの良いところも、そうじゃないところも分かってくれて、それでも見放さないんだ、って」
梓「あ…でも、それは…」
憂「うん…『普通』なんだよね」
憂「私はそんな『普通』のことも…気付かないでいたの」
梓「憂…」 -
- 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/27(木) 09:37:19.16 ID:sz15Npx90
-
憂「私はお姉ちゃんの良いところたくさん知ってるけど…」
憂「昔から周りの人は…ほとんど分かってくれなくて」
憂「だから私が…お姉ちゃんのことを助けてあげようって思ったの」
梓「…」
憂「でも…いつの間にか私は、周りが見えなくなってた」
憂「軽音部に入ったって聞いたとき…本当は不安だったの」
憂「新しい場所で新しい事を始めて…良く思われないんじゃないかって」
憂「部活なんて、やらなくていいのにって」
梓「……」 -
- 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/27(木) 09:39:41.14 ID:sz15Npx90
-
憂「だけど、軽音部の皆さんは優しくて…お姉ちゃんを悪く言わなくて」
憂「お姉ちゃんも変わらなくて…私は安心してた。…ううん、しちゃってたんだね」
憂「…そんな時、梓ちゃんに会ったの」
梓「私…?」
憂「新勧ライブの日のこと…覚えてる?」
梓「うん…なんかもう懐かしいね」
憂「私はきっと…『身代わり』が欲しかったんだと思う」
梓「身代わり?」
憂「私の代わりにお姉ちゃんのそばにいてくれる人…」
憂「私が軽音部に入ったらきっと…比べられちゃうから…」
梓「…」 -
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/27(木) 09:41:44.45 ID:sz15Npx90
-
憂「酷いよね…こんなの…お姉ちゃんのこと助けたいって思ってるくせに…」
憂「お姉ちゃんに縋りついて…縛りつけて…」
憂「周りの人も…気付かないうちに傷つけてた…」
梓「それで…『ごめんなさい』?」
憂「うん…」
梓「……憂さ、何か忘れてない?」
憂「え…?」
梓「ライブに誘われてついて行ったのも…軽音部に入ったのも」
梓「いま続けてるのだって…私の意思なんだよ?」
憂「…!」 -
- 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/27(木) 09:43:59.39 ID:sz15Npx90
-
梓「…傷つけられたなんて全然思ってないし…むしろ感謝してるよ」
憂「…」
梓「あの時、憂が背中を押してくれなかったら、きっと軽音部に入ってなくて」
梓「固い考えのまんま音楽続けて…そのうち挫折しちゃってたんじゃないかな」
憂「え…っ?」
梓「音楽はもっとストイックに追求すべきだー、とか考えてさ」
憂「…梓ちゃんギター上手いのに」
梓「そういう事じゃないんだよ、憂」
梓「上手い下手がないわけじゃないけど…その人にはその人だけの音があって」
梓「その一生懸命な音をみんなで合わせるから、きっといいものになるんだよ」 -
- 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/27(木) 09:46:08.03 ID:sz15Npx90
-
梓「なんて、これは澪先輩の受け売りなんだけどね」
憂「…」
梓「でも、よく考えたらこれも『普通』なんだよ」
梓「私も『普通』のことに気付かないでいたんだ」
憂「梓ちゃん…」
梓「それに、知らないうちに人を傷つけるなんて…誰だってあるよ」
梓「私なんか凄いかもね?」
憂「そんな…」
梓「自分で言うのもなんだけど、頑固だし、不器用だし、融通利かないし」
憂「そんなことないよ!梓ちゃんのこと優しくて好きだって言ってる子、いっぱいいるよ!」
梓「そう?」
憂「そうだよ!」 -
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/27(木) 09:48:18.80 ID:sz15Npx90
-
梓「…きっとそれも憂のおかげだね」
憂「私の…?」
梓「憂と一緒にいると…なんて言うか、あったかい気分になって」
梓「優しくなれる気がするんだよね。上手く説明できないけど」
憂「………」
梓「憂?」
憂「…ゆうべね、梓ちゃんと別れたあと、純ちゃんをバス停まで送っていって」
憂「純ちゃんにも謝ったの」
梓「…うん」
憂「そしたら、いまの梓ちゃんと同じこと言ってたから…」
梓「だったらそうなんだよ!絶対!」
憂「…」
梓「憂は、優しい子だよ」 -
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/27(木) 09:50:50.12 ID:sz15Npx90
-
梓「それに、憂はさっき唯先輩のこと縛り付けてるとか言ってたけど…」
梓「きっと唯先輩はそんな風には思ってないよ」
憂「そう…かな…?」
梓「部活終わったあとの帰り道って、最後は私と唯先輩のふたりになるんだけど」
梓「そしたら大抵、憂の話だもん」
憂「…」
梓「『ねぇねぇあずにゃん、聞いて聞いて~!憂がね~』って」
憂「本当…?」
梓「うん。唯先輩も憂のこと大好きなんだね…。じゃないとあんな風に笑って話さないよ」 -
- 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/27(木) 09:53:00.26 ID:sz15Npx90
-
憂「でも私…お姉ちゃん離れしないと…いけないよね…」
梓「…」
憂「…」
梓「ゆっくりで…いいと思うよ」
憂「…」
梓「私でさえ…こんな…なんだもん」
梓「ずっと…一緒だったんでしょ?」
憂「うん…」
梓「だから…ゆっくりでいいと思う」
憂「梓ちゃん…」 -
- 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/27(木) 09:55:35.07 ID:sz15Npx90
-
憂「私…軽音部…」
梓「それも…ゆっくり考えてよ」
梓「憂が決めたことなら私は絶対、恨んだりなんかしないし…!」
憂「…うん」
憂「ありがとう、梓ちゃん」
梓「お互いに不安になることも…きっとあると思うけど…いっしょに頑張ろ?」
憂「うん…!」 -
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/27(木) 09:57:40.55 ID:sz15Npx90
-
◇ ◇
梓「あ…麦茶、ちょっとぬるくなっちゃってる…」
憂「ごめんね、私のせいで…」
梓「いいっていいって!また氷入れればいいんだし」
憂「そう…だね。きっと他のことも…そうなんだよね」
梓「……うん」
憂「…梓ちゃんが友達になってくれて…よかった」
梓「それは私も同じだよ」
憂梓「…えへへ」
ピリリリリリ ピリリリリリ
梓「あ…純だ」 -
- 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/27(木) 10:00:35.13 ID:sz15Npx90
-
ピッ
梓「もしm」
純『あずさあああああああああああ!!!』
梓「うわっ!な…なに!?」
純『暇!』
梓「純…宿題は?」
純『それはそれ、これはこれ』
梓「……」 -
- 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/27(木) 10:02:57.63 ID:sz15Npx90
-
純『今から遊びに行ってもいいよね?』
梓「まぁ…いいけど」
憂「純ちゃんもおいでよー!」
純『え!?何!?憂もいるの!?行く!絶対行く!今すぐ行くから!!』
プツッ
ツー ツー
梓「まったくもぅ…」
憂「今日も元気だね、純ちゃん」 -
- 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/27(木) 10:04:59.05 ID:sz15Npx90
-
ピンポーン ピンポーン
憂梓「はやっ!!」
梓「絶対近くまで来てたな…」
憂「あはは…」
梓「やれやれ」
梓「行こっか?憂」
憂「うん!」
ガチャ
純「ぃやっほーぅ!」
憂梓「いらっしゃーい!」
おしまい -
- 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/27(木) 10:07:44.37 ID:sz15Npx90
-
なんだかんだで読んでくれた人に感謝
スレ建てて書いたの初めてだから妙に緊張するわ
- 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/27(木) 10:44:33.54 ID:8hHrIxxM0
-
乙だよ
- 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/27(木) 14:10:38.81 ID:yfZaqjGX0
-
おつ!!
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2011.01.28 Fri
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- 1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:02:20.76 ID:aPC1ya8vP
-
校内階段
律「あー、階段かったるいな」
澪「このくらいで面倒がってどうする。きりきり登れ」
紬「でも階段でよかったわよね。怖い方の怪談だったら、大変だもの」
澪「え」 びくっ
唯「そういえばこの学校って、七不思議とかあるのかな」
紬「たまに、林で見かけるわよね」
律「何が擬態してるんだよ」
- 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:04:38.19 ID:aPC1ya8vP
-
軽音部部室
律「あー、やっと着いた」 どたっ
唯「よく考えると、この部室って元は音楽室だよね」
紬「となると、独りでに鳴るピアノ?」
律「オルガンはあるけどな」
澪「鳴らない、鳴らない。大体どんな事にも、理由があるんだ」
唯「例えば?」
澪「怖いと思うから怖いんだよ。お化けなんて、目を閉じてれば勝手に通り過ぎてく物だ」
律(可愛いから、突っ込まないでおこう)
- 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:06:38.95 ID:aPC1ya8vP
-
梓「済みません、遅れました」
澪「ひぃっ」 びくっ
梓「ええっ?」 びくっ
律「二人とも落ち着け。梓は、七不思議って知ってるか?」
梓「一般的な話は知ってますけどね。つまりはオカルトでしょう」
律「醒めてるな、おい」
梓「私はそういう、不確実な話は信じてないんです」
紬「梓ちゃんは、お化けとか怖くないの?」
梓「本当にいるなら怖いですけど。でも、いませんから」
澪「誰が決めたんだ、それは」 ぎろっ
梓(何故、真顔)
- 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:08:39.04 ID:aPC1ya8vP
-
唯「ピアノ以外だと、なんだっけ」
紬「銅像が動くとか」
梓「理科室の人形が動くパターンもありますね」
律「澪じゃないけど、何となく怖いって部分が多いな」
紬「結局オカルトって、そんな物なのかしら」
澪「当たり前だろ。さっきも言ったように、あると思うからあるように思えるんだ。確かな物は、自分自身だけなんだよ」
唯「我思う、故に我ありだよね」
律「一応突っ込むけど、デカルトな」
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:10:43.39 ID:aPC1ya8vP
-
梓「七不思議ではないですけど、身近なのはこっくりさんですよね」
紬「確かに定番ね、それは」
澪「やるとか言うなよ」
律「やんないけどさ。というか、今の唯がこっくりさんだしな」
澪「寝てるって意味か」
唯「・・・ね、寝てないよ」 じゅるっ
梓「でも唯先輩はキツネよりも、タヌキってイメージですけど」
唯「もう、あずにゃんの意地悪。私、ポンポンしちゃう」
澪「ゆ、唯がタヌキになった?それとも、タヌキが唯?」
律「うん、どっちも違うから」
- 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:12:44.92 ID:aPC1ya8vP
-
唯「・・・」 こっくり、こっくり
律「だったら唯は、どうして寝てるんだ?」
澪「何事にも理由がある。例えば、早起きしてギターの練習をしてたとか」
紬「・・・謎は解けた」
律「違うと思うけど、取りあえず名探偵の推理を聞いてみるか」
紬「犯人はこのアップルパイに、睡眠薬を仕込んでたのよ」
梓「僭越ながら突っ込みますけど、それムギ先輩が持って来たんですよね」
紬「はっ。という事は、犯人は私っ?」
律「ヤス以上に唐突な真犯人だな」
- 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:14:45.83 ID:aPC1ya8vP
-
梓「唯先輩、調子悪いんですか?」
唯「・・・ん?昨日は憂と、遅くまで一緒に起きててね。ちょっと眠いんだ」
梓「ゲームでもしてました?」
唯「まあね。後は一緒にお風呂に入ったり、夜空を見たり。お茶飲んだりしてたよ」
紬「まったりした、良い時間の過ごし方ね♪」
唯「そかな」
紬「平穏な日々こそが、一番の幸せなのよ」
澪「今ムギが、良い事言ったぞ」
律「へー。マヤ歴だと、2012年に世界滅亡だってさ」
澪「人の話を聞け」 ぐりぐり
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:17:00.86 ID:aPC1ya8vP
-
梓「世界が滅亡するような出来事なんて、突然起きますか?」
律「彗星が来るのかもな」
澪「でも、落ちてくる訳じゃ無いだろ。せいぜい、彗星の尻尾。ガスが地球をかすめるくらいだ」
唯「だったら、息止める練習しないとね」
紬「私、全員分の浮き輪を買うわ♪」
唯「ムギちゃん頭良いー♪」
律「JAXAも真っ青だな、お前らは」
- 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:19:19.38 ID:aPC1ya8vP
-
律「このままじゃ、埒が開かん。ちょっと聞いて回るか」
澪「何を聞くんだよ」
律「七不思議だよ、七不思議。7つ出揃ってないだろ」
梓「でも7つ揃う事は無いと思いますよ。中学校でも4つか5つでしたし」
唯「はっ。もしかして、それ自体が七不思議の一つ?」
紬「ありうる。ありうるわよ、唯ちゃんっ」
澪「あー。なんだか、鳥肌が立ってきた」 ぶるぶるっ
梓(怖い割には、先輩達楽しそうだな)
- 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:21:20.97 ID:aPC1ya8vP
-
職員室
さわ子「七不思議?多分、あなた達が知ってる事と同じだと思うわよ」
紬「さわ子先生は、ここのOGですよね。当時は、何か噂とかありませんでした?」
さわ子「獅子舞のお化けが出るって噂は、一時あったわね」
唯「それって、もしかして」
さわ子「そうよ。尖ってた頃の、私の事よ」 ふっ
梓(格好いいんだか、格好悪いんだか。でも、大人の匂いがするんだよね♪) くんかくんか
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:23:39.14 ID:aPC1ya8vP
-
律「職員室は、・・・出そうにないか」
さわ子「宿直もするけれど、出た事無いし聞いた事も無いわね。そういうのは大抵、何かの見間違いか思い込みよ」
澪「そうですよね。お化けが歩き回るなんて、人間が寝静まった後ですよ」
さわ子「・・・その辺は知らないけれど、お化けも幽霊もこの学校にはいないわよ」
律「さわちゃんの年齢自体が、オカルトだったりしてな。だははー」
さわ子「神隠しに遭わせるぞ、このデコッパチ」
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:25:40.71 ID:aPC1ya8vP
-
廊下
律「あー、ひどい目に遭った」
澪「自業自得だ。さわ子先生以外で知ってそうなのは、和か」
紬「生徒会長だし、むしろさわ子先生より色々情報を持ってるかも知れないわね」
唯「和ちゃんが、妖怪博士って事?」
澪「侮れないな、和も」
梓(唯先輩の発想の方が、侮れないけどな)
- 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:27:43.66 ID:aPC1ya8vP
-
生徒会室
律「頼もー」
和「あら、みんな揃ってどうしたの。それと律、講堂の使用許可申請をまだもらってないわよ」
澪「お前なー」
唯「鬼じゃ、鬼が出たぞっ。あー、くわばらくわばら」
和「それは雷でしょ。今日はお化けでも探してるの?」
唯「さすが和ちゃん。良く分かったね」
和「唯のやる事は何でも分かるわよ♪」
唯「てへへー♪」
梓(すごいな、真鍋先輩は。それに、凛とした匂いがするし♪) くんかくんか
- 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:29:44.16 ID:aPC1ya8vP
-
和「・・・七不思議か。音楽室や歴史室の肖像画の目が動くとか?」
律「あー、なんかあるな」
和「それと、プールで足を引っ張られる話」
紬「定番ね、それも」
和「・・・後は、部員が一人多かったって話とか」
澪「えっ」 びくっ
紬「わー、なんだか怖そうー♪」
梓(何故、笑顔)
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:31:44.93 ID:aPC1ya8vP
-
和「学園物のオカルト話で良くあるパターンだと思うけれど。クラスメートが一人少ないとか」
律「そう言われてみると、なんかあるな」
梓「それは、どんな理由なんですか」
紬「・・・謎は解けた」
律「全員突っ込みたいだろうが、一応名探偵の意見を聞いてみるか」
紬「簡単よ、明智君。それは、自分自身をカウントしていないんだわっ」
律「ぼけたオチだけど、それなりには斬新だな」
梓「明智君が助手なのも含めてですけどね」
- 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:33:57.03 ID:aPC1ya8vP
-
和「ピアノ、銅像、人形。肖像画、プール。それと部員。・・・これで、6つまでは出てきたわね」
律「最後の1つは何だろう」
澪「・・・というか、最後の1つが見つかったら何が起きるんだ?」 ぶるぶるっ
律「百物語じゃないんだからよ。さわちゃんと和が知らないなら、この辺で打ち止めか」
和「それは知らないけど、そろそろ終業時間よ。帰る準備でもしたら?」
唯「・・・今日、学校に泊まり込むのは?」
澪「えっ」 びくっ
和「駄目です。唯は早く帰って、憂を安心させなさい」
唯「はーい♪」
- 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:35:58.20 ID:aPC1ya8vP
-
軽音部部室
律「泊まり込むのは、良いアイディアだったけどな」
澪「私は絶対泊まらないぞ」
唯「でも暗い中一人で帰るのも、ちょっと怖いよね」 ぼそっ
澪「えっ」 びくっ
紬「引くも地獄進むも地獄ね♪」
梓(何故、良い笑顔)
- 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:38:20.25 ID:aPC1ya8vP
-
澪「早く、早く帰るぞ」
律「慌てるなよ。まだ終業時間になってないだろ」
唯「でも澪ちゃんが怖いなら、やっぱり早く帰った方が良いよ」
澪「唯ー♪」
律「一人でなっ」 びしっ
澪「ひぃっ」 びくっ
- 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:40:21.21 ID:aPC1ya8vP
-
紬「冗談よ、冗談。今日はりっちゃんが一人で泊まり込むらしいから、私達は帰りましょ」
梓「律先輩、お先に失礼します」
唯「りっちゃん、また明日ねー」
律「え、ええーっ」 びくっ
紬「冗談よ、冗談」
律「お、お前らなー。・・・澪、今日泊まりに行って良いか」
澪「あ、ああ。むしろ来い」
紬「うふふ♪」 きらきらっ
- 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:42:25.99 ID:aPC1ya8vP
-
夕方、商店街
澪「それで、和が言ってた申請書は?」
律「ああ、忘れてた。全部書いたから、後は提出するだけなんだけどさ」
澪「ちゃんと書けてるのか?」
律「大丈夫だよ、ほら」 ぱさっ
- 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:44:23.29 ID:aPC1ya8vP
-
講堂使用許可申請書
──────────────
部名 軽音部
──────────────
使用目的 楽曲の発表
──────────────
顧問 山中さわ子
──────────────
部長 田井中律
部員 秋山澪
琴吹紬
平沢唯
中野梓
・・・・・
-
29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:46:23.82 ID:aPC1ya8vP -
澪「・・・最後、何?」
律「何が」
紬「書いて、消した跡があるわね」
律「そういう冗談は良いんだってば」
梓「いえ。やっぱり書いてありますよ」
唯「軽音部って、6人だった?」
律「おいおい、本当に止めろよ。・・・あれ」
- 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:48:25.22 ID:aPC1ya8vP
-
律「・・・ちょっと待てよ。まずは澪だろ」
澪「それに、ムギ」
紬「ええ。そして、唯ちゃん」
唯「で、あずにゃん」
梓「最後に、律先輩」
唯「5人、だよね」
- 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:50:27.62 ID:aPC1ya8vP
-
梓「でもこれは、6人目が書いてあったんですよね」
紬「書いて、消してある。つまり6人いたのに、一人消えたって事?」
澪「誰だっけ、それ」
梓「お、落ち着いて下さい。澪先輩、そんな人はいませんよ」
澪「だったら、誰?」
しーん -
- 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:52:31.02 ID:aPC1ya8vP
-
澪「・・・私って、本当に私?」
律「怖いから、マジで止めろ」
紬「それとも、まさに幽霊部員?」
唯「で、でも。見た事無いよ」
紬「唯ちゃん落ち着いて。幽霊だから、姿は見えないのよ」
律「いや。まずはムギが落ち着けよ」
梓「あ、唯先輩の後ろに」
唯、澪「ひぇーっ」
- 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:54:31.95 ID:aPC1ya8vP
-
平沢家、リビング
唯「もう。後ろにいるのが憂なら憂って言ってくれれば良いのに」
梓「だって唯先輩も澪先輩も、その前に走って逃げたじゃないですか」
憂「まあまあ♪・・これ、「トンちゃん」って書いてない?」
唯「そう言われてみると、確かにね」
澪「・・・思い出した。「トンちゃん」って書いた後で、ふざけるなって消したんだ」
律「全く、悪い奴がいるな」
澪「書いたのはお前だろ」 ぐりぐりっ
律「ひぇーっ」
梓「でも良かったですよ、理由が分かって」
紬「ちょっと惜しかったわね」 しょんぼり
梓(何故、残念そう)
- 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:56:34.81 ID:aPC1ya8vP
-
唯「せっかくみんな来たんだし、今日は泊まっていってよ」
澪「今日は遠慮なく、そうさせてもらう。はぁ」
律「しゃーない。ここは田井中式ハンバーグを作るとするか」
憂「私、手伝います」
紬「いいから、いいから。憂ちゃんはゆっくり休んでて」
憂「でも」
律「たまにはお姉さん達を頼りなさいって事さ」
憂「はい♪」
- 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:58:41.13 ID:aPC1ya8vP
-
澪「あー、良かった。本当に良かったよ」 ぐったり
唯「はっ、もしかして」
澪「な、なんだ」 びくっ
唯「独りでになるオルガンって、もしかしてトンちゃんが弾いてるのかな」
澪「それはそれで、ある意味怖いな」 くすっ
唯「月明かりを浴びながら、鍵盤から鍵盤へトンちゃんが飛び回るんだよ」
澪「そこまで行くと、オカルトよりもファンタジーだな」
唯「楽しそうで良いよね」
憂「ふふ♪」
- 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 20:00:42.01 ID:aPC1ya8vP
-
澪「駄目だな-、私は」
唯「何が?」
澪「どうしても、ネガティブな方へ発想しちゃうから。唯みたいに、ポジティブに考えられれば良いのに」
憂「でも色々な状況を想定するのは大切ですから、澪さんの発想も良いと私は思いますよ」
澪「ありがとう。・・・私も、憂ちゃんみたいな妹が欲しかったな」
唯「だってさ、憂♪」
憂「私は、お姉ちゃんが私のお姉ちゃんで本当に良かったよ」
唯「憂ー♪」
憂「お姉ちゃん♪」
澪(この姉妹こそ、ある意味奇跡のファンタジー。幸せ膨らむしゃぼん玉だっ)
梓(なんだろ。澪先輩、妙に楽しそうだな)
- 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 20:02:56.37 ID:aPC1ya8vP
-
律「ハンバーグ出来たぞー」
紬「少しだけど、カレーも作りましたー」
唯「ハ、ハンバーグカレー?そんな贅沢良いのかな。憂、良いのかな?」
憂「お姉ちゃんはいつも頑張ってるから、そのご褒美だよ」
唯「憂ー♪」
澪「この姉妹こそ、ある意味奇跡のファンタジー。幸せ膨らむしゃぼん玉。夢のメリーゴーランドだっ」
律「そういう事は口に出すな」 ぽふっ
紬「うふふ♪」
梓(良いな、この雰囲気。それに、温かい匂いがするし♪) くんかくんか
- 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 20:04:55.47 ID:aPC1ya8vP
-
深夜、唯の部屋
唯「電気消すよー」
律「狭いな、しかし」 ぐいぐい
澪「仕方ないだろ」 ぐいぐい
梓「私、憂の部屋に行っても良いんですけど」
紬「駄目駄目♪」 きゅっ
梓(まあ、良いか♪) くんかくんか
- 40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 20:06:55.82 ID:aPC1ya8vP
-
澪「でも良いよな。こうして、みんなと一緒に眠るのは。すごい安心出来る」
律「本当に澪は恐がりだな」
唯「りっちゃんも、さっき震えてたじゃない」
律「そ、それはその。・・・怖い物は怖いじゃんよ」
紬「うふふ♪澪ちゃんが言ったように、みんなで一緒に寝れば安心よね」
律「そう、それ。私もそれが言いたかったんだ」
律「あー、一生こうして寝てたいなー♪」
梓(ボケ?それとも本気?)
- 42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 20:08:55.94 ID:aPC1ya8vP
-
唯「・・・なんだか、眠くなってきたね」 ふぁー
律「寝るんだから、当たり前だろ」 くすっ
澪「・・・私達は、5人だよな」
紬「勿論♪」
梓「5人で一つ。一致団結、軽音部です」
澪「そうだっ。私達に怖い物なんて、何も無いっ」
唯「うーん、アイスが怖いよー」 むにゃむにゃ
律「お前は、寝ててもそれか」 ぽふっ
澪、紬、梓「あはは♪」
終わり
- 43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 20:10:37.81 ID:W6Ij8IHW0
-
乙
テンポが良くて面白かった
- 48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 20:20:09.32 ID:3Mc6OYsb0
-
怪談ネタでありながら変に悪ノリせずにほのぼのとしてて良かった乙
くんかくんかはご愛嬌w
- 49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 20:25:00.82 ID:fcDGIziO0
-
乙
ほのぼのの真髄を見た気がした -
-
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| けいおん!!SS
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2011.01.27 Thu
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- 1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 18:50:25.20 ID:hSva00mI0
-
最近、ムギ先輩の様子が変だ…みんなと話してるときはいつものムギ先輩だけど
誰も話し掛けていないときは、俯き加減で暗い顔をしている。
唯「ねぇねぇ、ムギちゃん!今日のケーキは何?」
紬「ごめんね、今日はケーキ持って来れなかったの…」
唯「そうかぁ…残念だな」
紬「本当にごめんなさい…」
澪「ムギ、そんなに謝らなくても良いって!それにその分、練習に時間使えるから私は気にしない」
紬「ありがとう、澪ちゃん…」
でも…やっぱり…ムギ先輩の様子は変だ…大丈夫だろうか… -
- 2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 18:53:56.49 ID:hSva00mI0
-
ー数日後ー
唯「えっ!?今日もケーキないの?ムギちゃん…」
紬「ごめんね…ホントにごめんね…」
澪「ちょ!唯!ムギだって善意でケーキ持ってきてくれてるんだぞ?催促するのはおかしいだろ!」
唯「ごめんなさい…」
紬「ごめんなさい…ごめんなさい…」
梓「ムギ先輩、そんなに謝らないで下さい!じゃあ、みなさん練習しましょう!」
最近のムギ先輩はやっぱり変だ…
あんなに綺麗だった髪の毛もなんだかボサボサだし顔色も悪い… -
- 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 18:58:04.75 ID:hSva00mI0
-
紬「あの…」
律「どうした?ムギ?」
紬「あの…みんなに聞いて欲しい事があるの…」
澪「ムギ?」
俯き加減でそう言った、ムギ先輩を見た私達はムギ先輩のただならぬ雰囲気で
部室の空気が重たくなるのが分かった。
そして、私達はいつもの席に座った。 -
- 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:00:16.97 ID:hSva00mI0
-
紬「あのね…もう、ケーキとか持って来れないと思う・・・」
唯「えっ!?えーーーーっ!」
律「唯!ちょっと黙ってなさい」
紬「ごめんね、唯ちゃん…あのね、お父さんの会社が倒産してしまったの…
だから、もうケーキとか持って来れないの」
律「倒産って…ムギは大丈夫なのか?」
澪「そうだ、ムギは大丈夫なのか?」
紬「家とか色々差し押さえられちゃって…今までの家にも帰れなくなって…」
梓「そ、、、そんな…じゃあ、ムギ先輩、今どこにいるんですか?」
紬「うん…今は眼鏡橋の下で暮らしてるんだ…」 -
- 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:02:28.72 ID:hSva00mI0
-
澪「ちょっ…眼鏡橋の下って…ムギ、冗談だよな?」
紬「本当の事なの…」
律「マジか…」
唯「でも、ムギちゃん学校来てるよね?」
紬「学校はね、お父さんが高校は卒業しなさいって…それに、今は高校無償化だから…」
澪「でも…ご飯とかどうしてるんだ?」
紬「うん…一応、家出るときにね、お父さんが家にあったお金集めて、私に渡してくれたの…」
梓「でも…ちゃんとご飯食べてるんですか?」
紬「パン屋さんからパンの耳貰ったり、スーパーで半額のお弁当買ったりして、なんとか食べてる…」
律「そうか…でも、なんで眼鏡橋の下なんだ?」
紬「そんなにお金ないし、アパートとか借りるなら保証人とかいるでしょ?
保証人になってくれる人いないし…」 -
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:06:04.87 ID:hSva00mI0
-
澪「そんな…じゃあ、さわ子先生に保証人になって貰って…」
紬「駄目!さわ子先生に迷惑掛けたくない」
律「だよな…でも、女の子が橋の下に住んでたら、変な事が起こったりしたら大変な事になる」
紬「隣にね、ホームレスのお爺ちゃんが住んでて守ってくれてるから」
澪「そうか、でも、やっぱり橋の下に住むのは駄目だ!それだったら、私達の家に泊まりに来いよ!」
紬「みんなに迷惑掛けたくない…」
律「迷惑って…私達、けいおん部のメンバーで友達で…親友で…」
紬「みんなの気持ちは嬉しいけど、気持ちだけ貰っておくね」
梓「でも、、でも、、やっぱり駄目です…橋の下なんて…」
紬「梓ちゃん…」
そして、その日の部活は終わりました。
帰り道、唯先輩が両親がいないから泊まりに来ないかと誘いましたが
ムギ先輩は断りました。 -
- 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:10:06.84 ID:hSva00mI0
-
ー眼鏡橋の下ー
紬「お爺ちゃんただいま」
おじ「ただいま、ん?なんだか今日は明るい顔してるねぇ」
紬「うん、学校の友達に全部話したの。そしたらね、なんだか心が少し軽くなって」
おじ「そうかい」
そうして、私は段ボールとかビニールシートで括られた小屋に入りました。
ここに来て、どれくらい経つのかな…2週間ぐらいかな…
だいぶ、ここの生活にも慣れてきたかな…
紬「寒い…もうすぐ冬か…」
帰り道の街路樹も段々と紅葉が始まってきてる…
頑張って、冬を乗り越えないと…
そして、私は小屋の外に出た。 -
- 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:14:44.94 ID:hSva00mI0
-
おじ「ん?お出かけかい?」
紬「うん。今日はパン屋さんに行って、パンの耳貰ってこようかと思って。お爺ちゃんの分も貰ってくるね」
おじ「それは、ありがたいねぇ」
紬「じゃあ、行ってくるね」
おじ「いってらっしゃい」
そして、私はパン屋さんに向かって歩き出した…回りを気にしながら…
こんな姿、やっぱり知り合いには見られたくない…
パン屋さんからパンの耳を貰って、お店の外に出ると空気はとても冷たくなっていた…
紬「はぁ…寒い…」
口から息を吐くと、昼間とは違い白い塊が風に流されていく… -
- 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:15:56.68 ID:hSva00mI0
-
橋の下に着くと、お爺ちゃんが晩ご飯の準備をしてました。
おじ「おかえり」
紬「ただいま、お爺ちゃん。パンの耳、いっぱい貰ってきたよ」
おじ「そうかい、ありがとうね。寒かったろ?これでも飲んで暖まりな」
紬「良いの?お爺ちゃん」
おじ「ああ、お飲み。パンの耳のお返しだ」
紬「ありがとう、お爺ちゃん」
お爺ちゃんも生きてくのに大変なのに気遣いがととても嬉しい…
お爺ちゃんがいなかったら、多分、今生きてはいないだろう -
- 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:20:06.53 ID:hSva00mI0
-
ー数日後ー
梓「もう!お母さんたら、用事があるとか言ってたのに!結局、私に手伝いさせたいだけだったなんて」
私は自転車で近所のスーパーで買い物を終えて帰りを急いでいた。
この時間ても、冬が近いのかとても寒い。
自転車の漕ぐ足を速めたとき、遠くにムギ先輩の姿が見えた。
梓「ムギ先輩?」
紬「え!?あ、梓ちゃん?」
梓「はい!ムギ先輩、何やってるんですか?」
紬「うん…私の住んでる橋近くだから…」
梓「あ…ごめんなさい」
紬「んーん、良いの。気にしないで」 -
- 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:23:12.26 ID:hSva00mI0
-
梓「はい…どこか行く途中ですか?」
紬「うん。今日は体育があったから銭湯に行こうと思って。お風呂我慢しても良いんだけど、
流石に汗臭かったら回りに迷惑掛かるし…」
梓「…」
紬「あっ、気にしないでね。梓ちゃん」
梓「はい。あの…私の家にお風呂入りに来ませんか?」
紬「えっ…でも、駄目だよ…いきなり行ったら迷惑掛かっちゃう…」
梓「迷惑だなんて思いませんよ!このまま別れたら、気になって夜も眠れません!そっちの方が迷惑です!」
紬「ありがとう…梓ちゃん」
そうして、私はムギ先輩を強引に家へと連れて帰った。 -
- 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:26:01.75 ID:hSva00mI0
-
梓「ただいま!お母さん!」
梓母「おかえり、梓。あれ、お友達?」
梓「学校の先輩。家のお風呂壊れて銭湯行く途中だから、うちに連れてきちゃった!」
梓母「そうなんだ。じゃあ、お風呂入って貰って」
梓「うん!ムギ先輩、こっちです」
紬「梓ちゃん…ありがとう…ありがとう…」
梓「何ってるんですか!さあ、お風呂はこっちですよ!」
そうして私はムギ先輩をお風呂へと案内した。 -
- 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:31:24.75 ID:hSva00mI0
-
ーお風呂場ー
紬「暖かい…」
どれぐらいぶりだろ…家のお風呂に入るのは…
梓「ムギ先輩!ちゃんと暖まって下さいね!」
紬「うん…ホントにありがとうね」
私は湯船を汚さないように、念入りに体を洗った。
髪の毛も念入りに…
そうして、お風呂を上がると梓ちゃんが話し掛けてきた。
梓「ムギ先輩、ご飯食べていきますよね?」
紬「えっ!?それは駄目だよ…いきなり来てお風呂頂いて、ご飯まで…」
梓「食べて貰わないと困るんです!お母さん、一杯作り過ぎちゃったから」
紬「梓ちゃん…」 -
- 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:36:24.28 ID:hSva00mI0
-
梓「決まりです!お母さん、ムギ先輩のご飯もお願いね!」
梓母「はーい!」
そうして私は、梓ちゃんの家で晩ご飯を頂く事にした。
梓ちゃんの優しさが心に響く…
梓「ムギ先輩!口に合いますか?」
紬「うん…とっても美味しい」
梓「良かった!」
暖かいご飯…お味噌汁…体に染み渡る…
梓「ムギ先輩?」
気がつくと、私は涙を流していました。
紬「ごめんなさい…梓ちゃん…」
梓「もう!お母さんあまり料理上手じゃないですけど、いつでも来て下さい!」 -
- 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:41:12.78 ID:hSva00mI0
-
紬「ありがとうね…ホントありがとうね…梓ちゃん」
梓「鼻出てますよ。はい、ティシュッです」
紬「ありがとう…ありがとう…」
私はムギ先輩に泊まっていかないかと言いましたが、ムギ先輩は流石にそこまで甘えられないと良い
帰って行きました。でも…やっぱり、ムギ先輩が凄く心配だ…
あの泪の意味を考えると、高校生の女の子が一人で橋の下に住むのはとても大変な事なんだろう思う… -
- 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:48:55.83 ID:hSva00mI0
-
ー数日後ー
純「おーい!おはよう!梓!」
梓「おはよう、純」
純「なんだか天気悪いよね」
梓「そだね。天気予報だと夕方から大荒れだって」
純「ねー、この時期に大雨とかありえないよ」
梓「うん」
純と話していて、ふとムギ先輩の事が頭を過ぎった。
確か、橋の下に住んでるって言ってたけど、大雨降ったら増水とか大丈夫なのかな。 -
- 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 19:55:55.52 ID:hSva00mI0
-
ー放課後ー
部活に行くと、ムギ先輩はいなかった。
正確にはムギ先輩が私達に眼鏡橋の下で生活してるって話してくれてから
あまり、部活に来なくなってしまった。
多分、ムギ先輩なりに私達に気を遣ってくれてるのだろう。
澪「おっ、梓、お疲れ!」
梓「お疲れ様です。今日も、ムギ先輩来てませんね」
澪「ああ、変に気使わなくて良いのにな」
梓「ですよね…」
律「そうだな…よし!明日は無理矢理でも連れてくる!決めた!」 -
- 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 20:00:00.61 ID:hSva00mI0
-
澪「そうだな!」
梓「ですね!」
律「それにしても天気悪いな。こりゃ荒れるかもな」
澪「雨降る前に帰るか?」
律「だな。おーい!唯、帰るぞ!」
唯「あーい!」
そうして、私達は帰る事にした。
帰り道、段々と空は暗くなり重い雲が空を覆っていく…
ムギ先輩大丈夫かな…心配だ。 -
- 41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 20:03:12.21 ID:hSva00mI0
-
家に着いてしばらくすると、外から雨の音がしてくる。
雨音は外が暗くなってくるのと比例するかのように段々と強くなってきた。
窓に打ち付ける雨の音・・・私はふとムギ先輩の顔が浮かんだ。
テレビを付けると、画面には大雨警報が出たとテロップが流れている。
梓「ムギ先輩・・・」
雨の音は滝が流れるかの様な音に変わっている・・・胸騒ぎがする…
梓「お母さん、ちょっと出かけてくる!」
梓母「梓!外は凄い雨よ?」
梓「うん、分かってる!でも、ちょっと行ってくる」 -
- 43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 20:06:23.46 ID:hSva00mI0
-
私はお母さんにそう答えると外に飛び出しました。
外に出ると凄い雨だ…ちょっと先も雨でよく見えない。
梓「ムギ先輩…大丈夫かな…」
胸騒ぎが止まらない…私は傘を差して走り出しました。
私とムギ先輩が会った辺りの橋と言えば、あの眼鏡橋しかない。
河川敷に近づくと、川からは凄い音がする。
河川敷の横の道を走りながら、横目で川を見ると水位は凄い事になっている。
私は一心不乱で走りました。もう、服はビチョビチョです。 -
- 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 20:09:44.30 ID:hSva00mI0
-
そして、眼鏡橋に差し掛かったときです。
ムギ先輩が橋の下から荷物を運び出していました。
梓「ムギ先輩!」
紬「あ!梓ちゃん」
梓「ムギ先輩、大丈夫ですか?無事ですか?」
紬「うん!お爺さんが川が氾濫するかもしれないから避難しなさいって」
梓「そうですか」
紬「まだ、荷物あるから行ってくるね」 -
- 47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 20:13:00.84 ID:hSva00mI0
-
その時です、上流からサイレンの音がしました。
サイレンが鳴り終わらないうちに、上流からゴゴゴゴゴッと音がしたと思うと
一気に川の水位が上がりました。
紬「いけない…荷物取ってこないと…」
ムギ先輩は土手を下って残りの荷物を取りに行こうとします。
梓「ムギ先輩!危ないです!もう諦めましょう」
紬「駄目!駄目なの!荷物持ってこないと!」
梓「でも、まずいですよ!ムギ先輩に何かあったら大変です!」 -
- 49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 20:16:01.21 ID:hSva00mI0
-
私はムギ先輩の手を掴みました。ムギ先輩はその手を振り解こうとします。
梓「ムギ先輩!駄目です!」
紬「いやっ!駄目なの!取ってこないと駄目なの!」
梓「でも、危険です!ムギ先輩!」
紬「もう死んでも良いの!でも、あれは私の大事な思い出なの!大事な物なの!だからお願い!」
梓「でも、でも、駄目です!」
私はムギ先輩が橋の下に行かないように、腕を必死に掴んでいたときです。
さっきよりも大きな音が上流からしてきました。
その時です。濁流が橋の下を激しく流れていきました。 -
- 50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 20:20:12.23 ID:hSva00mI0
-
紬「いやーーーっ…私の…私の思い出…行かないで…」
梓「ムギ先輩…」
私達はしばらく川を見つめていました。
ムギ先輩に掛ける言葉もない…何を話したら良いのか分からない…
川の轟音だけが聞こえる中、ムギ先輩が話し始めました。
紬「梓ちゃん、それじゃあ私行くね…」
梓「えっ!?行くってどこにですか?」
紬「うん…公園のトイレにでも非難しようと思う…」
梓「駄目ですよ!危険ですよ!」
紬「でも…他に行くとこないから…」 -
- 51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 20:25:01.53 ID:hSva00mI0
-
梓「だったら、うちに来ませんか?」
紬「駄目!それだけは駄目!梓ちゃんに迷惑掛かっちゃう…」
梓「迷惑だなんて…迷惑だなんて思ってません!」
紬「梓ちゃんが迷惑じゃないかもしれないけど、梓ちゃんの両親が迷惑だと思ってたら困る…」
梓「そんな事無いです!そんな事思う親なら、私は家出します!だから、うちに来てください!ムギ先輩!」
紬「でも…」
梓「駄目です!じゃあ、行きますよ!ムギ先輩!」
そうして私はムギ先輩の荷物を持つと、私の家に向かって歩き始めました。
その後ろをムギ先輩は黙って着いてきます。 -
- 54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 20:28:15.64 ID:hSva00mI0
-
そして私の家の前に着きました。後ろを見るとムギ先輩はオドオドとしてる。
梓「ムギ先輩!入りますよ!」
私は家のドアを開けました。
お母さんが血相を変えて玄関にやってきました。
梓母「梓!心配したのよ!ニュースで川が増水してるとか言っているし」
梓「ごめんなさい。あのお母さん?」
梓母「何?」
梓「友達連れてきたの」
梓母「ん?あっ、この前の紬ちゃん」
梓「うん。泊めてあげて良いかな?」
梓母「何言ってるの!早く入って。もう二人とも雨でビチョビチョ」 -
- 56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 20:30:01.74 ID:hSva00mI0
-
紬「おじゃまします…」
梓母「入って入って!まあこんなに濡れちゃって!」
紬「すいません…」
梓母「良いのよ!梓、タオル持ってきて」
梓「うん!ムギ先輩、ちょっと待ってて下さいね」
紬「うん…」
そうして、どうにかこうにかムギ先輩を家に入れる事が出来ました。 -
- 58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 20:34:12.50 ID:hSva00mI0
-
雨で冷え切ったムギ先輩にお風呂を勧めて私はお母さんと話しました。
梓「あのね、、、お母さん…」
梓母「ん?なに?」
梓「ムギ先輩の事なんだけど…」
梓母「良いわよ!居てもらっても」
梓「えっ!?怒ならないの?」
梓母「起こる理由なんて無いわよ!それに、なんとなく理由も分かるしね」
そうだ…ムギ先輩のお父さんの会社が無くなってしばらくしてから、大々的にニュースでやってたっけ… -
- 60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 20:36:03.21 ID:hSva00mI0
-
梓母「それに、梓は心配なんでしょ?紬ちゃんの事」
梓「うん…」
梓母「良いわよ。居てもらっても」
梓「あ、ありがとうお母さん!」
その時でした。ムギ先輩がお風呂から上がってきました。
梓「ムギ先輩!喜んで下さい!ずっとうちにいても良いですよ!」
紬「えっ!?駄目だよ…」
梓「お母さんが居ても良いっていってくれたんです!だから、ずっと居て下さい!」
紬「でも…でも…」
梓母「紬ちゃん。良いのよ、居てもらっても。困ったときはお互い様だし。
それに駄目って言ったら、梓が何するか分からないし…ふふふっ」 -
- 62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 20:39:10.99 ID:hSva00mI0
-
紬「あの…あの…ホントに良いんですか?迷惑じゃないんですか?」
梓母「うーん…じゃあ、紬ちゃんが大人になったら少しずつで良いから返してくれたらそれで良いわ…」
紬「あの、なんて言ったら良いのか…ありがとうございます…」
私はムギ先輩に抱きつきました。もうどこにも行かないで下さい…
そんな気持ちで一杯でした…
梓母「じゃあ、梓は早くお風呂に入ってきなさい!」
梓「うん!」
私は急いでお風呂に入ってきました。お風呂から出てリビングに行くとムギ先輩はなんだか堅くなってソファーに座っています。
梓「ムギ先輩?なんだかガチガチですよ?」
紬「だって…私…」
梓「リラックスですよ!じゃあ、私の部屋に行きましょうか?」 -
- 64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 20:43:52.00 ID:hSva00mI0
-
紬「うん…」
私の部屋に行くと、ベットの下にお布団が敷いてありました。
多分、お母さんが敷いてくれたんだろう。
梓「今日からここがムギ先輩の蒲団です」
紬「うん…梓ちゃん…ホントに良いの?私、梓ちゃんの家にいて…」
梓「もう!またその話ですか?良いです!居て下さい!私、ムギ先輩みたいなお姉ちゃんが欲しかったんです」
紬「梓ちゃん…ありがとう…」
梓「ムギ先輩、今日は一緒に寝ませんか?」
紬「うん…」
私とムギ先輩は私のベットで一緒に寝る事にした。
私はベットに入るとムギ先輩に抱きました。 -
- 68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 20:47:00.85 ID:hSva00mI0
-
紬「梓ちゃん?」
梓「ムギ先輩、どこにも行っちゃ嫌ですよ?」
紬「うん…安心して、どこにも行かないから…」
そうして私達は一緒に眠りました。
ムギ先輩は私の家にいることになりました。
ムギ先輩は最初こそ緊張していましたが、段々とお母さんやお父さんとも仲良くなっていきました。
けいおん部にも来るようになり、昔のムギ先輩のように元気になっていきました。 -
- 71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 20:51:05.60 ID:hSva00mI0
-
そうして、年が明け…段々と暖かくなり、ムギ先輩達の卒業式がやってきました。
梓「今日は卒業式ですね!ムギ先輩!」
紬「うん…ありがとうね、これも梓ちゃんのおかげだよ」
梓「そんな事無いですよ!卒業できるのはムギ先輩がちゃんと勉強とかしたからです!
私は、唯先輩が卒業できる事の方が不思議です!」
紬「もう、梓ちゃんたら。唯ちゃんに言いつけちゃうぞ!」
梓「あーっ、駄目です!秘密にしといて下さい」
紬「うん!」
梓「へへへっ」
リビングに行くと、お母さんとお父さんがいました。 -
- 72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 20:54:28.51 ID:hSva00mI0
-
梓母「おめでとう、紬ちゃん!」
梓父「おめでとう」
紬「あ、あの…なんて言ったら良いのか…ありがとうございます」
ムギ先輩は両親の言葉で泣きそうになりました。
梓「ムギ先輩?泣いちゃ駄目ですよ!泪は卒業式まで取っておかないと!」
梓母「そうよ?今泣いちゃったら、卒業式の時に流す泪なくなっちゃうわよ?」
紬「はい…ありがとうございます…」
そうして、私達はみんなで朝食を取りました。
そして私達は、卒業式が行われる学校へと向かいました。 -
- 73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 20:58:04.85 ID:hSva00mI0
-
梓「あーあ、こうやってムギ先輩と学校に行くのは今日で最後なのか…」
紬「そうだね…ありがとね…梓ちゃん…」
梓「もう、また暗い顔してますよ?今日は卒業式なんですよ!お祝いなんですよ!」
紬「うん、、、そうだね」
梓「だから、暗い顔したムギ先輩なんて見たくないです!」
紬「ごめんね…」
梓「あの…ムギ先輩…」
紬「何?梓ちゃん」
梓「その、手繋いでも良いですか?」
紬「うん、、、良いよ」
私はムギ先輩と手を繋ぎました…ムギ先輩の手はとっても温かい…
私はずっとずっとムギ先輩と一緒にいたいと思いました。 -
- 75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 21:02:45.30 ID:hSva00mI0
-
学校に着き、ムギ先輩と別れました。
そうして、時間は過ぎて卒業式が始まりました。
私は先輩達と過ごしたけいおん部での2年間と、ムギ先輩と一緒に暮らした半年間の事を思い出し泣きそうになりました。
卒業式が終わり、私達は教室へと戻りました。
純「梓はけいおん部に行くの?」
梓「うん!ムギ先輩と帰りたいし」
純「先輩達も卒業かぁ・・・会えなくなるんだね・・・」
卒業式が終わっても私はムギ先輩と一緒の家に帰り、ずっと一緒だ
なんだか優越感を感じる。 -
- 76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 21:04:33.22 ID:hSva00mI0
-
純「じゃあ、私、ジャズ研に行くわ!」
梓「じゃあね、純!」
私はけいおん部の部室へ向かう事にした。
家に帰ったら、ムギ先輩の卒業パーティーをしよう・・・
ムギ先輩とはずっと一緒だ・・・なんだか、心が躍るのが分かる。
私はけいおん部の部室の前に着き、呼吸を整えるために大きく深呼吸をして。
そして、部室のドアを開けます。 -
- 77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 21:08:48.53 ID:hSva00mI0
-
梓「みなさん!卒業おめでとうございます!!」
でも、、、そこには、、、
あれ??ムギ先輩の姿がない・・・いつもの席にムギ先輩がいない・・・
梓「あ・・・あの、、、ムギ先輩は・・・?」
律「ムギなんだけど・・・なんだか用事があるとかでな・・・」
意味が分からない・・・用事って何?ムギ先輩の用事って何?
澪「梓?」
嫌な予感がする・・・
唯「あずにゃん・・・落ち着いて!」
震えが止まらなくなる・・・
梓「す、すいません・・・私も用事が出来ました・・・失礼します・・・」 -
- 80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 21:14:47.13 ID:hSva00mI0
-
私は部室を飛び出すと走り出しました。
嫌だ・・・ムギ先輩がいなくなるなんて嫌だ・・・
ずっと一緒にいたい・・・ムギ先輩とずっと一緒に・・・
家までどうやって帰ってきたのか分からなかった。
家の前で呼吸を整えていると、膝は擦りむいてるしコートもドロドロだ。
私は家のドアを開けました。
梓「お母さん!ムギ先輩わ!」
梓母「紬ちゃん?さっき帰ってきて、ちょっと出かけるって!」
私は自分の部屋へと急いだ。ムギ先輩がうちに来てから一緒にすごした自分の部屋へ
部屋のドアを開けて、部屋の中を見渡すとムギ先輩の荷物が無くなっている・・・
やっぱり、私の嫌な予感が当たってしまった・・・ -
- 81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 21:18:47.69 ID:hSva00mI0
-
梓「嫌だよ・・・いなくならないでよ・・・ムギ先輩・・・」
泪が溢れ出す・・・心に大きな暗い空道が出来ていくのが分かる・・・
梓「嫌だよ・・・嫌だよ・・・ムギ先輩・・・ムギお姉ちゃん・・・」
私はずっとムギ先輩と一緒にいれると思っていました。
ムギ先輩みたいなお姉ちゃんが欲しかった・・・でも、、、もう、その夢は叶わない・・・
梓「えっ・・・ぐえっ・・・お姉ちゃん・・・」
私は泪で霞む目を机に向けると、可愛い封筒が目に入りました。
その封筒を手に取り中を見てみると手紙が入っていました。 -
- 82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 21:23:19.57 ID:hSva00mI0
-
『梓ちゃん・・・黙って出て行く事を許して下さい。梓ちゃんのおかげで無事に高校を卒業することが出来ました。
ホントに梓ちゃんと梓ちゃんのお母さん、お父さんになんてお礼を言ったら分かりません。
ずっと梓ちゃんと一緒にいたいけど、これ以上甘えるわけにはいかないと思って出て行く事にしました。
最後に梓ちゃんに会ったら決心が鈍りそうだったので、黙って出て行く事にしました。
本当にごめんなさい・・・
梓ちゃん、ホントに今までありがとうね。なんだか妹が出来たみたいでとっても嬉しかった』
ムギ先輩も私と同じ気持ちだったんだ・・・でも、居てくれないと・・・ずっと一緒に居てくれないと・・・
私は階段を下りて、急いで玄関へと向かいました。 -
- 87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 21:30:06.26 ID:hSva00mI0
-
玄関で靴を履いてるときです、お母さんが話し掛けてきました。
梓母「梓!紬ちゃんの気持ちも考えてあげなさい!」
私は振り返ります。
梓「でも、でも・・・嫌だよ・・・ずっと一緒にいたいよ・・・」
お母さんは深い溜息を一つ着きました。
梓母「今、紬ちゃんを追ったら梓の我が儘で紬ちゃんをただ困らせる事になるんだよ!」
梓「でも、でも、でも・・・」
私はお母さんの言葉で玄関で泣き崩れる事しかできませんでした・・・
ーおしまいー -
- 92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 21:36:03.70 ID:W6Ij8IHW0
-
乙
結果は仕方ないけど悲しいな
- 96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 21:40:40.01 ID:hSva00mI0
-
ーエピローグー
私は高校3年生になりました。
桜が散る頃、私はお母さんとお父さんに呼ばれました。
梓「何?お父さん、お母さん・・・」
ムギ先輩がいなくなってから、私は両親と上手くいってない・・・
梓父「そこにちょっと座りなさい・・・」
梓「話す事なんて無い・・・」
梓母「良いから、座りなさい!」
私は渋々席に着く。 -
- 100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 21:44:59.80 ID:hSva00mI0
-
梓母「紬ちゃんの事なんだけどね」
えっ!?ムギ先輩の事??どういうこと?
梓「紬ちゃんなら、ちゃんと生活してるわよ」
えっ!?ホント?でも、どうして・・・?
梓母「梓、ごめんね。紬ちゃんはちゃんと働いて生活してるから」
梓「分かんない・・・どうして今更教えるのよ・・・」
梓母「だって、あの時に梓に言っても聞いてくれなかったでしょ?
ちゃんと話しても、紬ちゃん連れ戻したでしょ?」
確かに・・・私はムギ先輩とずっと一緒にいたかった・・・だから、ムギ先輩を見つけて連れ戻すつもりだった。 -
- 101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 21:49:36.25 ID:hSva00mI0
-
梓「うん・・・」
梓母「だからね、あの時は言わなかったの・・・ごめんね、梓」
梓「お母さん・・・」
その後、お母さんとお父さんからムギ先輩の話を聞いた。
家も借りて、ちゃんと働いて頑張ってる。
実は、ムギ先輩が借りた部屋の保証人にもなってるらしい・・・
梓「お母さん、ムギ先輩に会いたいよ・・・」
梓母「うーん、それは、紬ちゃんに任せましょう?ね?」
梓「でも・・・」
梓母「大丈夫!紬ちゃんはちゃんと梓に会いに来ると思うから。
ただ今は、生活するのに大変なんだと思うよ?
紬ちゃんに余裕が出来たら、必ず梓に最初に会いに来ると思うよ?ね?」
梓「うん・・・」 -
- 105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 21:56:10.38 ID:hSva00mI0
-
そうかもしれない・・・今、ムギ先輩に会ったら私はムギ先輩とまた一緒にいたくなる・・・
それはただ、ムギ先輩を困らせる事になる。
だから今は待とう・・・ムギ先輩が私に会いに来てくれるその日まで・・・
それまで、私は少しでも大人になるように頑張ろう・・・
次、ムギ先輩に会ったときは、新しいけいおん部の事とか唯先輩達の事とか一杯話そう・・・
ーほんとにおしまいー -
- 106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 21:57:55.23 ID:lFkOlOOJP
-
乙。
なかなかいい話だったよ。
- 114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 22:05:31.95 ID:W6Ij8IHW0
-
乙
両親がいい人すぎる
- 121 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/26(水) 23:21:32.87 ID:ulWiLP7/0
-
乙
きちんと再会できるといいな! -
-
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| けいおん!!SS
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2011.01.27 Thu
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- 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 02:41:59.14 ID:7BZPp4YS0
-
~ぶしつ!~
澪「えっ?」
唯「だから、おっぱいが大きい澪ちゃんは、いつもどんな気分なのかな~って」
一瞬、唯が何を言っているのかわからなかった。
胸が?
そりゃ……こんな風に考えるのは変だけど、私の胸は同年代の子に比べたら、そこそこ大きい。
でも、どんな気分って言われても……大きさを比べて悦に浸ったりするか、ってこと?
澪「別に。大きくたって得することなんかないよ」
よし、無難に答えられた……と思う。
そうだよ、律とかに時々からかい半分で揉まれるくらいで、お得なことなんか全然ないんだから。
唯「ほんとに?」
澪「ほんと。はい、この話は終わり!」
唯「あれれ。強引に終わらせようとするの、ちょっと怪しいなぁ~」
澪「何が怪しいんだよ。大体、いくら女の子同士っていっても、その……胸の話するの、恥ずかしいじゃないか……」 -
- 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 02:45:14.71 ID:7BZPp4YS0
-
唯「恥ずかしいからするんだよ、タブーは蜜の味なんだよ。いいじゃん、他に誰もいないんだし~」
ん……まあ、唯が相手ならいいか。
澪「他のみんなには内緒だぞ?」
唯「うんっ」
こう釘を刺しておけば、唯ならちゃんと約束を守ってくれるハズだ。
ついナチュラルに漏れることはたまにあるけど、みんなが来てからの会話の流れには、私が気を付けていればいいし。
澪「え、ええと……本当に、得なことはないんだよ。男の人にいやらしい目で見られるばっかりでさ」
唯「んじゃさ……女の子から、そういう目で見られたことはある?」
澪「え?」
唯「澪ちゃんくらい魅力的なら、女の子が妙な気分になっちゃってもおかしくないと思うんだけどなあ」 -
- 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 02:48:26.58 ID:7BZPp4YS0
-
澪「なっ、何だよ唯。そんなに持ち上げたって何も出ないぞ? どうせならムギの方をだな」
唯「ううん、澪ちゃんが本当に魅力的だから。ファンクラブの人達の気持ち、今はちょっとわかるよ」
その灰色な歴史には触れないで欲しいなあ……って、唯が? 私を魅力的だと感じてる?
本気で? 冗談でなく? 律なんかにそそのかされて、からかってるわけじゃなくて?
澪「あ、あのさ、唯……私は冗談と怖いのが特に苦手なんだよ。だから、女の子同士で好きとか、冗談で言ってるなら止めてくれないかな」
唯「怖いの苦手なのは知ってる……冗談もね。でも、女の子同士で……っていうのも、苦手? それとも嫌い?」
や、う、あ……何だよ唯、そんな胸の前で手を組んでお願いポーズなんかしちゃって。
その、ええっと、唯……切なそうな目で見上げられたら、可愛いって思っちゃうじゃないか。
澪「て、程度による……かな」
唯「んー……このくらいは、大丈夫?」
澪「んひゃあ!?」 -
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 02:53:13.74 ID:7BZPp4YS0
-
唯はいきなり私の首に腕を回して、ぎゅっと抱き着いてきた。
ほわっといい香りがして、唯の身体が柔らかくて、ついつい言葉を失ってしまう。
唯「んう~ぅ♪ みーおちゃーんっ!」
すりすりと滑らかな頬をこすり合わせられるのが、気持ちいい。
制服越しでも、密着したお互いの体温を感じられるのが、すごく気持ちいい。
澪「んっ……はぅ、ああ……唯、あったかい……」
唯「澪ちゃんもあったかいよ。特に……この辺がとってもやあらかいしっ」
また、いきなりだ。
ちょっと顔を離したかと思えば、私の胸に思いきり埋めてきて。
唯「んむう……ふう、ぷは。このボリュームには敵わないよねぇ~♪」
澪「なっ、ななな何してるんだよっ!? も、もお、離れ……ろ……んっ」
唯「むにゅー♪ 澪ちゃんのおっぱい、ふにふにのむにゅむにゅ~♪」 -
- 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 02:56:50.26 ID:7BZPp4YS0
-
制服越しだけど、埋めた顔を変に動かすもんだから、あ、う……ちょっと、感じちゃう、かも。
でも、普段の唯から考えると少し遠慮がち……かな?
澪「んぅ、ふ……そっ、そろそろ離れろよ、唯……みんな来ちゃうじゃないか」
唯「やだ。澪ちゃんのおっぱい、おっきくて気持ちいいんだもん」
澪「お、大きい胸がいいなら、ムギに頼めばどうだ? いくらでも甘えさせてくれそうな気がするけど」
唯「……澪ちゃん? 私は、澪ちゃんのおっぱ……じゃなくって、澪ちゃんが好きなの。だから、ムギちゃんのおっぱいじゃ駄目なんだよ?」
あれ……えっ?
今の、何だか微妙な言い方だったけど……私の胸が好き? そして、私が好き?
いや、どっちが優先なんだろう? ムギより私を選んでくれた時点で、結構嬉しいんだけれども。
澪「な、なあ唯? 好きって言ってくれるのは素直に嬉しいよ。けど、それは私自身に対してか? それとも、私の胸に対してか?」
唯「……澪ちゃん自身、だよ。別におっぱいに惹かれたわけじゃにから、そこんとこは勘違いしないでね!」
うん、その、何だかな、
私の胸の谷間に遠慮なく顔を挟んでむにむにしてるんじゃ、説得力が全くないけどな。 -
- 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 02:59:11.00 ID:7BZPp4YS0
-
澪「勘違いって、つまり、どういう風に理解すればいいんだ?」
唯「んむ、はう……ぷはあ。あ、あのね、私、本当は澪ちゃんのおっぱいをたんのーしたかったわけじゃなくってね?」
澪「そ、その割には、存分に揉み倒してるじゃないかぁ……」
唯「これは違うんだよ、えっとね、澪ちゃん……」
澪「もう、そろそろ離れてくれないか? いくら唯が相手でも、恥ずかしすぎるよぉ」
唯「んじゃ一旦離れる、けど……さっきからゆってる通り、私、澪ちゃんが好きだから……部員やお友達の垣根を越えて、一対一の女の子として! 本気だよ!」
名残惜しそうに私から離れた唯は、不意に真面目な顔付きになって、とんでもないことを口にした。
その、ふたりっきりだから暇潰しにじゃれ合いたがってるだけと思ってたのに……真剣に告白されるなんて。
澪「え……あ、うん……ありがとう……」
んと、私が受け入れたら、晴れて唯と恋人同士ってことに?
うわわ、どうしよう。そう思った途端、顔が自然とにやけてきちゃう。
律やムギが来たら、一体何があったのか追求されて、酷く困ったことになりそう。
……いやいや、恋人以前に私達は女の子だぞ? それなのに、恋人って。 -
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 03:00:55.58 ID:7BZPp4YS0
-
唯「部活に集中出来ないかもしんないけど……澪ちゃん、ひと晩考えてみて! 女の子同士だけど、私と本気でお付き合いするってゆーこと!」
澪「あ、ああ……返事は明日、放課後までに……で、いいんだな?」
出来るだけ平然を装いながら、そう答える。
声が上ずってるのとか、顔が引きつってるのとか、我ながら演技が下手だと思うよ。
唯「うんっ」
それでも唯は笑ったりしないで、こくんと頷いてくれた。
唯の表情から察するに、冗談や軽い気持ちで告白したわけではないと思う。
なら、私も無神経な返事をするわけにはいかない。
どっちを選ぶにしろ、よーく考えて、言葉を選ばなきゃ……な。 -
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 03:04:02.97 ID:7BZPp4YS0
-
~みおのへや!~
澪「はあ」
今日の部活は上の空だったし、帰ってからだって、勉強も作詞も手に付かない。
目を閉じれば、色んな表情の唯が脳裏をぐるぐる回る。
笑ってたり、すねてたり、一所懸命だったり……どれも、羨ましいくらいに可愛らしい。
そういえば私って、唯のこと今まで結構見てたんだなぁ。
澪「入部したての頃から、ぽやぽやしてて可愛かったなぁ……ふふふっ」
人懐っこいっていうか、無防備でいるところへ無意識に抱き着いてきたりするんだよな、唯は。
そのくせ、私が恥ずかしすぎて本気で嫌がる寸前に、まるで心を読んでるみたいに離れたりして。
澪「唯と、女の子同士で……こ、ここここっ……恋人、かぁ」
手を繋いで歩いたりしちゃうんだろうな。
唯のことだから、今日みたいに抱き着いてきたりもするんだろうな。
あ、でも、人前でいちゃいちゃするのは恥ずかしくって、私が耐えられないかも。
……って。 -
- 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 03:08:15.92 ID:7BZPp4YS0
-
澪「うわあああああああああん!?」
頭を抱えてベッドの上を転げ回る。
もう唯にOKの返事をすること前提に、どんなお付き合いをするか考えてるなんて、私ってば妄想甚だしいったら。
澪「……うううっ」
ということは。
私はむしろ、唯とのお付き合いを望んでいるってわけだ。
ずっと唯のことを考えてたのに、お断りの返事を告げるっていう選択肢は一度も浮かばなかったんだから。
澪「う……んぅ……よ、よーしっ! 決めたっ!」
私、唯と付き合う!
そうと決まれば素敵な告白の返事を考えなきゃ!
放課後、唯とふたりきりになった時……場所はやっぱり部室かな?
間が悪いと、部活が終わるまで誰かと一緒かもしれないから、そのパターンも考えておこう!
うん……いい返事の文句が書けそうだ! -
- 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 03:13:47.07 ID:7BZPp4YS0
-
~よくじつ・ぶしつ!~
澪「あれ、唯ひとりか」
部室に入ると、唯が机に突っ伏していた。
私が声をかけると、何とか、といった感じで顔を上げる。
唯「うんー。小腹が空いちゃって力が出ないんだよ~」
澪「ムギは日直で律は掃除当番らしいぞ」
唯「そっかあ。じゃ、もうしばらくこうしてるね」
唯はそう言って、またぐたっと机にうつ伏せになった。
あれれ?
私、昨夜は遅くまで頑張って返事を考えて、授業中にも何度も推敲したのに……もしかして唯、忘れたりしないよな? -
- 41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 03:18:03.27 ID:7BZPp4YS0
-
澪「あ、あのさ、唯?」
唯「んぅ……なぁに、澪ちゃん?」
澪「そっ、その、昨日のこと……なんだけどさ」
唯「おおっ!? お返事だね!?」
ああ、そんないきなり勢いよく立ち上がったら……。
唯「ほわぁ……ちょ、ちょーっと、いや、かなり立ちくらんだかな!」
やっぱり。
澪「別に座ったままでもいいって。何ていうか、ちゃんと聞いてくれさえすればいいんだから」
唯「平気、すぐに治るし! それに澪ちゃんの目の下のクマ見たら、よくても駄目でも座って聞くなんて失礼だよっ!」
澪「え……私、クマ出来るくらい夜更かしした覚えは……」 -
- 43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 03:22:57.70 ID:7BZPp4YS0
-
……ある、かも。
返事なんだからイエスかノーだけでいいのに、私ってば調子に乗っちゃって、美辞麗句で飾っちゃって。
唯「ほんとに真剣に私とのことを考えてくれたんだね、澪ちゃん。その気持ちだけで嬉しいよ」
澪「ん……」
つぅっ、と人差し指で私の目元を唯がなぞる。
くすぐったかったけど、気遣ってくれてる感じが、とっても嬉しい。
……唯の言う『嬉しい』も、こんな気分なんだろうか。
澪「えっと、その、唯への返事……詩にしてみたんだけど、聞いてくれるかな」
唯「はいっ!」
……いや、別にかしこまらなくってもいいのに。
期待を込めた眼差しで見つめられると、かえって緊張しちゃうだろ?
澪「……こほん」
伝えよう。
私も唯が好きだって。
だから、私と付き合ってください、って。 -
- 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 03:26:22.73 ID:7BZPp4YS0
-
~そのご!~
澪「……と、これで終わりなんだけど……」
唯「ふあぁ……澪ちゃぁん……♪」
あれ。
何か唯の身体が左右にぐらぐら揺れてるような……っていうか、最後まで茶々を入れずに、きちんと聞いてくれたのが少し意外だったかもしれない。
唯「とぉーっても甘ったるくって、しやわせなお返事、ありがとー♪」
澪「そっ、そんなに甘ったるかったかな……自分の気持ちを素直に書いたつもりなんだけど」
唯「だったら、尚更嬉しいよっ! 澪ちゃんが私の為に詩を作ってくれて、それが、それが……!」
あ、くるなこれ。
何となくだけど、わかる気がする。
澪「あ、あのな、唯? ちょっとだけだぞ? 私達、まだ正式に付き合うことになって三分も経ってないんだからな?」 -
- 51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 03:31:32.43 ID:7BZPp4YS0
-
唯「んんっ……みーおちゃーんっ!」
んぎゅううっ。
澪「んひぃっ!?」
唯「あ……嫌だった?」
澪「だ、大丈夫っ……うん、緊張してたせいで、びっくりしたけど」
くるってわかってたのに、いざ改めて抱き着かれると、やっぱりどきどきする。
だって、昨日告白されて、今OKの返事をしたばっかりなのに……こんなにすぐに恋人同士の抱擁なんて、早すぎるんじゃないか?
唯「んむにゅ~……澪ちゃーんっ♪」
澪「ゆ、唯ぃ……ちょっ、あ、あの、恥ずかしいよぉ……駄目だってば、みんなが来たらどうするんだよ……」
唯「……んむんうっ、ふぷ……澪ちゃんは、私と付き合うこと、みんなに知られたくないの?」
澪「知られたくないっていうか、女の子同士の恋愛なんて……みんな、受け入れてくれるかわかんないし……」 -
- 55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 03:34:59.47 ID:7BZPp4YS0
-
すんなり受け入れてくれるかもしれない。
けど、受け入れてもらえなかったら? もし、『キモチワルイ』なんて言われたら?
唯「澪ちゃん。だいじょーぶだよ」
澪「ふぇ?」
唯「私達、今までずっと、放課後はこの部室で一緒に過ごしてたんだもん。授業中と違って、色んなお話したりして……ねっ?」
澪「あ、ああ……」
……そうだよな。
この部室で過ごした時間の密度は圧縮されていたかのように、とっても濃かった。
私が唯に目を奪われていたことも、律やムギは気付いていただろう。
唯「だよね~? んふ、むにゅにゅっ」
澪「ふゃん!? あ、やん、唯ぃ!? それはまた別! ああっ、そんな、駄目だってばぁっ」
唯「みんなが来るまで、澪ちゃんのおっぱいむにむにさせてよ~」
全力で甘えてこられて嬉しい、けど、同じくらいに恥ずかしいよ。
それに、もうすぐ律やムギが部室に来る頃だし……。 -
- 64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 03:39:39.26 ID:7BZPp4YS0
-
澪「もっ、もう止め! 付き合うとは言ったけど、ところ構わずいちゃいちゃするのは私には無理だから!」
唯「んぅ……」
私よりも小さな肩を抱いて、ぎゅっと腕に力を込めたい衝動に駆られたけど。
恥ずかしさが前にきて出来なかったし、それをするようになったら、きっと歯止めがかからなくなる。
澪「い、いっ、いいか、唯? 私は恥ずかしがり屋なんだから、こおゆうのは、せめてふたりっきりの時にだなっ」
唯「……うん」
頷いたくせに、唯は腕の力を弱めてくれない。
私の胸の谷間に深く顔を埋めて、深呼吸したり、ふるふると左右に首を振ったり、昨日と違って全く離れてくれる気配がなかった。
唯「うんっ……んふ、ふぷぅ……んんっ、澪ちゃぁん……♪」
澪「唯っ、あ、だ、駄目だってば……離れて……誰か来たら、あぅ、あぅぅ……ゆぃぃ……!」 -
- 68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 03:44:59.31 ID:7BZPp4YS0
-
普段は割と私の言葉を聞いてくれる方なのに、今は……無視、ってわけじゃない。
私の反応を窺うように、ちろっと上目遣いに視線を送ってきてる。
唯「んむぅ、ふにゅ……おっぱいおっきくて、やーらかくって、あったかくて……私、澪ちゃんとえっちなことしたくて堪んない」
澪「えっち!?」
唯「うん。澪ちゃんが許してくれるまで我慢するけどね」
ふんす、って鼻息が制服越しに伝わってくる。
や、やっぱりかー。
『恋人』っていったら、手を繋ぐだけじゃ済まないもんな。
きききき、キス、したり……身体を触ったり、は今されてるけど、私も唯の胸とか揉んで……そっ、その、先も……しちゃうんだよな。
澪「は……はわわわっ」
唯「澪ちゃん?」
澪「……きゅう」
唯「みっ、澪ちゃーんっ!?」 -
- 71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 03:51:33.39 ID:7BZPp4YS0
-
自分の裸は見慣れてるけど、唯の裸、ううん、水着姿は見たからある程度の心構えは出来るけど……はだ、裸は、想像するだけでも敷居が高いっ。
唯だって言う程胸が小さいわけじゃないし、裸だったら、ぷるんぷるん揺れる様が簡単に想像出来るし!
澪「あ……あ、あのね、唯?」
唯「うん? なぁに?」
澪「えっちなことは、その、私が慣れるっていうか……出来るようになるまで、待ってくれないかな?」
身体の関係を求めていたのなら、唯は即答で首を横に振ったんだろうけど。
唯「……わかった。澪ちゃんが私にえっちなことしてくれるようになるまで、こおして慣れさせてあげるねっ!」
澪「違っ!?」
『私に』じゃなくって、『私が』すること前提。
また抱き着きながら、ふにふにと私の胸に顔を押し付けてるけど、それ以上のことはしてこない。
誰もいないのに、えっちなことするチャンスなのに。
……ちゃんと私の性格を考えて、抑えるべきは抑えてくれてるみたいな感じで。 -
- 75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 03:57:08.28 ID:7BZPp4YS0
-
澪「……唯っ」
きゅ。
唯が一方的に私に抱き着いてるんじゃ不公平だから、私も軽く唯を抱き締める。
……唯は私を『やーらかい』って言ったけど、唯も充分以上にやぁらかいじゃないか。
唯「ふみゅ……んにゅにゅう♪」
澪「唯も……柔らかくって、あったかい。私は……まだまだえっちなこと、出来そうにないけど」
唯「うん……待ってるね。一杯、いーっぱい抱き着いて、すぐにその気にさせちゃうんだから」
澪「ははは、私の奥手とヘタレは筋金入りだぞ? 自覚してるくらいなんだから、ちょっとやそっとじゃ無理だろうな」
唯「そおかもしんない。けど、必ず、いつか、澪ちゃんをえっちな気分にさせてみせるからね、私」
ぎゅう。
澪「んっ……」
唯「澪ちゃん、だーい好きぃ♪」
澪「……ああ。私も好き……いや、大好きだよ、唯」
唯「うんっ♪」
ほんの少し力を強めただけなのに、唯は。
ものすごく嬉しそうに微笑みながら、頷いてくれた。
~おしまい!~ -
- 78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 03:59:18.59 ID:ysRMGGG/0
-
おつおつ
安易にエロに走らないところがいい
ほくほくした
- 86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 06:39:16.53 ID:3F81BeGi0
-
いやあよかった
- 90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/26(水) 12:44:26.84 ID:0x+stK3JP
-
これはキャラもうまいしよかった
良作でした -
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| けいおん!!SS
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2011.01.25 Tue
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- 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 14:00:01.19 ID:Ir6LzA680
-
「ねえ、和ちゃん」
「なあに、唯ちゃん?」
「小学校いっても、ともだちでいようね!」
「うん、友達だよ!」
「にへー」
「えへへっ」
「……ありがと、和ちゃんっ」 -
- 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 14:03:04.77 ID:Ir6LzA680
-
「和ちゃん、和ちゃん」
「どうしたの、唯?」
「どうしたのって、今日で小学校も終わりだよ」
「そうね。春から中学生だし、頑張らないといけないわね」
「うん。だから……」
「?」
「……こ、これからもよろしくねっ」
「ええ。ずっと友達よ」
「……」 -
- 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 14:05:04.29 ID:Ir6LzA680
-
「もう中学も卒業ねぇ……」
「……」
「唯、まだ泣いてるの?」
「そうじゃないんだ。んっと、その……」
「……?」
「う……うっん、なんでも、ない……」
「やっぱり泣いてるじゃない。……あ、学校に好きな人がいるって言ってたものね」
「……」
「元気出しなさい。また会えるわよ」
「そう、だけど……ごめん、ねっ。和ちゃん……ありがと」 -
- 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 14:07:55.17 ID:Ir6LzA680
-
――――
きっかけなんてなかった。
いや、もしかしたら在ったのかもしれないけど、
私はそれをはっきり見ようとしていなかった。
無意識に知らないふりをしていた。
だから……気付くのが遅くなってしまった。
恋という言葉が、私の気持ちにあてはまることを知ったころには、
この気持ちは私の死角でふくれあがっていて、潰しきることなんて不可能になっていた。
小学6年生のとき。
修学旅行の夜に、みんなで夜更かしをしておしゃべりをした。
ひっそりとした雰囲気が逆に開放感をさそって、話題は男の子たちのことに向いていった。
私は話についていけないながらも、みんなと一緒に歓声を上げたりしていた。 -
- 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 14:10:09.70 ID:Ir6LzA680
-
「唯はさ、誰が好きなの?」
誰だったか忘れたけれど、大人びた髪の長い子がそう訊いてきた。
当時の私に、自覚している「好きな人」なんていなかった。
かといって、ここまでみんな赤裸々に自分の好きな人を話していて、
自分だけ「好きな人はいないよ~」で流せる感じでもなかった。
「唯の好きな人は気になるなー」
「実はけっこう昔から好きな人いたりして?」
にわかに場も盛り上がって、ますます逃げ場が狭まる。
適当にでっち上げて、別の人に代わってもらおう。
誰の名前を出すか、迷いはしなかった。
「私はねー、和ちゃんが好きだよ」 -
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 14:12:35.96 ID:Ir6LzA680
-
さらりと口から滑りでた、即席の好きな人の名前が耳に届いて、
夜更かししすぎでちょっと眠たくなっていた私の頭が突然冴えた。
唖然とした顔で、みんなが私を見ていた。
しぶしぶ会話に参加していた和ちゃんも、ちょっと真剣な顔で私を見つめている。
今、私はなんて言ったのだろう。
「ゆ……」
和ちゃんの口が動いたと思った瞬間、
部屋に押し殺したような笑いがあふれてきた。
「ばっか、唯……くふふふっ」
「好きってそういう意味じゃなくてね、あははっ」
「ちょっとミカ、うるさいってば」
「うひっ、ごめん」 -
- 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 14:15:06.56 ID:Ir6LzA680
-
「あ……あははー」
別のことを考えていて、笑われた理由もよく分からないまま、
私は頭を掻いてみせた。
なんで和ちゃんの名前が出たのか。
好きな男の子の名前を言うんだっていうのは、ちゃんとわかっていた。
「……」
ああ、そうだ。誰の名前を言うか考える時間をもうけなかったから。
だから真っ先に、和ちゃんの名前がでてしまったんだ。
「あれぇ、和ちょっと照れてない?」
「びっくりしただけよ」
私は大人びた子にのしかかられている和ちゃんの顔を見た。
迷惑そうにしながらも、笑ってはいた。 -
- 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 14:17:40.07 ID:Ir6LzA680
-
その笑顔が見れなくて、私は枕にうつぶせた。
好きな人の、恋してる人の名前を言うんだって分かってたのに、
どうして和ちゃんの名前を言ってしまったのか。
その答えが分かるだけに、私はもう泣きだしたい気持ちだった。
いつもの天然だった、と振舞う気力もでない。
「ごめんねみんな、私もう寝るよ」
「あっ唯! まだ好きな人言ってないでしょ!」
言ったよ、と心の中でつぶやきながら、私は頭まで布団をかぶった。
それからどうなったか、私は知らない。
和ちゃんの顔ばかりがまぶたの裏に浮かんで、声が頭の中に響いて、
私がどれだけ和ちゃんを好きか思い知らされていたら、いつの間にか窓から朝日がさしていた。
みんなの中で一番に起きた私が最初に思ったのは、
和ちゃんも相変わらず寝相が悪いなという、のんきなことだった。 -
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 14:20:54.14 ID:Ir6LzA680
-
それ以降、特に茶化されることもなく、
私はじっくり和ちゃんに対する恋心に向き合うことができた。
誰にも相談できなかったけれど、きっと自分は間違ってないと信じて、
卒業式の日に告白することを決意した。
でも、結局勇気が出せずに言えなかった。
ふられたら、友達でいられなくなっちゃうんじゃないか。
その恐怖が、最後の一言を押し込めてしまう。
家に帰ってから自分の情けなさに泣いて、中学の卒業式こそはと強く決意した。
そして3年後、もう一度勇気を出してみたけれど、また言うことはできなかった。
和ちゃんと一緒の高校に行くことが決まっていたから、
まだ時間はある、なんて軽い気持ちでいたんだろう。
甘かった自分を、殴りつけてやりたい。 -
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 14:24:12.44 ID:Ir6LzA680
-
「え?」
ある日ふいに和ちゃんが言った言葉は、私の心を穿った。
すかすかと、体を風が通っていくようだった。
「志望校よ。唯は決めたの?」
「和ちゃんは決めたの?」
「ちょっと上過ぎるかとも思うけど、K大かしらね」
和ちゃんから知らない大学の名前を聞いて、
空っぽの胸が焦りのうねりを呼び込みだした。
「……それって、どれぐらいの大学?」
「そうね……たぶん、唯でも1年じゃ無理だと思うわ」
和ちゃんが、泣き笑いのような顔をする。
「……なんで」 -
- 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 14:27:13.86 ID:Ir6LzA680
-
「そんな今さら言われても……わ、わたし……」
私は首をふる。和ちゃんが悪いんじゃない。
「……ごめん。けど、えっと」
「唯は私と一緒の大学がよかった?」
「……」
無口な子供みたいに、黙って私は頷いた。
「じゃあ、一緒に勉強しない?」
「……間に合うの?」
「やってみないと分からないわよ」
さっきと言ってることが矛盾してるけど、私は迷わずに和ちゃんの手をとった。
「お願い和ちゃん、勉強教えて!」
「ええ、いいわよ」
和ちゃんは、優しい笑顔で頷いてくれた。 -
- 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 14:30:07.07 ID:Ir6LzA680
-
「でも、まずは軽音部が落ち着いてからね」
「えぇっ?」
1年で間に合わないと言われたのに、部活を引退してからじゃ3ヵ月もないはずだ。
「まさか既に浪人確定って言いたいの……?」
「そうじゃないわよ。ただ……」
和ちゃんは頬を掻いた。
「唯が最後の文化祭、全力でやれないのは嫌だから」
「和ちゃん……」
「今まで唯が最後までやり通した事って少ないでしょ?」
「だから軽音部くらい、最後までやってほしいのよ」
「……」
わかった、と簡単に頷くことはできなかった。
部活といっしょにやって合格できるほど、和ちゃんと目指す大学のレベルは低くないだろう。 -
- 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 14:33:12.58 ID:Ir6LzA680
-
「もちろん、時間のあるときは常に勉強ね」
でも和ちゃんが私たちのライブを見たいって言うなら、
浪人くらいしたって構わない。
「うん、軽音部も勉強も、どっちも頑張る!」
「応援するわ。……日曜は部活休みだったわよね」
「そうだけど」
「じゃあ、唯の家で勉強会ね。高1の範囲から片づけていくわよ」
和ちゃんの目が本気だ。
忙殺という言葉があるけど、本当に死ぬかもしれない。
高校受験の時も似た感じになったけど、今度は部活もやりながら。
「……わかった、準備しとくね」
和ちゃんをがっかりさせないように、頑張らないと。 -
- 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 14:36:01.82 ID:Ir6LzA680
-
――――
土曜日になって、部活での練習の機会を増やすことを提案した。
家で練習する体力がなくなる分を、部活に持ち込もうというわけだ。
「唯が真面目になったぁ……」
なんてりっちゃんは嘆いていたけれど、結局は賛同してくれた。
部長として、最後の学祭ライブを成功させたいのだろう。
和ちゃんもりっちゃんも裏切れない。
ものすごいプレッシャーを感じたけれど、
なぜだか少しだけ、楽しいと思った。
きっと、これからの苦しい日々の先に、和ちゃんが待っているからだろう。
……でも。
和ちゃんはそこで待ってくれているだけで、いつまでも私と同じ道を歩んでくれるわけじゃない。
大学は別になるかもしれない、なんてことになって今更そんな当たり前のことに気付いた。 -
- 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 14:39:06.58 ID:Ir6LzA680
-
だったら、私はどうしたらいいか。
そんなの、決まっている。
高校に入ったばかりのころ、事実婚という言葉を知った。
同性同士とか、法律的に結婚できない人達がそれでも結ばれるための手段。
「私たちは結婚した」と宣言して、同棲して、一生を共に過ごすのだ。
和ちゃんとそれができたら。
いつか別の道を歩み出す日は、やってこなくなる。
じゃあ、和ちゃんとその事実婚というのをするためには?
卒業式では遅すぎる。そしたらまた、私は勇気を出せずに言うチャンスを逃してしまう。
あんな情けない思いを二度としないためにも、
そして和ちゃんがどこかへ行ってしまわないために、
いつでも和ちゃんにこの愛を伝えられるよう、準備しておこう。 -
- 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 14:42:06.00 ID:Ir6LzA680
-
――――
それから毎週日曜日、和ちゃんとの勉強会を開いた。
……開くことになっていた。
「最低でも、軽音部が終わるころには今の私ぐらいの偏差値になっておきなさい」
「それで間に合うの?」
「間に合わせるわ」
強い口調でぴしゃりと言う。
和ちゃんらしくなかった。和ちゃんならもっと真剣に考えてくれる。
たとえ結果として私に辛辣なことを言うことになっても、
私のためを思って助言してくれる。和ちゃんの好きなところのひとつ、なのに。
「ねえ、和ちゃん……」
不安が波のように、時折引きながら寄せてきて、だんだんと近付いてきた。
「わたしが和ちゃんの大学についていくの……いや?」 -
- 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 14:45:01.79 ID:Ir6LzA680
-
訊いてはいけないことだったかもしれない。
和ちゃんの顔が、ちょっぴり凍る。
でも、もう言葉に出してしまった。
告白もこんな風に言えたらいいのにな、と場違いなことを考える。
「……うれしかったわ。唯がついてきてくれて」
「……」
喜べない。
これは和ちゃんの話の、前置きにすぎないと分かるから。
「でも、なんていうか……決して、唯が嫌いって訳じゃないのよ?」
「ただ唯は……軽音部に入ってから、変わったと思うから」
和ちゃんは大きく息を吸う。
「私ね。今まで私は、唯のお母さんみたいな存在だって自分を思ってたの」
「……澪ちゃんも言ってたよ。お母さんみたいだって」 -
- 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 14:48:06.92 ID:Ir6LzA680
-
「だけど、軽音部に入った唯を見ていると、違ったかなって思うの」
「違う?」
「私は唯のお母さん……お母さん代わりにもなれないし」
「なる必要なんて、なかったかなって」
「和ちゃん……? よく意味がわかんないよ」
おかしい。
和ちゃんを全力で追いかけているはずなのに、
その姿は私のほうを向きながら、ぐんぐん遠くへ飛んでいってしまう。
「気持ちとしては、娘を嫁に送ったような感じだったの」
「ちょっとした寂しさと、よろしくお願いしますって気持ち」
和ちゃんは悲しげな目をしていたけれど、やっぱり笑った。
「唯はね……軽音部にもらわれたんだと思うから」
「律と、澪と、ムギと。同じ大学を目指すべきなのよ」 -
- 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 14:50:59.08 ID:Ir6LzA680
-
胸の奥から、強烈な衝撃がつきあげてくる。
心臓の鼓動に、肩まで揺らされた。
「……和ちゃん」
あぁ、だめだよ。
今言うことじゃないよ、言わなきゃって思っちゃったのはわかるけど。
頭のどこかから、私の声で警告が聞こえる。
「そんなの和ちゃんの勝手だよ。私はそんなのやだ」
「やだって……」
「やだったらやなの! 和ちゃんと離れるなんて絶対いやっ!」
「唯、どうしたの?」
ばか、和ちゃん。それを訊いちゃったら。
「……和ちゃんが好きなのっ!」
「ずっと昔から、ずっとだよ! 私は和ちゃんのこと、小学校のときから……」 -
- 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 14:54:08.37 ID:Ir6LzA680
-
和ちゃんの顔がみるみる固まっていく。
「ねぇ覚えてるでしょ、小学校の修学旅行の夜」
「わたし、和ちゃんが好きって言ったよね。あれがほんとの気持ち。天然ボケなんかじゃなかったよ」
わかってる。
こんな勢いに任せて言っちゃいけないことだって。
だけどもう、止まれない。
理由のわからない涙がぼろぼろあふれてくる。
「女の子同士だから、おかしいって思ったけどっ……好きなものは好きで、わたしっ」
「和ちゃん、好きっ、ずっと好きだったの、だから……」
「母親なんて言わないで……私を勝手に見はなさないで!」
にじんだ視界の中、和ちゃんを探して抱きついた。
春服の下の胸が、ぎゅうっと潰れる。
「ずっといっしょだって、約束したじゃん……」 -
- 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 14:57:05.39 ID:Ir6LzA680
-
和ちゃんの心臓の音が聞こえる。
私の鼻が鳴らす雑音が邪魔だった。
和ちゃんの胸に顔を押し付けたまま、時間が過ぎる。
言葉の氾濫はおさまったみたいだった。
「……ずっと」
やがて、和ちゃんは静かに言った。
「?」
「ずっと友達だって、言ったのよ」
「……」
「無理よ、唯……わたしは」
「唯をそういう風に見たことがないし、これからも見れないわ」
「……ごめんなさい」 -
- 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 14:59:54.11 ID:Ir6LzA680
-
わたしが最低でも6年いだいた想いは、
1分とたたず、うち砕かれた。
「そっか、そうだよね」
私はそっと和ちゃんをつかまえていた手を外して、座りなおす。
和ちゃんの服に広がった涙のしみを見て、きっと大した悲しみではないと思うことにした。
「ごめん、おかしなこと言って……」
「……ちょっと、一人にさせてくれない?」
「……」
「お願い」
「……じゃあ、勉強会は中止?」
「そうだね。ていうか、もういいかも」
「一緒の大学行ったって、いつか和ちゃんが離れちゃうなら、もういい」
「……」 -
- 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 15:03:07.13 ID:Ir6LzA680
-
「好きになんなきゃよかった……」
「……そんなこと、言ったらだめよ」
テキストを集めてかばんに入れて、和ちゃんはすっと立ち上がった。
「また明日ね、唯」
和ちゃんはそう言って、部屋を出ていった。
私は床に耳を付けて、離れていく和ちゃんの足音をわざわざ聴いた。
「……」
終わっちゃった。
のんびりしてたら思った以上に終わりが近づいてて。
それで焦ったら、あっという間に何もかも終わっちゃってた。
どうするのが、正解だったんだろう?
この問題だけは、和ちゃんにも解けないな、って思った。 -
- 36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 15:06:01.27 ID:Ir6LzA680
-
――――
「朝令暮改ですか!?」
翌日、月曜日の軽音部にて、あずにゃんが私の知らない言葉を叫んだ。
「3日もたなかったな……」
「まあ唯にマジメキャラは向いてなかったって事だ!」
「嬉しそうだな、律」
「でも、よかった……」
ムギちゃんが胸をなでおろす。
「ムギ先輩?」
「唯ちゃんが勉強しようとしたのは、和ちゃんと同じ大学行くためでしょ?」
「う、うん……無理だって言われて、諦めちゃったけどね」 -
- 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 15:09:03.01 ID:Ir6LzA680
-
「でも私や澪ちゃんは、和ちゃんのK大とは志望校違うし、目指すのも厳しいから……」
「これで唯ちゃんも、一緒の大学来れるわよね?」
ムギちゃんはにこっと笑った。
「あ……」
「おう、私も澪とムギと一緒の大学行くぞ!」
慌てたようにりっちゃんが割り込んできた。
「今きめたでしょ、りっちゃん?」
「だ、だってさぁ!」
「まったく……」
仕方ないな、という感じの笑い。
でも、心の奥では。
……なんだか、和ちゃんの言ったことが、わかったような気がした。 -
- 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 15:11:57.44 ID:Ir6LzA680
-
「いいじゃん。りっちゃん、みんなで一緒の大学目指そうっ!」
「うんっ」
みんなで頷き合う。
そうだ。こうして、友達の中にいるのが、いちばん良いんだ。
もしかしたら和ちゃんは、はなから私の気持ちに気付いていて、
ああいう忠告をしたのかもしれない。
そもそも、本人の前で好きって言っちゃったことあるもんね。
「それじゃ……」
「ティータイムにするか」
「律先輩、このタイミングでそれ言えるの逆にすごいと思います」
「冗談だっつの」
そうだよね。
きっと、こんな時間が好きなだけだったんだ。 -
- 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 15:14:58.50 ID:Ir6LzA680
-
――――
「……」
「……」
「家まで送るわ、唯」
「うん、ありがとう。和ちゃん」
「……なんかあっけなかったね」
「卒業式? そうね、卒業証書もクラス代表が受け取るだけだものね」
「中学の時は泣いちゃったけど、今年はなんだか……」
「空っぽな感じが、ずっと続いてた」
「虚無感ね。寂しいのよ、唯は」
「んー、やっぱりか。わかってはいたんだ」 -
- 40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 15:17:58.95 ID:Ir6LzA680
-
「寂しいのは、やっぱり……和ちゃんが遠くに行っちゃうからなのかな」
「……まだ、好きなの?」
「わかんない。そういう気持ちをなくそうとはしてる」
「……忘れられたらいいわね」
「うん。それがいいって思うよ」
「……」
「……あ、公園」
「昔、よく遊んだわね。砂場の砂、みんな外に出しちゃって怒られたかしら」
「あの時はほんとすみませんでした」
「いいのよ。子供の頃のことだし」
「……子供のしたことなら、許せる?」
「?」 -
- 41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 15:20:54.28 ID:Ir6LzA680
-
「私が和ちゃんを好きになったの……子供の頃のことだけど、許せる?」
「……唯に好きになられて、怒る人なんていないと思うけど?」
「……和ちゃんって、ほんとにばか」
「ええっ?」
「そんなこと言わないでよぉ……またぶり返しちゃったじゃん」
「……熱か風邪みたいな言い方ね」
「はぁ、もう……」
「難儀な人を好きになったよ……いろんな意味で」
「はあーぁ……」
「……唯、歩くの遅くなってるわよ」
「……だって。もうそろそろ、家に着いちゃうし」 -
- 42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 15:24:13.84 ID:Ir6LzA680
-
「……」
「……」
「ねぇ、和ちゃん」
「なに?」
「……すき、だよ」
「唯……」
「でも。私が和ちゃんをすきなのは、今日までにする」
「今日からあなたは、私の愛した和ちゃんではなく、ただの幼馴染の和ちゃんなのです」
「……」
「……ねえ、眼鏡はずして?」
「あのころの和ちゃんの顔になってくれないかな」
「和ちゃんが、私の親友だったころの……」 -
- 44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 15:27:11.33 ID:Ir6LzA680
-
「……ええ、いいわよ」
「……」
「……うん、そう」
「なつかしいね。卒園式の日も、こうだった」
「隣にお父さんとお母さんがいたけれど、和ちゃんが送ってくれて……」
「純粋だった。恋を知らない子供だったんだよね」
「……」
「和ちゃん。送ってくれてありがとう」
「もういいの?」
「うん。あ、眼鏡はそのままで」
「……じゃあ、ここで見送ってるわ」
「ん。じゃーね」
「ええ。さよなら、唯」 -
- 45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 15:30:02.91 ID:Ir6LzA680
-
ありがとう、和ちゃん。
私の気持ち、もういっかい幼稚園からやり直すから。
今度は間違わないようにするから。
そしたら――また、出逢おうね。
おしまい
- 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 15:30:49.62 ID:h0U/xlhI0
-
乙
- 49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 15:34:11.18 ID:p/kt/A4z0
-
乙
せつねぇ…
- 52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/25(火) 16:03:09.30 ID:GN8vW9uhO
-
乙!
泣いた(´;ω;`)
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2011.01.25 Tue
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- 3 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 01:17:16.83 ID:CTaiSNDVO
-
律「ムギー!部室行こうぜ」
紬「あ ごめんなさい…今日も…」
律「あれ今日もなのか?もう一週間部活休んでるぞ?」
澪「…何かあったのか?ムギ、もし何か悩み事があるなら相談しろよ」
律「そうだぞムギ、私達は友達じゃないか」 -
- 4 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 01:18:30.25 ID:CTaiSNDVO
-
紬「…」
澪「?ムギ?」
紬「あっうん…ありがとう…そういんじゃなくて…お家の事情で早く帰らないといけないだけなの」
澪「そっか…」
紬「ホントごめんね…」
律「まあ、しゃーないか…じゃあなムギ」
澪「ムギ、また明日」
紬「うん…ばいばい…」 -
- 5 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 01:20:41.61 ID:CTaiSNDVO
-
翌日
澪「ムギ 今日は部室来れるのか?」
紬「…ごめんなさい…」
澪「ダメなのか…」
律「…明日はどうだ?来れそうか?」
紬「あした…部活…明日も…」
律「バンドはムギのパート無くても合わせられるけど…ちょっと…な」 -
- 6 以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 01:21:12.04 ID:CTaiSNDVO
-
紬「う うん…ごめんなさい…明日はちゃんと行くわ」
澪「そうか!よかった
律「唯もムギのお菓子楽しみにしてるからさ」
澪「それは律もだろ…」
紬(澪ちゃんとりっちゃん…) -
- 7 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 01:25:07.20 ID:CTaiSNDVO
-
翌日
唯「あ!ムギちゃんキターっ!」
梓「どうしたんですか?一週間も部活に来れないなんて」
紬「ごめんなさい、家の事情で部活に来れなかったの」
唯「ムギちゃん復活という事は、ティータイムも復活だね♪」
梓「唯先輩はそればっかりですね」
唯「ムギちゃんのお菓子とあずにゃん成分が有れば、私はがんばれるんだよー」ダキ
梓「んーっ抱きつかないで下さいっ!!」
紬(唯ちゃんと…梓ちゃん)
梓「はい?」
紬「えっ!?ううん何でも…」 -
- 8 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 01:27:18.14 ID:CTaiSNDVO
-
澪「よし!久しぶりに5人揃った事だし…」
唯「ティータイムの時間だね!ムギちゃーん!今日のお菓子はなあに?」
律「やっぱりこの時間あっての放課後ティータイムだよな」
澪「ちょ、おまえら」
梓「もう!何言ってるんですか!せっかくムギ先輩も久しぶりに来たのに!練習しましょうよっ!!」
律「な~に言ってるんだ。梓だって『ティータイムがないと物足りないですねえ』とか言ってたじゃないか」
梓「そ それはそうですけど…」///
紬「…」
唯「ムギちゃーん?」
紬「あ!ごめんなさい…すぐに支度するわね」
澪「ふぅ…やれやれ」
紬(……)
紬(…わたしは…) -
- 10 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 02:08:31.13 ID:CTaiSNDVO
-
翌日放課後
バンッ!
さわ子「ねえ!あんた達何かあったの!?」
唯「ほえ?さわちゃんどうしたの?」
律「あれ?ムギ一緒じゃないの?さわちゃんのトコ行くって言ってたけど」
さわ子「…そのムギちゃんが、さっき軽音部辞めたいって退部届持って来たわ」
唯澪律梓『ええぇっ!?』 -
- 14 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 02:30:04.71 ID:CTaiSNDVO
-
律「なんだよソレ…私達に相談も無しに…」
梓「退部の理由はなんなんですか?」
さわ子「お家の事情…て言ってたわ。…ただ随分思いつめてたようだし、部内で何かあったのかなって…」
澪「何もないよ。しばらくムギ部活来なかったけど、昨日久しぶりに来た時いつもと変わらないムギだった」
梓(…) -
- 15 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 02:54:04.48 ID:CTaiSNDVO
-
唯「わたし ムギちゃんに電話してみるよ!!!」
truuu truuu truuu …
『…おかけになった電話は、電波の届かない所にあるか、電源が入っていない為…』
Pi
唯「…だめだよ…通じない…」
澪「仕方ないな…明日ムギに直接聞いてみよう」
律「そうだな」
唯「ムギちゃん…」 -
- 16 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 03:31:38.95 ID:CTaiSNDVO
-
翌日-教室
紬「おはよう みんな」
澪「おはよう ムギ…あのさ…」
律「…どういう事だよ…ムギ」
紬「…退部の事?」
唯「そうだよムギちゃん。急に辞めちゃうなんて」
紬「ごめんなさい…お家の事情で部活続けるのが…」
律「それにしたって私たちに相談してくれてもいいだろっ!!」
紬「!」 -
- 17 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 04:04:07.26 ID:CTaiSNDVO
-
律「そりゃ家の事情なら、私たちに話したって、どうなるもんでもないかも知れないけど…黙って辞める事ないだろ!!」
澪「おい律!落ち着けっ!」
紬「…りっちゃんに…」
唯「?ムギちゃん」
紬「りっちゃん『なんか』に私の悩みはわからないわ!」
律「!この…」
唯「わっ!?りっちゃん抑えて抑えて」
ガラ
教師「おらー 席に着けお前らー 授業始めるぞ」
律「…」
紬「…」
澪「…」
唯(あぁ) -
- 18 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 04:26:58.59 ID:CTaiSNDVO
-
放課後
澪「ムギ!ちょっと待って!」
律「…」
紬「…なあに?」
澪「途中まで一緒に帰ろう。さっき言ってたムギの悩みも聞きたいし」
紬「ごめんなさい澪ちゃん。今日から校門まで送迎してもらう事にしたの。だから一緒には帰れないわ」
澪「で でも」
律「…もういいよ澪…じゃあなムギ」
紬「…うん…じゃあね りっちゃん澪ちゃん」 -
- 19 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 05:04:12.15 ID:CTaiSNDVO
-
翌日放課後
梓「そうですか…結局ムギ先輩は…」
唯「…うん、今日も普段のムギちゃんと変わらないんだけど、私たちを避けてるというか…」
梓「…ムギ先輩の悩みって 何なんでしょうか」
律「さあな… ま 私たちじゃ到底解決出来ない悩みなんだろ?」
唯「私たちムギちゃんに何かしちゃったのか?気づかないうちに」
澪「分からないな…ムギずっと何かを我慢してたとか…?」 -
- 21 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 05:21:36.20 ID:CTaiSNDVO
-
律「んなぁーっ!!もういいだろ!?辞めた奴の話は!」
律「何を悩んでいたか知らないが、一週間ぶりに来たと思ったら、私たちにコソコソと内緒で辞めたり!」
律「結局ムギってそういう奴だったって事だよっ!!」
梓「そ そんな言い方ヒドいですよ!」
律「ヒドいのはムギの方だろっ!!」
梓「!」 -
- 22 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 05:41:32.22 ID:CTaiSNDVO
-
律「ち…やめた…今日はもう帰る」
唯「えっ!?」
律「じゃあな」
澪「ちょ 律待て!悪い またな 唯 梓!」
唯「りっちゃん…」
梓「…こんなの…」
唯「うん?」
梓「こんなの軽音部じゃないですよ」 -
- 23 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 05:58:37.95 ID:CTaiSNDVO
-
翌日 二年教室
純「へぇ そんな事になってるだ?軽音部」
梓「うん、律先輩も毎日イライラしてて…雰囲気最悪だよ」
憂「お姉ちゃんも言ってたよ。最近の部活は居てて楽しくないって」
純「でもさ、ムギ先輩が部活辞めたのって家の事情なんでしょ?」
梓「…て、事になってる」
純「律先輩がそんなに怒っても仕方ないんじゃない?」 -
- 24 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 06:21:51.58 ID:CTaiSNDVO
-
梓「律先輩はムギ先輩が相談無しに辞めちゃった事を怒っているみたい」
純「ふーん」
憂「ムギ先輩の悩みって何なんだろうね」
梓「私も同じ事思ってた」
梓「ムギ先輩さ…一週間ぶりに部室来た時様子おかしかったんだ」
憂「そうなんだ?」 -
- 31 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 10:58:11.46 ID:CTaiSNDVO
-
梓「うん…うまく言えないけど…私と唯先輩のやりとりの時とか、紅茶を煎れる時とか」
梓「思い詰めてるというか…何か「あれ?」て思うような表情をしてたの」
憂「よくわからないよ」
梓「私もわからない…すぐにいつものムギ先輩に戻ったし、その時は気のせいかなって思ったから」
純「もしかしてさー」
梓「ん?」
純「メイドみたいな事するのが嫌になったんじゃない?」 -
- 32 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 10:59:23.08 ID:CTaiSNDVO
-
梓「でもムギ先輩楽しそうにしてたよ?」
純「それは最初は自分のもてなしを喜んでくれれば楽しいかも知れないけどさ…」
憂「…それが当たり前になってしまって…」
純「そうそう!自分の存在は何なんだろ?て思わないかな?」
梓「…そっか…確かに思いあたる節はあるよ」
純「あたりじゃないかなー」
梓(…よし!) -
- 37 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 12:50:26.85 ID:CTaiSNDVO
-
翌日放課後
キキィ バタム
斉藤「お待たせして申し訳ありません。紬お嬢様」
紬「大丈夫よ斉藤」
斉藤「…お嬢様」
紬「何?斉藤」
斉藤「ご学友の方とは一緒にお帰りにならなくて宜しいのですか?」
紬「…」 -
- 40 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします:2010/12/17(金) 13:33:02.42 ID:CTaiSNDVO
-
斉藤「…この数日、何かをお悩みになられている様子で…ご自分でお気づきになられていますか?」
紬「…何をかしら?」
斉藤「お嬢様は…最近本当に笑われた事ないように感じます」
紬「…」
斉藤「…」
紬「…車を出して斉藤」
斉藤「…いかがいたしましょう」
紬「え?」
コンコン
梓「ムギ先輩!あの…お話しが…」
紬「梓ちゃん?」 -
- 42 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 13:40:31.33 ID:CTaiSNDVO
-
琴吹家
紬「…じゃあ斉藤、あとで梓ちゃんを私の部屋に案内してちょうだい」
斉藤「かしこまりました」
梓(ふわあ…大きなお屋敷だなあ)
紬「梓ちゃん、またあとで」
梓「ふぁ!? ひぁい」
斉藤(…)
梓(…き…緊張するよ)
斉藤「…お嬢様は…」
梓「はぃ?」 -
- 43 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 13:57:41.11 ID:CTaiSNDVO
-
斉藤「お嬢様は高校生になられ、毎日が楽しいと、特に放課後の部活動に関しては、目を輝かせながら、それは嬉しそうに話されていました」
梓「…はい」
斉藤「ご学友にも恵まれたようで、かわいい後輩も出来たとか…恐らく中野様の事でしょう」
梓(な 中野様///) -
- 45 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 14:37:32.41 ID:CTaiSNDVO
-
斉藤「ご存知の通りお嬢様は、ゆくゆくは旦那様の事業を引き継がれる事となるでしょう」
梓(…)
斉藤「ですから今のうちはお嬢様には…」
ピー
紬『斉藤、梓ちゃんをお通しして』
斉藤「…かしこまりました」
斉藤「…中野様」
梓「は はい」
斉藤「紬お嬢様をお願いします」 -
- 46 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 14:38:19.44 ID:CTaiSNDVO
-
紬自室
紬「おまたせしてごめんなさい」
梓「い いえ!全然まってないです!」
紬「紅茶でよかったかしら?」
梓「は はい!いただきますです!」
紬「♪~はい、どうぞ」
梓「…あの」
紬「ん?」
梓「ムギ先輩は…軽音部で、こうやって皆さんにメイドみたいな事するのが嫌になって…辞めたんですか?」
紬「えっ?」 -
- 47 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 14:40:31.60 ID:CTaiSNDVO
-
梓「皆さんムギ先輩がこうしてくれる事に慣れて、当たり前になって」
紬「…」
梓「それで…ムギ先輩嫌になって、それで…」
紬「…お話しって、その事?」
梓「は はい!皆さんムギ先輩の事心配で、軽音部の雰囲気悪くなっ…わぷ」
紬「ありがとう」キュ
梓(///ムギ先輩に抱きつかれた!何このいい匂い?)
紬「ふふ、はずれ。全然嫌じゃないわ」
梓「ムギ先輩?」 -
- 48 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 14:41:51.13 ID:CTaiSNDVO
-
紬「私は、軽音部が好き」
紬「りっちゃんも、澪ちゃんも、唯ちゃんも、梓ちゃんも好き!」
紬「さわ子先生も、音楽室も、澪ちゃんの歌詞も、唯ちゃんの歌声も、ティータイムの時間も好き!みんな大好きっ!!」
梓「…じゃあ…なんで辞めちゃったんですか?」
紬「…軽音部で…私は一人だから…」 -
- 51 以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 14:57:45.61 ID:CTaiSNDVO
-
梓自室
『軽音部で私は一人だから』
梓(あの時のムギ先輩…寂しそうな顔してたな)
梓(…軽音部の事嫌いになったわけじゃないんだよね) -
- 52 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 14:58:32.37 ID:CTaiSNDVO
-
梓(…でも軽音部でムギ先輩一人って…)
バフ
梓(どういう事なんだろ?)
梓(とにかく…明日先輩達に話してみよう…)
- 55 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします:2010/12/17(金) 15:36:19.20 ID:CTaiSNDVO
-
翌日放課後
梓「あれ?」
♪タンタンスタタン スタタタタン
梓(律先輩?)
ガラ
梓「こ こんにちはー」
律「…よう」
梓「律先輩しか来ていないんですか?」 -
- 56 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 15:36:54.41 ID:CTaiSNDVO
-
律「澪は日直で職員室寄ってから来るよ。唯はもう来るんじゃないか?」
梓「そうですか」
律「…ムギはもう来ないけどな」
梓「…」
梓「律先輩」
律「ん?なんだ?」
梓「ムギ先輩の事で聞いてもらいたい事があります」
律「…」 -
- 59 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 16:15:26.54 ID:CTaiSNDVO
-
翌日放課後
律「ムギ」
紬「?…りっちゃん」
律「ムギ…ちょっと話がしたいんだけど、時間いいか?」
紬「…ごめんなさい…斎藤を待たせているから…」
律「斎藤?…ああ、執事の人か。いやさ、ちょっとだけ私の相談に乗って欲しいんだ」 -
- 60 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 16:17:34.22 ID:CTaiSNDVO
-
紬「相談?」
律「頼む!」
紬「…」 Pi
紬「斎藤?少し校門の前で待っててくれるかしら?」 Pi
律「…どんな相談なの?りっちゃん」 -
- 62 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 16:57:35.32 ID:CTaiSNDVO
-
屋上
律「んんん…今ぐらいの季節が一番過ごしやすいな」
紬「そうね」
律「久しぶりだよな」
律「ムギとこうして話すの。お互いずっと避けたからさ」
紬「りっちゃん…相談て何かしら?」
律「そうだったな…実は私も軽音部辞めようって思ってるんだ」
紬「えっ!?」 -
- 65 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 17:04:33.41 ID:CTaiSNDVO
-
律「気付いちゃったんだよなー…澪も梓も上手くてさ、唯も初めの頃と比べたら格段に上手くなって…」
紬(…)
律「でも私はダメだ。澪の言う通り勢いだけだしな…みんなにおいて行かれた感じ?…はは…軽音部に私の居場所はなくなったかなってさ…」
紬「ダメよっ!!」
律「うん?」
紬「りっちゃんは軽音部辞めちゃ駄目!!りっちゃんの居場所は軽音部にちゃんとあるもの!」 -
- 66 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 17:09:37.08 ID:CTaiSNDVO
-
律(…)
紬「それにりっちゃん辞めちゃったら3人なって…軽音部なくなっちゃうわ!…そんなのイヤよ…絶対にイヤ!」
律「…勝手だな」
紬「!!」
律「ムギはどうなのさ?軽音部辞めたじゃん」
紬「…私…私は…軽音部に…いちゃいけないし…」 -
- 67 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 17:21:22.52 ID:CTaiSNDVO
-
律「なんで?」
紬「なんで って…私はりっちゃんと澪ちゃんや、唯ちゃんと梓ちゃんみたいに誰かと仲良しじゃないもの!」
律「はあ?」
紬「私だけ一人で…でも、みんなみたいになりたくて…でも、なれなくて…」
紬「…だってわたしは一人だから…」
律「…」 -
- 69 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 17:26:45.74 ID:CTaiSNDVO
-
紬「そんな事考える自分も嫌で…それで…わたし…」
律「…ムギ」
紬「?なに……にゃひっ!」ムギュ
律「バーカ バカムギ」ムギュムギュムギュ
紬「い…いひゃひ! いひゃひや ふぃっひゃん!!(い…いたい!いたいわ りっちゃん!!!」
パ
紬「???」
律「はぁ…やっぱりそんな事考えてたのかムギは」
紬「で でも…」 -
- 77 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 19:25:13.11 ID:CTaiSNDVO
-
律「梓に聞いたけどさ…ムギ軽音部が好きなんだろ?」
紬「好きよ。大好き」
律「私だってそうだ。多分…いや、きっと澪や唯、梓だってそう想ってるよ」
紬「それは…りっちゃんには澪ちゃんがいたり…」
律「そうじゃない」
律「私は5人でいる軽音部が好きなんだ」 -
- 78 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 19:28:53.95 ID:CTaiSNDVO
-
紬「あ…」
律「ムギの居場所だって軽音部にちゃんとあるんだよ」
紬「…あ…あぁ…」
律「私と澪とか…そういうの関係ない」
律「みんな、みんなが大事なんだ」
紬「…ああぅ…う…うあぁ…!」
澪「そうだぞムギ。みんなお前の事、大事に思ってる」
紬「グス…み 澪ちゃん…唯ちゃん」
唯「私だってムギちゃんの事大好きだよー!」ギュー
紬「う…み みんな…」 -
- 80 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 19:40:13.74 ID:CTaiSNDVO
-
紬「う、ぐす…ごめ ごめんな…さい」
律「ホントに バカだなムギは」
紬「う…ううぁっ…ごめんなさい…あああーっ!!」
梓「…らしくなかっです」ボソ
律「…なにがよ?」
梓「律先輩のキャラじゃないです」
律「…そりゃ…私は部長だからな」
- 81 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 19:41:19.61 ID:CTaiSNDVO
-
翌日
純「じゃあムギ先輩軽音部に戻ったんだね」
梓「うん…もう大丈夫だと思う…」
純「んー?その割には腑に落ちないって顔してるじゃん」
梓「うん…ちょっと悔しいかなって」
純「悔しい?」 -
- 83 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 19:48:59.42 ID:CTaiSNDVO
-
梓「私にはムギ先輩が何を悩みを解決出来なかったし」
梓「…律先輩は『部長だからな』て威張ってたけど…」
梓「やっぱり1年付き合いがあるって大きいなあって」
純「それは仕方ないんじゃないかなー」
- 82 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 19:48:01.12 ID:CTaiSNDVO
-
梓「…そう…仕方ないんだけどね」
純「梓はさ!先輩達が卒業して、新入部員が入ったら…」
純「きっと律先輩みたいに部員思いの部長になれるよ」
梓「純…」
純「…もっとも…新入部員が入らなかったら廃部になっちゃうんだけどね♪」
梓「む むー!だ 大丈夫だもん!」
純「あは 冗談よ。じゃあ私ジャズ研行くから!じゃあね」
梓「うん じゃあね」
梓(…部員思いの部長…かぁ…)
- 85 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 19:50:58.06 ID:CTaiSNDVO
-
ガラ
梓「こんにち…ムギュ」
梓「ぷぁ!もう唯先輩!いきなり抱きつくのは…」
紬「うふふ、ごめんなさい梓ちゃん」
梓「あ! ム ムギ先輩///」
紬「梓ちゃんにもお礼を言わなくちゃいけないわ」
梓「お礼って…私は何もしてないですよ。実際律先輩のおかげです」
紬「うん…でもね、やっぱりお礼を言わせて」
梓「は はい」
紬「ありがとう 梓ちゃん」 -
- 86 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 19:54:00.72 ID:CTaiSNDVO
-
律「ムギー!私の紅茶まだー?」
唯「このお菓子おいしそうだねー♪」
紬「うふ♪ほら 梓ちゃんも!」
梓「はい!いただきます」
澪「まったく梓まで…しかたないな…私の分も頼むよムギ」
紬「うん!」
- 87 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 19:55:09.11 ID:CTaiSNDVO
-
紬「えっ?軽音部好きか…ですか?」
紬「ふふふ…もちろん」
紬「私 軽音部大好きですよ」
紬「多分…ずっと」
おわり -
- 93 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 21:13:40.65 ID:/r8bfmYq0
-
おつ
いいと思う
- 96 :以下、名無しにかわりま してVIPがお送りします :2010/12/17(金) 23:17:38.26 ID:xntYaEHQ0
-
むぎゅ乙
- 102 :以下、名無しにかわ りましてVIPがお送りします :2010/12/18(土) 03:36:24.72 ID:yKPI5tMYO
-
乙
よかった -
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2011.01.25 Tue
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- 1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/24(月) 20:25:55.57 ID:A+lK7KV/0
-
澪「」カタカタカタカタ
唯「ねーねー澪ちゃーん、そろそろ寝ようよー」
澪「このレポート仕上げなくちゃいけないから」
唯「そんなの明日やればいいじゃーん」
澪「明日提出なの」
唯「何でもっと早くやらなかったのさ」
澪「金曜日に出されたんだもん。土日はずっと唯と遊んでただろ。
ほら、邪魔しない」
唯「ぶー」 -
- 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/24(月) 20:28:34.86 ID:A+lK7KV/0
-
唯「だってもう眠いよー」
澪「先に寝てていいよ」
唯「台風であちこちガタガタいって一人じゃ怖いんだもん」
澪「何を唯らしくない」
唯「もー、澪ちゃんと一緒に寝たいのー」ギュー
澪「っ/// ……はいはい。分かったから終わるまで大人しく待ってなさい」
唯「ちぇっー」 -
- 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/24(月) 20:31:19.99 ID:A+lK7KV/0
-
唯「いいもん。じゃあポン太と一緒に遊んでる」
澪「ポン太?」
唯「今日ゲームセンターで一緒にぬいぐるみ取ったでしょ?」
澪「名前つけたのか……」
唯「うん! 可愛いでしょ!」
澪「そうだな。じゃあ、そのポン太と一緒に遊んでなさい」
唯「むぅ~何か投げやりだなぁ」 -
- 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/24(月) 20:35:17.43 ID:A+lK7KV/0
-
唯「いいもん! ポン太と楽しく遊んじゃうもんねー!」
唯「なーにーにしよっかなー。あ、人生ゲーム! これにしよーっと」
澪(ぬいぐるみと人生ゲームって……)
唯「まずは職業決定ね~。あ、ポン太はお医者さんだってー。凄い!」
澪(ま、楽しそうだしいいか)
唯「そして私は~……み、未亡人?」
澪「」ガタッ
唯「ど、どうしたの澪ちゃん!?」
澪「い、いや、何でもないよ」 -
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/24(月) 20:39:47.16 ID:A+lK7KV/0
-
唯「よーしそれじゃあゲーム始めるよ! 先ずはポン太の番ね。ルーレット回して」
ポン太「」
唯「えいっ」
クルクルクルクル
唯「お、5だって~。えーっと5のマスは……」
唯「『宝くじに当選。1等3億円を貰う』」
唯「ゲームバランス……」
澪(あんなゲームだったっけかなぁ) -
- 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/24(月) 20:43:50.55 ID:A+lK7KV/0
-
唯「もーやだー! やっぱり一人じゃつまんないよ~!」
澪「ポン太と一緒だろ」
唯「む~。まだレポート終わんないの?」
澪「もうちょっとだから。ほら、ここにトランプあるからそれで遊んでなさい」
唯「1人でトランプ使って何しろっていうのさ」
澪「トランプータワーでも作ればいいじゃないか。最近はまってるだろ?」
唯「あー私3段がまだできないんだよね。早く澪ちゃんのレベルまで行きたいよ」
澪「私なら3段は目をつぶっててもできるよ」
唯「それは嘘だよー」
澪「どうかな」 -
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/24(月) 20:51:04.15 ID:A+lK7KV/0
-
唯「ねー何かコツとかあるの?」
澪「集中すること」
唯「苦手分野だー」
澪「ははは。じゃあ、何か自分の中で決まりごとを作ってやってみたらどうだ?
これが出来たらアイスを食べる、できなかったら今日一日アイス禁止、みたいにしてさ。
1回1回に真剣になることが大切なんだよ」
唯「おおーなるほど。それなら真剣になれるかも!」
澪「はい。じゃあほら、トランプ」
唯「うん。えっと~決まりごとは何にしようかな。今アイス冷蔵庫にないし。……あ、そうだ! 澪ちゃん!」
澪「ん?」
唯「これができたら、私と結婚しよう!」
澪「えっ///」
唯「失敗したら別れる!」
澪「えっ」ジワッ
唯「あああ冗談だよ澪ちゃん」アセアセ -
- 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/24(月) 20:54:23.19 ID:A+lK7KV/0
-
澪「な、何言ってるんだよ。け、結婚なんて///」
唯「だってこれが一番真剣になれそうなんだもん! 見ててね澪ちゃん、絶対1回で完成させるよ。
結婚だよ、婚約だよ、未亡人だよ!」
澪「最後のは違うだろ」クスッ
唯「へへへ。それじゃあ平沢唯、運命の挑戦をして参ります! 澪ちゃんは応援してて」
澪「うん。が、頑張れ///」
唯(はぅ!)ズキューン
唯「やる気百倍だよ! よーしやるぞー」 -
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/24(月) 21:04:06.08 ID:A+lK7KV/0
-
唯「よーし、集中集中集中……」サッサッサッ
澪(凄い、あっさり2弾目までできちゃった)
唯「おおお。ここまでこんなにスムーズだったのは初めてだよ。恐るべき集中」
澪(恐るべき集中力)
唯「よし、集中、集中」スッ
唯「おおおー澪ちゃん! 3段目の土台が置けた! 初めてだよ!」
澪「ああ。でも、最後まで気を抜くなよ」
唯「うん。よーし、集中集中しゅうちゅ……」
パッ
澪「えっ」
唯「あっ、て、停電!?」 -
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/24(月) 21:12:59.80 ID:A+lK7KV/0
-
澪「えっ! な、何っ!? ゆ、ゆいー!!」
唯「お、落ち着いて澪ちゃん、私はここだよ」ギュー
澪「あっ」ホッ
唯「よーしよし」ナデナデ
澪「///」
唯「大丈夫? 台風の所為かなぁ」
澪「うん。電気つくまで、大人しくしてよう」
唯「そうだね。あーあー、トランプタワー後少しなのに」
澪「ごたごたで倒れなかった?」
唯「うん。大丈夫だよ。見えないけど、倒れた音しなかったし」
澪「そっか」ホッ -
- 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/24(月) 21:17:34.15 ID:A+lK7KV/0
-
唯「懐中電灯どこに置いたっけ?」
澪「どうしたっけな。まぁいいじゃないか。暗いのも、雰囲気があって」
唯「さっきまであんなに怖がってたのに~」
澪「う/// しょ、しょうがないだろ。いきなりでびっくりしたんだから」
唯「へへへ、甘えてくる澪ちゃん可愛かったなぁ」ナデナデ
澪「もう/// ……あ!!」
唯「ど、どうしたの!?」
澪「レポートが……」
唯「あ!!」
澪「保存してなかったから全部消えちゃった……徹夜だな、はは」
唯「じゃ、じゃあ私も徹夜するよ! 横で応援してる!」アセアセ
澪「……うん。ありがと、唯」 -
- 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/24(月) 21:23:53.59 ID:A+lK7KV/0
-
唯「中々復旧しないね」
澪「そうだな」
唯「何にも見えないね。澪ちゃんの顔も見えない」
澪「それはそれでいいじゃないか」
唯「顔が見えないのに?」
澪「そうじゃなきゃ、こんな風にくっついていられないよ」
唯「っ……もう///」 -
- 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/24(月) 21:31:50.77 ID:A+lK7KV/0
-
唯「暇だねー」
澪「そうでもないよ。唯といるとドキドキしすぎて、いっつも心が忙しい」
唯「さっきからー///」
澪「ふふふ。……外の風、強いな」
唯「うん。大丈夫かなぁ」
澪「何が?」
唯「トランプタワー。振動で、倒れちゃわないかな?」
澪「ああ。だいじょ……」
ヒュゥウウウウウウウガン!
パタタタッ
唯「あっ」 -
- 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/24(月) 21:38:15.88 ID:A+lK7KV/0
-
唯「……倒れちゃったね、トランプタワー」
澪(……)
澪「分かんないだろ。見えないもん」
唯「今、倒れる音したじゃん」
澪「全然関係ない音かもしれない」
唯「そんな都合の良い話はないよ」
澪「じゃあ、確かめてみるか。懐中電灯の場所思い出したよ」
唯「えっ」
澪「玄関の下駄箱の上。取ってきて」
唯「え、う、うん……」
澪(……)
澪「」セッセッ -
- 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/24(月) 21:46:02.66 ID:A+lK7KV/0
-
唯「持って来たよ、懐中電灯」
澪「じゃあ、照らしてみなよ」
唯「うん」
パッ
唯「あっ」
澪「ね、倒れてなかっただろ?」
唯「……」ジー
澪「な、何?」ドキッ
唯「……うん、良かった!」ニコッ
澪「あ、ああ。良かったな」ホッ -
- 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/24(月) 21:54:44.05 ID:A+lK7KV/0
-
唯「じゃあ澪ちゃん、懐中電灯持ってて。本当に倒れるかもしれないし、完成させちゃおう」
澪「うん。慎重にな」
唯「大丈夫だよ。……集中集中集中」
サッ
唯「できたー! 記念すべき、初3段だよ!」
澪「ふふふ。良かったな」
唯「……」
澪「ど、どうしたの?」
唯「ねぇ澪ちゃん」
澪「ん?」
唯「これからも、ずっと一緒にいようね」
澪「……ああ、ずっと一緒だよ」
おしまい -
- 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/24(月) 22:01:39.37 ID:tm9JcXqVP
-
乙
- 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/24(月) 22:24:09.90 ID:ViFvvASfQ
-
終わってた
おつ
- 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/24(月) 22:54:00.92 ID:69GzI9BM0
-
みおもかわいい -
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2011.01.24 Mon
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- 1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 19:59:01.91 ID:OERl7/8r0
-
律「なあ梓ー、お前ソロやってみない?」
梓「えっ、急にどうしたんですか?」
律「いやー、ギターソロかっこよくってさー」
梓「話が見えないんですが」
澪「ああ、うちのバンドにも取り入れたいって律さわいでたなぁ」
律「そうそう。昨日澪と一緒に色んなバンドのDVD観てね?」
梓「ギターソロ……私がやっていいんですか?」
律「というか梓にやって欲しいんだよ」
梓「は、はぁ」
唯「良かったね、あずにゃん!」 -
- 2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 20:04:23.14 ID:OERl7/8r0
-
澪「私も梓のソロ聴いてみたいかも」
紬「梓ちゃん凄く上手だから大丈夫よ」
梓「……別にいいですけど、ソロって普通リードギターがやるもんじゃ」
唯「へっ、そうなの?」
律「あーあ、言わなきゃ分かんないのに」
唯「ぶう! りっちゃんしどい!」
律「テヘヘッ! 冗談、冗談ですわよう!」
唯「こうしてやる! ホアー!」
律「ア、アタシの書いたドラゴンがオカマっぽくッ!?」
唯「えっ、カバじゃないの?」 -
- 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 20:08:11.33 ID:OERl7/8r0
-
さわ子「まあまあ、梓ちゃんは唯ちゃんに遠慮してるだけでしょ」
梓「いえ、そんな事は……」
さわ子「ダブルリードってのもあるんだし、固く考えなくてもいいんじゃない」
律「さすがさわちゃん! 緩々だぜ!」
さわ子「あぁん? 私まだキツキツなんだから!」
唯「なにがキツキツなの~?」
澪「とにかくそういう訳だ。梓は気にせずやればいい」
梓「澪先輩がそういうなら」
律「何だそれ! ここは部長の面目を立てろよ!」
唯「ね~、キツキツって?」 -
- 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 20:14:22.98 ID:OERl7/8r0
-
梓「ありがとうございます、律先輩。私頑張ります」
律「お、おう?」
唯「あ、あずにゃんが珍しく素直だ」
梓「私はいつも素直です!」
澪「ムギ、梓のあの顔」
紬「よっぽど嬉しいのね。うふふっ」
律「いつもそう素直なら、私の妹にしてやってもいいぞ」
梓「何言ってるんですか律先輩? クモ膜下出血ですか?」
律「はい先生! 梓さんが笑えないジョークを言いましたー!」
さわ子「ブッ! ブフフフッ!」 -
- 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 20:21:02.91 ID:OERl7/8r0
-
澪「壷だったみたいだぞ……」
律「それでも教師か」
唯「ブラックジョークも大概だよ、あずにゃん」
律「それは分かるんだ」
唯「でもあずにゃんなら、私だって妹にしたいよ」
律「お前には憂ちゃんいるじゃん」
唯「あずにゃんは別腹だから何人いても大歓迎!」
紬「いいな! 私にもお一人!」
唯「ムギちゃんならいいよ! 安心して任せるよ!」
紬「唯ちゃん!」
梓「私は一人しかいませんけどね」 -
- 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 20:28:22.01 ID:OERl7/8r0
-
その夜。ギターソロを任された梓は嬉しくて、帰ってからロクにご飯も食べず
練習ばかりしていました。
そんな時、ふいに一本の電話がかかって来たのです。
純『あっ、梓! ロンハー観た? 超ウケるんですけど』
電話の主は、梓の同級生である鈴木純からでした。彼女は早口で、梓にとって
どうでもいい話を捲くし立てます。
梓「純? 生憎TV観てないよ。それどころじゃなくって」
純『えー、ウッソー? マジでおもしろかったのに』
梓「だからそれどころじゃないんだって」
純『……何か梓、声弾んでるね』
梓「そ、そう?」 -
- 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 20:34:31.85 ID:OERl7/8r0
-
純『うん。何かあった?』
梓「えっへっへー、教えて欲しい?」
純『いや、別に』
梓「えっ」
純『忙しいようだから、もう切るね』
梓「ちょちょちょぉ~っと待ったぁ! 聞いて! 私の話を聞いて!」
純『何よもう……』
梓「純! 純ちゃん! 純さん! 純金!」
純『仕方ないなぁ』 -
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 20:39:47.24 ID:OERl7/8r0
-
梓「ありがと! 実はね私、ギターソロ任されちゃったんだ!」
純『えっ、ソロ!? 一年なのに凄いね!』
梓「そっ、そうかなー? ぶ、部員が少ないからだと思うけど」
純『まあまあ、謙遜しなさんな。信頼されてる証拠じゃん』
梓「えへへっ、あんまり褒めないで。調子乗っちゃう」
純『でもいいなー、私何てジャズ研じゃペーペーなのに』
梓「あそこ部員多いもんね」
純『そりゃ梓の腕ならさ、一年でも――』
梓「純も軽音部入れば良かったのに」
純『お、大きなお世話。ジャズ研にだってジャズ研のいい所があるんですぅ』 -
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 20:45:22.81 ID:OERl7/8r0
-
梓「ううん、純もいたらもっと楽しかったかなって」
純『は、恥ずかしい事いわない!』
梓「そ、そうだね……」
純『もう切るよ、ソロの練習で忙しいんでしょ?』
梓「うん。おやすみ純」
純『――が、頑張って梓!』
梓「あ、うん」
電話が切れた後、梓は一人ガッツポーズをして、もうしばらくギターの練習を
続けました。この分なら、納得のいくソロが出来そうですね。 -
- 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 20:49:25.31 ID:OERl7/8r0
-
翌日、唯と憂の仲良し姉妹が揃って登校しています。そして憂が幼馴染の和に
気がついて、彼女に向かって手を振りながら呼びかけた所です。
憂「和さ~ん!」
和「あら、奇遇ね。珍しく早いんだ」
唯「の、和ちゃん肩を貸して……」
和「どうしたの唯? ストッキング被っちゃって」
唯「眠いんだよぉ! 被ってる訳ないじゃん!」
憂「実はお姉ちゃん昨日ずっと起きてて。ギターの練習してたみたいで」
唯「和ちゃん、たまにグサっとくる事いうよね」
和「そうなんだ。ダメじゃない、しっかり睡眠はとらないと」
唯「だって私もソロやりたいんだもん」 -
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 21:07:43.27 ID:OERl7/8r0
-
和「ソロ?」
憂「ギターソロの事です。梓ちゃんがやるならお姉ちゃんも負けられないって」
和「ふ~ん、唯がそんな対抗心を燃やすなんてね」
唯「だって私へたっぴだし、もっと練習しないとあずにゃんに追いつかない」
憂「でもお姉ちゃんムチャしすぎ。体壊しちゃうよ」
和「昔から夢中になると周りが見えなくなる、変わってないわね」
唯「へへへ……やってみるとこれが楽しくて」
和「うふふ、頑張っている唯を見るのは好きよ」
唯「和ちゃん……おぶ……って……」
憂「おっ、お姉ちゃん寝ちゃダメーッ!」
和「重いわ唯……成長したわね……」 -
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 21:13:19.99 ID:OERl7/8r0
-
結局、二人がかりで唯を担ぐ事になり、遅刻は免れたものの、朝から重労働を
課せられてしまった憂と和。
憂「そんな訳で、大変だったんだよっ!」
ここは一年二組の教室。遅刻ギリギリ登校を純に冷やかされた憂は休み時間、
それを余儀なくされた理由を説明したのです。
純「へぇ~、やっぱ憂のお姉ちゃんっておもしろい」
梓「そういう問題?」
憂「えへへっ、そうなんだぁ~」
梓「憂もこのケースでその反応はおかしい」
純「でも徹夜で練習なんてハンパないね」
梓「唯先輩らしい。その極端な所」 -
- 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 21:21:00.52 ID:OERl7/8r0
-
純「でも梓ぁ、唯先輩がそんだけ必死に練習したっていうなら」
梓「何? 唯先輩がやる気になったのはいい事だよ」
純「いやもしかして、ソロ危ないんじゃないのぉ~?」
梓「純!」
純「ひゃ、ひゃいっ!」
梓「お昼になったら部室まで付き合って」
純「う、嘘です梓様――へっ?」
梓「合わせてみたいの! 言わせないで!」
純「ひゃい!」
憂「燃えてる梓ちゃん、かわいいっ!」 -
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 21:26:18.66 ID:OERl7/8r0
-
そしてお昼休み、昼食も早々に切り上げて、梓と純は軽音部の部室までやって
来ました。梓のソロの練習をする為です。
梓「適当でいいからリズムとって。出来る?」
純「じ、自信ない」
梓「いいからやって」
純「考えてみたら何で私が、梓の練習に付き合わなければならないのだろう?」
梓「ブツクサ言わない。時間もったいない」
純「は、はーい……あ、この立ち位置、もしかして澪先輩?」
梓「そうだよ」
純「そっか! 何だか俄然テンション上がって来たかも!」
梓「……ちょっとムカつくから、律先輩の位置でやってくれる?」
純「何で!? ドラムあってやり辛いし!」 -
- 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 21:32:18.67 ID:OERl7/8r0
-
なんやかんやありましたが準備が終わり、練習が始まりました。
純のぎこちないベースから、やがて梓の滑らかなギターが入っていく。その
正確で熟練されたギター捌きは、さらに磨きがかけられており、梓のギターの
上手さをとっくにご存知の純でさえ、驚きました。
これほど上手い人がうちの部に、いや高校生にいるのだろうかと。それ位の
衝撃だったのです。
梓「――ふぅ」
純「す、凄いよ梓、プロみたいだった」
梓「褒めすぎ。まだまだだよ、ちょっとミスっちゃったし」
純「ううん、こんなに上手くなってるとは思わなかった」
梓「あ、ありがと」
純「そりゃ唯先輩でも敵わないよ」 -
- 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 21:36:30.40 ID:OERl7/8r0
-
梓「唯先輩は、まだ一年ちょっとしかキャリアがないんだよ」
純「まあ……」
梓「練習もロクにしてないし、私の方が上手くて当たり前」
純「そ、そうだよねー」
梓「でも凄いスピードで進歩してる。その内私なんて追い抜かしちゃうよ」
純「まさか。梓もっと自分に自信もちなよ」
梓「そうじゃない。唯先輩、本当は凄いんだから」
純「あははっ、梓ってば何だか憂みたいだねー。唯先輩大好きですってか?」
梓「なっ、ち、違うもん! 私はただ客観的にね!」
純「はいはい、照れない照れない」
梓「もっ、もうー! 純ーっ!」 -
- 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 21:42:04.85 ID:OERl7/8r0
-
そんなこんなで放課後になり、軽音部は珍しく練習モード。今日張り切って
いるのは、梓だけではないようです。
律「じゃあ梓、ふわふわのサビの後ソロだから。頼むぞ!」
梓「はい」
唯「ちょっと待っておくんなせえ、りっちゃん!」
律「何だ唯? 今日はお茶なら後だぞ?」
唯「違うよぉ~、りっちゃんじゃあるまいし」
律「失礼ね! ていうかお前にだけは言われたくねぇッ!」
唯「所で律ちゃんって言い難いけど、りっちゃんでも一応つが小さくなった
だけで何一つ省略されてないよね。でも言い易い不思議!」
律「お前は一体、何の話をしとるんだ?」 -
- 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 21:47:19.77 ID:OERl7/8r0
-
唯「あっ、違いました! 私もソロをやりたいです!」
律「唯~、あのな? それは梓に決まったろ?」
唯「あずにゃんと一緒がいいの!」
梓「……」
澪「唯、残念だがそれは曲の構成上無理なんだ」
紬「唯ちゃんは歌もあるんだからそれに集中して……ねっ?」
律「そうだぞ唯~、お前そんな器用じゃないんだからぁー」
唯「りっちゃんだけには言われたくありません!」
梓「あ、あの、私と唯先輩が順番にやればいいんじゃないでしょうか?」 -
- 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 21:52:10.71 ID:OERl7/8r0
-
唯「でへへぇ~、あずにゃ~ん」
律「梓、あんま唯を甘やかすなよ。メンドクサイ」
梓「でも私、唯先輩のソロも聴いてみたいですし……」
唯「あずにゃんよ~しよしよしよし~」
梓「やめて下さい! ソロ譲るなんて言ってませんから!」
唯「わ、分かってるでごじゃいまするよぉ」
律「う~んでも、そういう対決みたいな事する必要あるのかなァ?」
澪「私は梓に同感だぞ。唯がどんなソロ作ったのか興味あるし」
唯「澪ちゃん! やっぱり優しい!」 -
- 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 21:57:09.86 ID:OERl7/8r0
-
澪「あ、当たり前だろ……仲間じゃないか」
唯「澪ちゃん……」
澪「ほら、タイがほどけてる」
唯「わざとなの……澪ちゃんに直して貰いたいから」
澪「バカ……」
律「そこそこー、臭いドラマしないー」
唯「てへっ」
紬「どうせ練習なんだし自由にやりましょ」
唯「うわ~い!」
律「そだな。んじゃまず梓から行くぞ」
梓「はいっ!」 -
- 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 22:04:37.84 ID:OERl7/8r0
-
一曲目、梓のソロ。下手すれば浮いてしまうような自己主張がありながら、
見事に曲とマッチしており、キャッチーでかっこいい感じ。
評判は上々のようです。
澪「梓、凄いじゃないか!」
律「おまぁー、本当に高校生か!?」
紬「梓ちゃん、かっこよかったわ」
梓「ありがとうございます」
唯「あははっ、やっぱあずにゃんには敵わないかなぁ~」
梓「弱気な事いわないで下さい。唯先輩の番ですよ」
唯「あいよっ! 頑張るよー!」 -
- 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 22:10:44.47 ID:OERl7/8r0
-
次は唯の番です。正直梓は、自分の方がまだまだ唯先輩より上だと、高を
括っていました。しかし、予想外の事が起きます。
唯のソロが始まると、梓は、いえ部員全員が驚愕したのです。
独創的、かつ初めから用意されていたかのような一体感。聴いているだけで
踊りだしたくなるようなメロディ。
曲自体が唯のソロによって、何段階もスケールアップしたかのよう。これを
聴いて、鳥肌の立たない者はその場にいませんでした。
律「――あっ、ごめ」
唯「あっ、りっちゃんミスった。ダメだよー、せっかくノってたのに」
梓「……」
律「こ、これ、本当に唯が作ったのか?」
唯「うん。アドリブで申し訳ないけど……てへへ」 -
- 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 22:15:38.26 ID:OERl7/8r0
-
律「アドリブだって」
澪「はは……」
唯のソロを聴いた後では、梓のソロは悪くはないもののどこかありきたりな、
使い回しのようにしか感じず、妙な空気が漂いました。
梓「唯先輩の方が、良かったですね」
その空気を破ったのは、梓本人でした。それを聞いて能天気に唯は喜びます。
唯「本当? 頑張った甲斐があったよぉ!」
律「い、いやね? 梓も良かったんだ、ホント」
澪「でも、ふわふわに合うのは唯かな……」
紬「わ、私は梓ちゃんでもいいと思うけど」 -
- 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 22:20:40.45 ID:OERl7/8r0
-
梓「いいんです、ムギ先輩。私がやっても私自身が納得しませんから」
紬「……」
澪「しかし唯は、本当に私達を驚かせるな……」
律「お茶にしない? アタシつかれちった!」
唯「あはは! ナイスな提案だね、りっちゃん!」
梓「私も今日は疲れちゃいました」
紬「そ、そうね! 今すぐ準備するね!」
梓「あ、少しトイレ行って来ていいですか?」
律「おっ、いってら」
唯「あー、私も行くー!」 -
- 36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 22:27:14.62 ID:OERl7/8r0
-
律「お前は残れ!」
唯「うわーん! どうして!?」
そそくさと部室を出て行く梓を見守った後、律は唯に言いました。
律「一人にしてやろうよ。ああ言ってたけど、やっぱりショックはあるんだよ」
唯「ショックゥ? なにそれ?」
律「ああ~、もうお前ニブいな! なんザマスか!」
澪「唯に負けた事が、私達の期待に応えられなかったって思ってるんだよ」
唯「へっ?」
紬「梓ちゃん、責任感の強い子だから……」 -
- 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 22:32:58.05 ID:OERl7/8r0
-
唯「そんな! あずにゃんは」
律「分かってる! 梓の演奏は完璧だったさ!」
澪「ただ、唯が凄すぎた」
唯「わ、わた……私、そんなつもりじゃ……あずにゃんと一緒に……」
紬「唯ちゃんは悪くない。ううん、誰かが悪いって訳じゃないの」
唯「こんな事なら私やめ――」
律「やめる? その方が梓を傷つけるんじゃないのか?」
唯「ふえぇん! じゃあどうすればいいのぉ!?」
律「泣くな! 私が悪かった! ごめん!」 -
- 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 22:38:13.27 ID:OERl7/8r0
-
紬「梓ちゃんは強いわ。きっと――いいえ、必ず立ち直る」
澪「でも少し心配だな……」
紬「私、ちょっと見てくる!」
律「ムギ!」
唯「ムギちゃん! お供します!」
律「お前は残れ! 刺激が強すぎる!」
澪「唯、ムギに任せよう!」
唯「あうっ、離して! 漏れちゃうよ!」
律「が、我慢しろい」
紬「待ってて唯ちゃん! すぐ梓ちゃん呼んで来るからね!」 -
- 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 22:43:17.17 ID:OERl7/8r0
-
紬が梓を探しに部室を出ると、梓がそう遠くない所で一人佇むのが見え
ました。紬は忍び足でゆっくりと、慎重に梓に近付いていきます。
わざとらしい、無駄のある動きなので、梓がそれに気がついてない筈はない
ですが、梓は気付かないフリをして紬を迎えました。
梓「……」
紬「泣いていたの?」
梓「泣いてなんかいません! あれ位で泣く訳ないです!」
紬「そっか」
梓「何しに来たんですかムギ先輩」
紬「トイレだけど……ダメかしら?」
梓「申し訳ありません。少しだけ一人にしてもらえますか」 -
- 41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 22:51:27.29 ID:OERl7/8r0
-
紬「どうしても?」
梓「私は唯先輩に嫉妬しているのかも知れません」
紬「そんなの……」
梓「そういう悪い気持ちを唯先輩に持つ、自分が許せないんです」
紬「しょうがないわよ。誰だって弱いもの」
梓「私はムギ先輩のように寛大じゃない。小さい人間なんです」
紬「私だって別にね?」
梓「理屈じゃ分かっていても割り切れない」
紬「――ねえ、梓ちゃん。昔話だけど聞いてくれる?」 -
- 42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 22:57:17.39 ID:OERl7/8r0
-
梓「何ですか急に?」
紬「私は小さい頃、しつけが厳しかったせいかあまり遊ばない子どもだったわ」
梓「そうなんですか?」
紬「ええ、良く遊ぶ子は、悪い子だと思っていた位でね」
梓「今のムギ先輩はその反動なんですね」
紬「うふふっ、そうよ。ブランコ乗ったりだとか、そういう事もしてみたい」
梓「高校生なのに?」
紬「まだ、高校生だもん」
梓「ぷっ、くく……」
紬「笑った」 -
- 44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 23:05:07.47 ID:OERl7/8r0
-
梓「だってムギ先輩、おかしいです」
紬「でも一人じゃ勇気がなくて出来ないんだけどね」
梓「私で良かったら付き合いますよ」
紬「高校生なのに?」
梓「自慢じゃありませんが、まだ小学生にも間違えられます」
紬「やだっ、うふふっ! でもいいのかな?」
梓「卵を割らなければオムレツは作れないと言いますし」
紬「あら? つまり?」
梓「ドイツ軍人の言葉らしいんですけど、何故か気に入ってて座右の銘です。
何事も行動しなければ始まらない、分からないって意味らしいです」 -
- 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 23:11:57.29 ID:OERl7/8r0
-
紬「行動力抜群の梓ちゃんにピッタリね」
梓「あはは……何だか照れ臭いですね」
紬「梓ちゃんは強いよ。何でも行動に移せる勇気があるもの」
梓「ありがとうございますムギ先輩。いつも励ましていただいて私……」
紬「梓ちゃん……でもね、私だけじゃなくてみんな心配してる」
梓「もう平気です。本当だもん」
紬「……唯ちゃんも梓ちゃんの事、心配してたよ」
梓「む! 唯先輩が甘えた事いってたら叱ってやります!」 -
- 47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 23:17:44.30 ID:OERl7/8r0
-
紬「あらあら」
梓「行きますよ! ムギ先輩!」
紬「ふふ……」
紬(唯ちゃん……私ちょっと妬けちゃうかも……)
梓が戻った軽音部。彼女が戻ればいつも通り、みんな和やかお茶を楽しみ
ます。
唯「あずにゃん! 会いたかったよぉ!」
梓「何言ってるんですか! お茶が済んだらまたやりますよ!」
唯「えぇ~、今日はもう無理無理ぃ~」
律「無理無理ぃ~」
梓「そんなんじゃダメです!」
澪「梓、こいつらはもうダメだ」 -
- 48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 23:23:08.55 ID:OERl7/8r0
-
その翌日。梓は今日も元気に登校、教室で憂と純に挨拶をします。ついでに
昨日の出来事も話しました。
梓「そういう訳で、唯先輩はやっぱり凄かった」
憂「でしょっ、でしょっ? えへへ~」
純「ふ~ん。何かにわかには信じられない話ねえ」
憂「お姉ちゃんやる時はやるんだよ! 純ちゃんっ!」
梓「普段の唯先輩を見ていると信じられないけど、本当なのよ」
純「う~ん……やっぱりにわかには信じられないわ」
梓「良かったら純、部活見学する? 自分の目で確かめれば」
純「やっ、私も部活あるんですが」
憂「私行こうかなぁ」 -
- 49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 23:29:09.50 ID:OERl7/8r0
-
梓「本当?」
憂「うーんでも、お夕飯のお買い物しなきゃいけないの」
梓「残念。憂も軽音部入ってくれたら楽しかったけど、それがあるんだよね」
憂「ごめんね付き合えなくて。でも梓ちゃんがそう言ってくれて嬉しいよ」
梓「あはは、憂ったら~」
純「……梓、憂にも私と同じ事いってるんだ」
梓「えっ」
純「軽音部に入れば誰でもいいのねっ! この女ったらしっ!」
梓「何その小芝居」
憂「梓ちゃんと純ちゃん、もうすっかり仲良しだねぇ~」 -
- 50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 23:34:40.34 ID:OERl7/8r0
-
そして放課後。軽音部はまたもや練習モード。雪でも降るんでしょうかね?
律「よっし、ふわふわ行くぞぉ。唯~、ソロ頼むな」
梓「唯先輩! しっかり決めて下さいね!」
唯「あっ、あのぅ~、誠に言い難いのですが……」
梓「どうしたんです?」
律「トイレか?」
唯「わ、忘れちゃった!」
律「なっ、なにィーッ!?」
唯「えへへ……だってぇ、アドリブって言ったじゃ~ん」
梓「……」 -
- 51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 23:41:18.05 ID:OERl7/8r0
-
澪「あの凄いソロが幻……究極の一夜漬けだな……」
紬「録音すれば良かったね」
律「もう一回やれ! 責任取れ!」
唯「む、むりゃぁ――あずにゃ~ん!」
梓「し、信じられません! 真面目にやって下さい!」
唯「しょ、しょんなぁ~」
律「あーあ、やっぱりソロは梓に決定だな」
唯「良かったね、あずにゃん!」
梓「全然良くありません!」
紬(うふふ、唯ちゃんは嘘が上手ね)
多少の本気も何のその、今日も軽音部は平常運転止まりのようです。
おしまい。 -
- 52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 23:43:00.46 ID:qfqrkLLN0
-
乙
いい話だった
- 53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 23:49:13.14 ID:DhhxartO0
-
梓とムギのやり取りが良かった乙
- 54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/01/23(日) 23:52:40.82 ID:OP1UMs/D0
-
乙
ちょっといい話って感じで面白かった -
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| けいおん!!SS
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2011.01.24 Mon
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- 1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 18:58:06.24 ID:ZJGA7hQa0
-
憂「お姉ちゃん、ご飯出来たよ」
唯「いただきま~す。今日も美味しいよ憂」
憂「お姉ちゃん、お風呂沸いたよ。お先にどうぞ」
唯「ありがと~。じゃあ、入ってくるね」
憂「お姉ちゃん、6×8は48だよ」
唯「あ、そっか~。46じゃあちょっと少なかったか~」
憂「お姉ちゃん、そこはこうやって弾けばいいんじゃないかな」ジャカジャン♪
唯「なるほど~、そうやって弾けばいいのか~」
憂「ちゃんとそう楽譜に書いてるよ」
憂「お姉ちゃん、もうこんな時間だよ。明日も学校だしもうそろそろ寝よっか」
唯「うん、おやすみ~憂」 -
- 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 19:02:35.07 ID:ZJGA7hQa0
-
唯「……」
唯「……おかしいよ」
唯「同じ親から生まれて、同じような環境で育ってきたのに
なんでこんなにも差が出来たんだろう……」
唯「憂は家事をやらせれば、その辺の主婦以上のことをやってのける。とくに料理はプロ級」
唯「おまけに、勉強も出来る。ギターだってちょっとやっただけで覚えた」
唯「私といえば、家では常にゴロゴロ。家事なんてやった事が無い」
唯「勉強も一学年下の憂に教えてもらうこともしばしば」
唯「ギターだって毎日触ってないとすぐ忘れる」
唯「これじゃあ、どっちが姉かわからないよ」
唯「ん? そもそも、本当に私が憂のお姉ちゃんなんだろうか……」
唯「実は、本当の姉妹じゃないのかも……」
唯「だって、こんなにも差があるとなるとその可能性も捨てきれない……」
唯「きっと、憂はこんな不出来な私を救うために22世紀の未来から来た憂型ロボット!」
唯「未来では、そんな憂型ロボットが沢山いて、一家に一台憂の時代が来るに違いない」
唯「なんて素敵な未来。人類の明日は明るい!」 -
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 19:08:37.18 ID:ZJGA7hQa0
-
・ ・ ・ ・ ・
唯「と、昨日の私はここで考えるのをやめて眠りについたのです」
澪「馬鹿がいる」
唯「だって、そうでもなきゃ有り得ないよ」
梓「確かに、憂の高性能っぷりを思うと、唯先輩のポンコツっぷりは考えられないですね」
唯「でしょ~。まるで私ったら引き立て役だよ」
律「顔はすっげー似てるのにな」
梓「中身は月とスッポンですよね」
唯「さっきからあずにゃんさりげに酷いよね」
紬「でも、私も家のことは全て執事や家政婦に任せっきりよ」
唯「そっか~、そういう意味では私とムギちゃんは一緒なのかもね」
澪「何言ってるんだ、平民風情が」
梓「憂はお手伝いさんじゃありませんよ、妹じゃないですか」 -
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 19:13:07.34 ID:ZJGA7hQa0
-
律「姉として恥ずかしくはないのか?」
唯「恥ずかしいと感じているなら、家でゴロゴロしたりしないよ!」
律「なんという正論!」
澪「いや、せめてそこは恥ずかしがれ」
唯「だって憂の家事の邪魔にならないようにゴロゴロするのも結構難しいんだよ」
梓「だって、の意味がわかりません」
唯「ゴロゴロするにも経験が必要だってことだよ」
梓「はぁ……そうですか」
澪「まぁ、唯がそれでいいならいいんじゃないか」
律「そうそう、憂ちゃんも好きでやってるみたいだし」
唯「でも、姉の威厳ってもんが」
澪「お前はどうしたいんだよ……」 -
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 19:17:04.33 ID:ZJGA7hQa0
-
唯「なんとか私に姉の威厳を取り戻せるようにご指導をお願いします!」
澪「指導たって……」
律「よし! わかった! ここは私に任されよ!」
紬「そうね、唯ちゃんを除けばお姉ちゃんなのはりっちゃんだけだもんね」
唯「りっちゃん……、ありがとう!」
澪「まぁ、いつもはこんな律だけど家ではちゃんとお姉ちゃんしてるもんな」
梓「律先輩の家でハンバーグご馳走になったときは驚きました」
紬「洗濯物も取り込んでちゃんと畳んだりしてたのもりっちゃんだったのよね?」
律「うん、ウチの親そこのところ結構厳しいからさ」
律「弟と当番で洗濯物の取り込みや風呂掃除や食器洗いやってる」
唯「私は全部憂に任せっきりだ」
梓「せめて少しは手伝ったらもっとお姉ちゃんっぽくなるんじゃないですか?」
唯「え~、それは面倒くさいよ~」
梓「……」 -
- 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 19:20:55.38 ID:ZJGA7hQa0
-
唯「もっとこう手っ取り早くお姉ちゃんって感じの、なんか無い?」
澪「なんだよそれ……」
律「そうだな~、やっぱり私の方が上だって思い知らしめることじゃないか」
律「私は常に聡より先にお風呂に入るし
ご飯のおかずだって聡のお皿に盛ってる方が美味しそうだったらそれを奪う!」
律「こうやって、姉には服従するものだと身に沁みこませるんだ」
唯「そっか……、確かに私はいつも憂には感謝してばっかりだった」
律「そうだよ、だから唯自身も姉の自覚が足らないんだよ」
唯「わかった! 今日からは強気で憂に対して接してみるよ!」
律「ああ! その意気だ!」
梓「いいんですか? なんだか変なことになってません?」
澪「もう突っ込む気にもならないよ……」
紬「唯ちゃんと憂ちゃんは姉妹愛が売りだっていうのに……」
梓「売りって……」
澪「こっちにも少しズレた人がいた……」 -
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 19:24:37.40 ID:ZJGA7hQa0
-
平沢家
憂「お姉ちゃん、ご飯できたよ」
唯「ほほう、今日の献立は豚バラ煮込みですか」
憂「う、うん。ごめんね……」
唯「なんで謝るの?」
憂「な、なんでもないよ。さぁ、食べよ」
唯「いただきま~す」
唯「美味しいね~憂……」
唯(っと、いけないいけない。今日りっちゃんに言われたように偉そうにしないと)
唯「……」
憂「どうしたの? お箸置いて」
唯「この豚バラ煮込みはできそこないだ、食べられないよ」
憂「!?」
唯(ふっふっふ。面食らってるね憂。もう優しいお姉ちゃんは今日限りだよ!) -
- 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 19:28:18.17 ID:ZJGA7hQa0
-
唯「明日もう一度ここへ来て下さい。本物の豚バラ煮込みをご覧に入れますよ」
憂「お姉ちゃん……」
唯(あれっ? 私って豚バラ煮込み作れたっけ?)
憂「ごめんなさい……」
唯(ま、まぁいいか。どうやら、私の気迫に憂もビビリまくりだし
これで姉の威厳を保つことができ……)
憂「でも、嬉しい……」
唯「へっ?」
憂「やっぱり、お姉ちゃんにはバレバレだったんだね」
唯「?」
憂「今日は学校で先生に頼まれごとされちゃって帰ってくるのが遅かったから
ご飯の支度が間に合わなくって、スーパーのお惣菜物で済ませちゃおうって横着しちゃった」
唯「じゃあ、この豚バラ煮込みは」
憂「うん、私が作ったやつじゃないの」
唯「そ、そうなんだ……」 -
- 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 19:32:35.08 ID:ZJGA7hQa0
-
憂「お姉ちゃん、私の味付けちゃんと覚えてくれてたんだね
正直、何食べても美味しいって言うタイプの人かと思ってたけど」
唯「う、うん。まぁね(実際美味しかったんだけどね……)」
憂「スーパーのお惣菜物作ってる人には悪いけど
やっぱり私の作った物の方が美味しいってことだよね!」
憂「私、これからは、どんなに帰りが遅くなってもちゃんとご飯作るようするよ」
憂「だって、お姉ちゃんの喜んでくれる顔が私にとって一番なんだもん!」
唯「そ、そうだよ! 憂が作ってくれるご飯が一番だよ!」
憂「私、こんなにわかってくれる人がお姉ちゃんで良かった!」
唯「お姉ちゃんは何でもお見通しだよ!」
憂「うん! お姉ちゃんすごい!」
唯(まぁ、結果オーライかな) -
- 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 19:38:12.75 ID:ZJGA7hQa0
-
・ ・ ・ ・ ・
唯「さて、次はどうしようか……」
唯「りっちゃんは、絶対弟よりも先にお風呂に入るって言ってた」
唯「よし、今度はそれで!」
憂「お姉ちゃん、何ブツブツ言ってるの?」
唯「な、なんでもないよ」
憂「そう? あ、もうすぐお風呂沸くからね」
唯「わ、私が先に入るからね!」
憂「へっ? うん、いいよ。っていうかいつもそうじゃない?」
唯「そうだったね……」 -
- 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 19:40:50.75 ID:ZJGA7hQa0
-
カポーン
唯「ふぃ~、いい湯じゃの~」
唯「なんかいまいち姉の威厳を取り戻そう作戦が上手くいってない気がするなぁ」
唯「ここで一発ドカンとかまさないと」
唯「よし、いっちょやってやっか!」 -
- 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 19:44:54.48 ID:ZJGA7hQa0
-
・ ・ ・ ・ ・
憂「お姉ちゃん、勉強わかる?」
唯「……」
憂「お姉ちゃん?」
唯「憂、それがお姉ちゃんに対する態度かな?」
憂「えっ?」
唯「確かに憂は頭が良い。だけど、一学年下の子に勉強を見てもらうなんて
こんな屈辱的なことないよ!」
憂「!?」
唯「わかったら出ていってくれるかな?」
憂「ご、ごめんね、お姉ちゃん」
唯(そうだよ、これだよ! 私に足りなかったのはこの突き放す姿勢だよ!) -
- 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 19:49:10.17 ID:ZJGA7hQa0
-
憂「そうだよね、もう大学受験も近いんだから自分で勉強しなきゃいけないもんね」
憂「ちょっとでも、お姉ちゃんの力になれたらって思ってたけど
これからは、お姉ちゃん自身の力で難問を解いていくのも必要になってくるよね」
憂「わかった。これからはもうお姉ちゃんの宿題手伝ったりしないよ!」
唯「わかればよし!」
憂「頑張ってね! お姉ちゃん!」
唯「これで、憂には厳しい姉像を植えつけることができたかな」
唯「さてと……」 -
- 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 19:51:36.76 ID:ZJGA7hQa0
-
翌日
唯「和ちゃん、宿題見せてください」
和「あんた、最近はちゃんと自分でやってきてたのに……」
唯「昨日ほど自分が無力だと感じたことはなかったよ……」
和「何言ってるの?」
唯「人は一人では生きていけないんだね……」
和「そ、そうね」 -
- 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 19:56:01.82 ID:ZJGA7hQa0
-
放課後
律「で、突き放したはいいけど、結局一人で宿題できなかったと……」
唯「……はい」
梓「典型的な駄目人間の例ですね」
唯「そんなぁ~、あずにゃんのいぢわるっ!」
澪「そもそもなんで唯はそんなにお姉ちゃんぶりたいんだ?」
唯「だって、悔しいじゃん」
紬「悔しい? けど感じちゃう?」ビクンビクン
唯「誰に聞いたって憂の方がよく出来た子だって言われるんだよ」
澪「それには、同意せざるを得ないな」
梓「明らかに憂の方がお姉ちゃんっぽいですもんね」
唯「まぁ、ああ見えて夜は甘えん坊さんだっりするんだけどね」
紬「そこのところ詳しく教えてもらえないかしら?」
律「ムギはもう黙ってろ、な」 -
- 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 20:01:36.59 ID:ZJGA7hQa0
-
梓「でも、よく考えたら、軽音部ってお姉ちゃんか一人っ子しかいないですよね」
唯「妹キャラならいるけどね」
梓「妹キャラ? トンちゃんですか?」
律「なに言ってんだよ。お前のことだろ」
梓「えっ? わ、私!?」
唯「そうだよ~。あずにゃんはこの軽音部の妹的存在だよ~」
梓「ただ年下ってだけじゃないですか!」
唯「唯お姉ちゃんって言ってみて」
律「私のことは律お姉様って呼んでもいいんだぞ~」
梓「そんなのまっぴらごめんです!」
梓「それに、どうせお姉ちゃんって呼ぶなら澪先輩やムギ先輩をそう呼びたいです」
律「おいおい、プライベートでも本物のお姉ちゃんを除け者にして何言ってるんだよ」
唯「私たちは十数年のお姉ちゃん実績があるんだよ!」
澪「実績があるだけで、その実力には疑問符がつくけどな」
唯「それは言わない約束だよ、澪ちゃん」 -
- 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 20:08:48.35 ID:ZJGA7hQa0
-
梓「そうですよ、どっちかって言うとこの軽音部では一人っ子の方がしっかり者でお姉ちゃんっぽいです」
律「な、なにをー!!」
梓「唯先輩はだらけてるし、律先輩は何かと言うと遊びだすし」
梓「その点澪先輩はしっかりしてるし、ムギ先輩は落ち着きがあるし」
唯「でも、ムギちゃんだってどっちかって言うと私たちと一緒にはしゃぐことが多いよ!」
律「そうだそうだー! そういう意味ではムギは私たちと同じさぼるの大好きチームだな」
澪「駄目な方をアピールしてどうするんだよ……」
紬「一緒にしないでっ!!」
唯律「!?」
紬「私が、お姉ちゃん側と同じように見られているなんて……屈辱だわ……」
紬「あくまでも、私は一人っ子側よ!」
澪「む、ムギ!? 急にどうした!?」 -
- 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 20:16:36.01 ID:ZJGA7hQa0
-
紬「えっ? これって一人っ子対お姉ちゃんって構図じゃないの?」
澪「ん? ああ……そうかもしれないけど……」
紬「だからこうしたほうがこの遊びも盛り上がると思って」
律「なんだビックリした」
唯「本気で嫌がってるのかと思っちゃったよ」
紬「じゃあ、改めて……。もっとお姉ちゃん側はしっかりすべきだと思います!」
律「お姉ちゃんにはお姉ちゃんにしかわからない苦悩があったりするんだぞ!」
紬「例えば?」
律「さすがに今はもうないけど昔はお姉ちゃんだから我慢しなさいとか、何かにつけて弟優先にされるんだよ。
これは一人っ子のお前らには無いだろ」
澪「まぁ、確かにな」
唯「でも、憂はいつでも私優先でしてくれるよ」
律「バカ、今はお姉ちゃんが本当はいかに大変かをアピールする場面だろ」
唯「あ、そっか。しまった」
紬「ふふふっ。やっぱり、お姉ちゃんって大したことないみたいね」
梓(これを遊びにしてしまってるムギ先輩も結局のところあっちグループな気がする……) -
- 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 20:24:01.11 ID:ZJGA7hQa0
-
律「そもそも、一人っ子なんてわがまま放題に育てられたんじゃないのか?」
唯「そうそう、もうガマンなんて知らないって感じ」
澪「その言葉、そっくりそのまま唯に返すよ」
唯「へっ?」
律「澪なんて~、ちょっと怖いことがあったらすぐ蹲って『もう嫌だー』なんて言っちゃうし」
澪「くっ……」
唯「あずにゃんだってさ、ほぼ初対面の私たちに怒鳴ったりしてさ」
梓「うっ……」
律「きっと一人っ子で甘やかされて育ったから、そんな事しても許されるって思っちゃってるんだろうな」
唯「やだやだ、最近の若者は……」
澪「おい、同年代」
律「ムギなんて、一人っ子の上にお嬢様だから想像を絶する甘やかされっぷりだろ」 -
- 40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 20:29:50.00 ID:ZJGA7hQa0
-
唯「毎日ハーゲンダッツ! みたいなね」
律「なに? その例え」
唯「私はあっても週に1回なんだよね……」
律「あっそ……」
紬「確かに、むしろハーゲンダッツ以外のアイスがあったのを知ったのは皆と遊ぶようになってからだわ」
梓「さ、さすがお嬢様」
澪「いや、ただの世間知らずってだけだろ」
紬「甘やかされていたっていうのは否めないわ」
紬「私には、薪を背負いながら本を読んだ経験なんて無い……」
梓「私たちにもそんな経験ありませんってば」
律「お姉ちゃんってのは弟や妹を思いやる心ってのがないとやっていけないからな」
唯「そうそう、小さい頃は私だって憂のお守りしたことあるし」
律「そんな使命感っての? その辺が一人っ子には欠けてるんだよな」
紬「ごめんなさい……。私のせいで一人っ子の分が悪くなっちゃって……」
澪「気にするなよムギ、本当にどうでもいいことだから」 -
- 41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 20:36:01.74 ID:ZJGA7hQa0
-
梓「そんなことありません!」
澪「梓?」
梓「確かに、ムギ先輩はお嬢様で甘やかされて育ったかもしれません」
梓「でも、ムギ先輩がこの軽音部で一番苦労をした経験があるんじゃありませんか?」
紬「私が?」
律「な、なんだ?」
梓「ムギ先輩は唯一この中でバイト経験があるからです!」
梓「自分で働いてお金を稼ぐというのは中々大変なことだと思います!」
梓「それをやってのけたムギ先輩はこの中で一番人生経験が豊富で
それ故にこの軽音部での一人っ子の優位性を表してると思います!」
律「あ、でもそれだったら私もバイトしたことあるぜ」
梓「えっ?」
唯「私も~」
梓「ええっ!?」 -
- 44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 20:41:14.54 ID:ZJGA7hQa0
-
澪「まだ、私たちが1年のころに唯のギター買うためにみんなで交通量調査のバイトしたんだよ」
梓「そ、そうなんですか」
紬「働いてお金をもらう感動をあのとき覚えちゃって
何よりも楽しかったから、もう一度バイトしたいと思って当時募集してた
マックスバーガーでバイトしたの」
律「さ~、これで私たちお姉ちゃん側にもバイト経験あるやつがいたって訳だ」
律「え~っと、何だっけ? バイトすると人生経験が豊かなんだっけ?」
律「と、なると、この中で一番しょぼい人生なのは……。
あれあれ? もしかして一人っ子の梓ちゃんじゃありませんか!?」
唯「働かざるもの食うべからずだよ、あずにゃん」
律「まったく……、一人っ子はこれだから……」
梓「ううっ……」
澪「まぁ、あれが労働かと言われると私はどうかと思うけどな」
澪「とくに律はほとんどふざけてたし。
今思うとあれでお金貰っちゃって良かったのかなって心配になるほどだよ」
唯「ああ~、確かにね~」 -
- 45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 20:46:31.78 ID:ZJGA7hQa0
-
梓「そんなに楽だったんですか!?」
澪「だって、どういう訳かこの4人でやらせて貰えたし」
澪「なにより人間相手の仕事じゃなかったからな。ある意味退屈すぎて大変だったけど」
梓「私の想像する仕事とはなんだか違いますね」チラッ
律「うぐっ……」
澪「それに比べてムギの接客業のバイトなんて人間相手だし
もしかしたら怖い人とか来るかもしれないし……それに失敗したら怒られるだろうし」
澪「私には絶対に無理そうだから、それだけでもムギを尊敬するよ」
紬「確かに、最初は失敗して落ち込んだりもしたけど、そんな尊敬される程でも……」
梓「そう! これですよ!」
律「な、なにが!?」
梓「軽音部のお姉ちゃん側に無くて、私たち一人っ子側にあるものです!」
唯「なになに?」 -
- 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 20:54:22.03 ID:ZJGA7hQa0
-
梓「話は変わりますけど、唯先輩は以前に比べてかなりギターが上手くなりましたよね」
唯「でしょ、でしょ! 私もそうじゃないかなって思ってたんだよね。さすがあずにゃんはわかってるね!」
梓「はい! もう私なんて足元にも及びません」
唯「なんせ、私はお姉ちゃんだからね! よかったら教えてあげるよ!」
梓「律先輩も普段はあえて言ったりしませんけど、私ずっと律先輩のドラムは世界にだって太刀打ちできるって思ってたんです」
律「まぁな! 私くらいになると世界レベルで通用しちゃうだろうな!」
梓「あ、すみません! 律先輩を世界レベルでなんて縛り付けちゃって。もはや宇宙で通用するレベルですよ」
律「そうだろ、そうだろ! 宇宙を股にかけるドラマーお姉ちゃんとは私のことだい!」
梓「ムギ先輩もキーボード上手いですよね、確かコンクールで賞を獲ったことあるとか」
紬「ありがとう、でもそれも昔のことだし。それに私より上手い人なんて沢山いると思うの」
梓「澪先輩はベースはもちろんですけど詞にはいつも感心させられます。
このバンドを形作る元になってるのは言うまでもありません!」
澪「そんなに褒められると逆に恥ずかしいけど……。でもありがとう」
澪「だけど、ムギが言うように私よりも上手い表現をする人なんて沢山いるし、私もここで満足するつもりなんてないよ」
梓「これですよ! これっ!!」
唯「どれ?」 -
- 48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 20:58:59.94 ID:ZJGA7hQa0
-
梓「この謙虚さです!」
梓「お姉ちゃん側の二人は馬鹿みたいに喜んでいますが、それに比べて一人っ子側はちゃんと弁えています」
梓「ここに人間の大きさが出てきてるんだと思います!」
唯「そんなっ!? だったら、さっきのギターが上手くなったっていうのは……」
梓「そんなのお世辞に決まってます」
律「は、謀ったな梓ぁ!!」
梓「騙される方が悪いんです!」
唯「でも、謙虚すぎるのも逆に鼻につくことがあるけどね」
律「あ~。そうだよな」
梓「何のことです?」
律「梓が初めて軽音部に来たとき唯のギターを弾いたことがあったろ?」
梓「えっと、そういえばそうでしたっけ?」
唯「あずにゃんそのときすっごく上手かったんだよ」 -
- 49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 21:05:38.31 ID:ZJGA7hQa0
-
律「そうそう、だけどギター弾く前に言ったことが私には癪に障ったんだよな」
梓「なんて言いましたっけ?」
唯「まだ初心者なので下手ですけど、って」
律「ところがどっこい、ギター聞いたらさ……」
律「どこが!? 初心者!? はっ! ふっざけんな! って」
唯「さすがに私もあのときはイラッと来ちゃったよ」
梓「た、確かにあのときは最初だったしちょっと魅せてやれって気持ちがなかったとはいいませんが……」
律「下手だって言っといてあんなの聞かされちゃ嫌味にしかならなかったな」
唯「謙虚すぎるのも考えものよねぇ~」
梓「わ、若気の至りです……」
律「あらあら、これじゃあ一人っ子さん側の負けってことになるのかしら?」
唯「さぁ、ここにおひざまずきっ!!」
紬「あ、梓ちゃん! 負けないでっ!」 -
- 51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 21:12:27.46 ID:ZJGA7hQa0
-
梓「そ、それでも、お調子者のお姉ちゃんよりしっかり者の一人っ子の方がいいです!」
律「まだ言うかっ! 梓っ!」
梓「だいたい、そう大変でもなかった交通量調査なのに、いかにも働く辛さを知ってるって顔をする」
梓「そんな節操の無さがお姉ちゃん側の底の浅さを露呈してると思います!」
唯「うっ! 今のは結構グサッときたね……」
梓「練習だって私や澪先輩がやるって言わなきゃ中々重い腰を上げようとしませんし」
梓「お姉ちゃんだったらもっと私たちを引っ張っていって下さい!!」
律「引っ張っていってるじゃないか!」
唯「そうそう! あずにゃんはそのときいなかったけどクリスマス会だってお姉ちゃんであるりっちゃんが言い出したし
夏フェスだってそもそも私が合宿しようって言ったから行けた訳だし」
梓「どっちも結局は遊び目的じゃないですか!」
律「ぐぬぬ……」
紬「梓ちゃん……決まった……!!」
澪「なぁ、どうでもいいけど早く試験勉強しないか?」 -
- 53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 21:20:24.35 ID:ZJGA7hQa0
-
律「ゆ、唯……押され気味だな……」
唯「このままじゃ我々お姉ちゃんの立場が危ういね……」
律「なんとか逆転する要素が欲しいな……」
唯「……はっ!」
律「どうしたんだ? 唯」
唯「りっちゃん、我に策あり! だよ」
律「マジか!?」
唯「うん! ちょっと待ってて!」
紬「あ、唯ちゃんどこ行くの?」
梓「ふふっ。さては勝つ見込みがないもんで逃げましたね」
律「なっ……! わ、私は唯を信じるぞ!」
澪「こんなんで入試大丈夫かな……」 -
- 55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 21:26:02.01 ID:ZJGA7hQa0
-
・ ・ ・ ・ ・
和「で、私が呼ばれたと」
唯「うん! 和ちゃんは私が知ってる中で一番お姉ちゃんらしいお姉ちゃんなんだよ~」
律「頼む和! お姉ちゃんの権威を取り戻してくれっ!!」
梓「外部から助っ人を呼ぶなんて卑怯ですよ!」
紬(なんだかんだ言って、一番梓ちゃんが楽しんでる?)
和「はぁ~……」
澪「ごめんな和」
和「まぁ、もう生徒会も2年生に引き継いじゃったし特にすることもないからいいんだけど」
澪「でも、和って兄弟いたんだな」
和「ええ、小学生の弟と妹が一人ずつね」
澪「結構歳が離れてるんだ」
和「まぁ、その分可愛くはあるわ」 -
- 57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 21:33:35.98 ID:ZJGA7hQa0
-
紬「けど、和ちゃんて確かにお姉ちゃんオーラが出てるわよね」
律「そうだろ、そうだろ」エッヘン
澪「なぜお前が偉ぶる」
梓「でも、真鍋先輩は軽音部ではないのでこの勝負には関係ありません!」
澪「勝負って……」
和「あら? 唯や皆のことは名前で呼んでるのに私は苗字なのね」
梓「え? だ、だって、あまり馴れ馴れしくするのも失礼かと思いまして……」
和「いいのよ、その方が私も嬉しいわ」
梓「そ、そういうことなら……。の、和先輩」
和「なぁに? 梓ちゃん」ニコッ
梓 ドッキーン!!
律「和ってけっこうジゴロタイプか?」
唯「私もたま~に和ちゃんにやられちゃうことあるんだよね」
澪「ああ、私も2年のクラス替えの時の和の笑顔にはコロッといきそうだったよ」 -
- 59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 21:37:40.18 ID:ZJGA7hQa0
-
和「で、私はいったいどうすればいいのかしら?」
紬「とりあえずお茶淹れるね」
和「ありがと」
澪「結局普通にお喋りしてうやむやになりそうだな」
律「いやいや、和は唯とは付き合いが長いだろ?」
和「そうね」
律「そんな長い付き合いの中には唯が『これぞお姉ちゃん!』って思えるようなエピソードがあるはず!」
和「ないわ」
律「即答!?」
唯「そんなっ!? 和ちゃん!」
和「冗談よ、深く思い出せばきっとあるはずよ」
唯「だよね~」
澪「逆に言えば、滅多にそんなことはなかったってことだけどな」 -
- 60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 21:43:47.13 ID:ZJGA7hQa0
-
和「……そうねぇ」
律「がんばれ和! 思い出せ!」
唯「お願い和ちゃん! どうか私にお姉ちゃんらしいエピソードをっ!」
梓「そんなのあるわけないです!」
紬「ああっ!? 立場としては一人っ子に不利になることは避けたいけど
和ちゃんと唯ちゃんの幼い頃の話も聞きたい葛藤がっ!」
澪「賑やかだなぁ」
和「ちょっと静かにしてもらえる?」
律「はい」
和「……」
和「そういえば……」
唯「あった!?」
和「ええ、あれはまだ幼稚園のころ……」 -
- 65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 21:56:17.44 ID:ZJGA7hQa0
-
十数年前
先生「みんな~、これからお遊戯の時間ですよ」
「は~い!」
先生「先生のオルガンに合わせてカスタネットを叩きましょうね」
「は~い!」
先生「♪~♪~」
唯「うんたん♪ うんたん♪」カタカタ♪
先生「唯ちゃん上手ね~」
唯「あはっ♪」
カチョン!! カチョン!!
先生(な、なに!? この音は!?)
唯「あ~和ちゃんその木なに?」
和「これ? 拍子木」カチョン!! カチョン!!
先生「な、なんで和ちゃんはカスタネットじゃなくて拍子木を持ってるのかな~?」 -
- 69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 22:04:30.12 ID:ZJGA7hQa0
-
和「ごめんなさい、お母さんがカスタネット買うお金ないからとりあえず拍子木持って行きなさいって」
先生(あっ……。そういえば和ちゃんのところはお父さんの事業が失敗しちゃって大変なんだったわ……)
先生(でも、拍子木の方が高価な気が……)
唯「それいいなぁ~。どこで買ってもらったの?」
和「買ったんじゃないよ。今週はうちが夜の見回り当番なの。だからこれは町内会のもの」
唯「へ~」
和「どうせ夜しか使わないし、だからお母さんが持たせてくれたの」カチョン!! カチョン!!
唯「その音なんか聞いたことあるなぁ」
和「火の用心」カチョン!! カチョン!!
唯「!? それ知ってる! 夜に見回ってるやつだ!」
和「うん、さっき言ったよ」
唯「そうだっけ?」 -
- 70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 22:06:21.64 ID:YjsP9APu0
-
>和「ごめんなさい、お母さんがカスタネット買うお金ないからとりあえず拍子木持って行きなさいって」
和ちゃんはお母さん似のようで
- 71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 22:08:15.58 ID:EnzCm7nE0
-
和ちゃんの天然は母親譲りだったか
- 73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 22:08:49.46 ID:ZJGA7hQa0
-
和「でもみんなと違うの、ちょっと恥ずかしい……」
唯「ねぇ、和ちゃん。ちょっと私のカスタネットと交換してみない?」
和「いいの!?」
唯「うん! 私そっちのがいい」
和「じゃあ、はい」
唯「うわ~い」
和 カタカタ♪
和「えへへ」
先生「よかったわね、和ちゃん」
和「うん!」
先生「唯ちゃんも優しいね」
唯「ふんふん!」カチョン!! カチョン!! カチョン!! カチョン!!
先生「夢中ね~。手を挟まないように気をつけるのよ」 -
- 74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 22:12:20.87 ID:ZJGA7hQa0
-
唯「ねぇねぇ、和ちゃん。こう?」
和「ん?」
唯「火のよ~じん!」カチョン!! カチョン!!
唯「ギンギラギンにさりげなく!」カチョン!! カチョン!!
先生「?」
和「近藤真彦?」
唯「そうマッチ」
先生「!?」
和「あはは、唯ちゃん面白い」
唯「えへへ~」
先生(よ、幼稚園児のくせに……) -
- 75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 22:17:28.54 ID:ZJGA7hQa0
-
・ ・ ・ ・ ・
先生「みんな手を洗いましたか?」
「は~い!」
先生「それじゃあ、手を合わせてください」
先生「お弁当を作ってくれたお母さんに声が届くくらいに」
先生「いただきます」
「いただきます!!」
唯「うわ~、今日も大好きなミートボール入ってる♪」
和「……」モグモグ
唯「和ちゃんのお弁当今日もおかず玉子焼きだけだね」
和「うん、卵は安くて栄養もあるから」
唯「へ~」
和「……」モグモグ -
- 78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 22:20:58.88 ID:ZJGA7hQa0
-
唯「美味しい?」
和「美味しいよ」
唯「ねぇ、和ちゃん」
和「なに?」
唯「私のミートボールと玉子焼き交換しようか」
和「えっ!?」
唯「あの……駄目だったらいいんだけど……」
和「むしろこっちがいいの? って感じだよ」
唯「だってすごく美味しそうだから」
和「そういうことなら……」
唯「やった~♪ じゃあ交換 一切れ貰うね。はいミートボール」
和「2個もいいの!?」
唯「大きさ的にはこれくらいだよ~」
和「なんだか騙してるみたい……」
唯「美味しい♪」 -
- 79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 22:24:14.90 ID:ZJGA7hQa0
-
和「そんなに美味しい?」
唯「うん! 和ちゃんもミートボール美味しい?」
和「うん、すごく美味しいよ」
唯「よかったね」
和「うん!」
唯 じ~~~~~っ…
和「どうしたの?」
唯「もう一つ欲しい……」
和「いいよ、好きなだけ食べて」
唯「本当に!?」
和「うん」
唯「じゃあ次はこのエビフライと交換ね」
和「えっ? いいよ、そんな高そうなの……」 -
- 81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 22:28:04.06 ID:ZJGA7hQa0
-
唯「だめだよ~。私が和ちゃんの玉子焼き沢山食べちゃったら和ちゃんが食べる分無くなっちゃうよ」
和「だけど……」
唯「はい、エビフライここに置くよ」
唯「いただきま~す!」
和「なんだか、わらしべ長者みたい」
唯「う~ん、やっぱり美味しい♪」
和「エビフライも美味しいよ」
唯「こんなに美味しい玉子焼きだったら毎日でも食べたいなぁ」
和「そんなに?」
唯「うん! ウチのとはまた違うよ」
和「だったら、私が料理できるようになったら、お母さんに習って
唯ちゃんのために毎日玉子焼き作ってきてあげるね」
唯「本当に!? 約束だよ!」
和「うん」
唯「楽しみだなぁ」 -
- 82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 22:32:14.83 ID:ZJGA7hQa0
-
和「ミートボールとエビフライのお礼だよ」
唯「それは今食べたこの玉子焼きだよ?」
和「そう?」
唯「和ちゃんが玉子焼き作ってくれるなら私も何かお返ししなきゃ!」
和「え? 別にいいよ」
唯「だめ~。私も和ちゃんに何かあげる」
和「う~ん……。だったら」
唯「なになに?」
和「ずぅ~っと友達でいてくれる?」
唯「あたりまえだよ~」
────────────
────────
────
── -
- 83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 22:33:50.35 ID:a/TMSQsL0
-
泣いた
- 84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 22:34:42.37 ID:EnzCm7nE0
-
ええ話や
- 85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 22:37:36.91 ID:ZJGA7hQa0
-
和「なんてこともあったわね」
唯「そんなことが……」
律「お前は忘れてんのかよ」
和「その当時、家は貧しかったけど、唯が側にいてくれたおかげで心は豊かだったのよ」
梓「唯先輩は昔っから優しい子だったんですね」
和「そうね、困ってる人がいたら放っとけないって感じだったわ」
紬「なんだかいい話だったわ~」
澪「そうか、だから和のお弁当には毎日玉子焼きが入っているのか」
和「半分は自分の分、もう半分は唯のために作ってるのよ」
唯「そういえば、お弁当のある日は毎日和ちゃんの玉子焼きをつまんでるよ」
律「本当に毎日のように食べてるもんな」
唯「だって、美味しいんだよ?」
和「そう言ってもらえたら、私も頑張ってお母さんの味を再現したかいがあったってもんだわ」
紬「幼馴染っていいわねぇ」 -
- 87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 22:41:25.45 ID:ZJGA7hQa0
-
和「そういえばまだこんな話があるんだけど」
律「お? なんだなんだ?」
和「唯が私の家の湯船をザリガニでいっぱいにしたって話、したわよね?」
澪「ああ……。たまに自分ちのお風呂に入ってる時思い出しては青くなってるよ……」
梓「あの意味不明な行動ですか……」
唯「私もさすがにそれは覚えてるなぁ」
和「あの時はそれで話を終わりにさせちゃったけど、あの唯の行動はちゃんと意味があったのよ」
紬「湯船をザリガニでいっぱいにすることにどんな意味が……」
和「ほら、唯から話してあげたら?」
唯「えっとね~……」 -
- 88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 22:45:06.24 ID:ZJGA7hQa0
-
唯「NHKの教育の方で子供向けの生き物の番組ってあるじゃない?」
律「ああ、風邪なんかで学校休んだ時に良く観るやつな」
唯「あれでさ~、ザリガニは食べれるみたいなこと言っててさ」
紬「唯ちゃん、まさか……」
唯「そうなんだ、子供ながらも和ちゃんの家は貧しいってわかってたから
なんとかお助けできないかと、当時の私はザリガニを沢山プレゼントすることを思いついたんだろうね」
唯「最初はバケツに一杯あったら充分かなって思ってたんだけど、思いの外沢山取れちゃって」
唯「夢中になったら止まらない性質だったから気づけば湯船一杯になってたんだよね」
梓「気持ちはわからなくもないですけど、それって和先輩からすれば嫌がらせの他ないですね」
和「確かに、そのおかげで3日は湯船に浸かることはなかったわ」
律「そりゃ、そうだろうよ……」
和「でも、3日は食べるに困らなかったけどね」
澪「食べたの!?」 -
- 93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 22:50:13.30 ID:ZJGA7hQa0
-
和「嫌ね、冗談よ」
澪「な、なんだビックリさせるなよ」
梓「和先輩もそんな冗談言うんですね」
和「さすがにあれだけの量を3日では無理よ」
梓「えっ!?」
和「5日は食卓にザリガニが絶えることはなかったわ」
澪「日数が冗談かよっ!」
律「結局食ったんだ!」
和「結構いけるのよ、ザリガニ」
唯「だよね~」
和「ムギ的に言えば、伊勢海老ってことかしら?」
紬「伊勢海老はとても美味しいわ」
澪「いやいやいやいや……」
梓「そうだとしても、さすがにザリガニを食べるのは……」 -
- 94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 22:54:09.04 ID:ZJGA7hQa0
-
和「でもその5日分の食費が浮いたおかげで色々助かったのよ」
澪「それはそうだろうけど……」
和「その浮いた分のお金で宝くじを買ってね」
律「なんで、和の家が貧乏だったかわかった気がした」
和「なんと、その宝くじが大当たり」
梓「ええっ!?」
紬「すごい!」
和「借金はそれで全部返すことができたし、本当に唯には感謝してるのよ」
和「言うなれば唯は私の女神様ね。ザリガニの女神」
唯「えへへ」
梓「もはや、お姉ちゃんとかそういう次元ではなくなってきましたね」
澪「ザリガニの女神っていうネーミングはどうかと思うけどな」 -
- 97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 22:57:25.83 ID:ZJGA7hQa0
-
和「まぁ、そのとき食べたザリガニの寄生虫が原因でお父さん死んじゃったんだけどね」
律「えっ? 今なんて!?」
澪「急に凄いことさらっと言ったぞ!」
和「でも、あのままだったらどっち道一家で野垂れ死にしてたかもしれないし
その点では唯を恨んだことは一度だってないわ」
唯「ごめんね、和ちゃん」
和「ううん、お父さんもきっと天国で喜んでるわ」
和「その証拠に死ぬ直前にお父さんから『真鍋家はジャンケンのときグーを出すのを禁ずる』って遺言が」
紬「それってどういう……」
和「ザリガニって常にチョキじゃない? だからグーを出したらザリガニが負けるからって」
和「ザリガニに対してそんな無礼は許さないって」
唯「そこまでして和ちゃんのおじさんはザリガニのことを思いながら死んでいったんだね……」
澪律紬梓「……」 -
- 99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 23:01:18.62 ID:ZJGA7hQa0
-
律「なぁ和。突然だけどジャンケンしようぜ」
和「いいわ、負けないわよ」
律「じゃ~んけ~ん」
和「ぽん!」グー チョキ 律
和「勝ったわ」
唯「やった~♪ 和ちゃん強い!」
澪「あ、嘘だ」
和「そうね、嘘よ」
梓「いったいどこからどこまでが……」 -
- 105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 23:07:00.52 ID:ZJGA7hQa0
-
律「ま、まぁさっきの話でいかに私たちお姉ちゃんが偉大であるかがわかったな!」
梓「正直言って、その話はもうどうでもいいですけどね」
律「奇遇だな、実は私も……」
澪「飽きんなよ」
紬「でも幼馴染って羨ましいわ」
梓「和先輩は憂の幼い頃のことも良く知ってるんですか?」
和「そうね、なんだかんだ言って、本当の兄弟と同じくらい付き合い長いわ」
唯「そう言われればそうだよね~」
紬「だとしたら、和ちゃんが長女で唯ちゃんが次女」
梓「で、憂が三女ってことですね」
律「しっかり者の長女、自由奔放な次女、少し苦労性な三女」
澪「そう考えると唯のその性格もピッタリと当てはまるな」
唯「そっか! 私も自分が長女ってなんだか違和感あったんだよね」
唯「私は次女だったんだ!」
和「こらこら、本気にしないの」 -
- 108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 23:10:21.97 ID:ZJGA7hQa0
-
唯「和お姉ちゃん!」
和「こら、唯! 急に抱きついてこない」
唯「お姉ちゃ~ん、勉強教えて~」
梓「なんだか大変ですね」
和「普段とあまり違わないけどね」
澪「確かに」
和「まぁ、私はむしろお母さん目線で唯をいつも見てるけど」
律「あぁ、どっちかっていうとそんな感じだな」
紬「でも兄弟がいるってどういう感じなのかしら?」
梓「ああ、それは気になりますね」
澪「私も、もしお姉ちゃんやお兄ちゃんがいたらどうかなって考えることはあるよ」
和「あら、まだその可能性はあるんじゃない?」
澪「えっ?」 -
- 109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 23:14:15.26 ID:ZJGA7hQa0
-
和「さすがに兄や姉は難しいけど、弟や妹だったらまだ両親にがんばってもらえば……」
律「す、ストップ和!!」
梓「あまり女子高生が口に出すことじゃありませんよ!」
紬「でも、私が生まれた時には父はすでに40代だったから……」
和「そう……それじゃあ種的に難しいかもしれないわね……」
澪「おい! なんか危険な会話のラリーが始まってるぞ!」
唯「コウノトリさんに頼めばいいんだよ」
律「その発言もちょっとどうかと思うけど、なんだか安心したよ」
唯「夕食のときにお父さんとお母さんの前でそんな話をすればもっと効果的かもよ」ニヤッ
澪「あれっ?」 -
- 114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 23:17:18.88 ID:ZJGA7hQa0
-
律「と、とにかく、確かに兄弟がいたほうが賑やかになるだろう」
律「でも、9割方はウザイ対象だからな」
梓「あぁ、やっぱりそういうもんなんですかね」
唯「私は憂がいなかったらたぶん死んじゃうと思うけど」
律「お前は特別だ。私だって憂ちゃんなら欲しい。でもだいたいの場合は喧嘩が絶えないだろうな」
澪「それは姉の方に問題があるんじゃないか?」
律「な、なにっ!」
澪「もし、優しいお姉ちゃんやお兄ちゃんだったら私ならきっと甘えたくなるだろうな」
唯「和お姉ちゃんみたいにね!」
和「あんたのお姉ちゃんになった覚えはないけどね」
唯「ああ~ん……そんなこと言って~」
和「はいはい」 -
- 118 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 23:23:18.33 ID:ZJGA7hQa0
-
紬「澪ちゃんは妹や弟は欲しいとは思わないの?」
澪「う~ん……、結構身近な存在で世話を焼かなきゃいけないやつがいるから」
澪「きっと妹がいたらこんなんだろうなってその点は想像できるからな」
律「なに? それって私のこと?」
澪「他にどう聞こえる?」
律「ええ~、私が妹かよ」
梓「ピッタリです」
律「そうは言うけど、私だって澪のその頼りないところは妹的な……」
律(……っと、ちょっと待てよ)
律(何も姉であることで得するってわけでもないしな)
律(なによりも……)
唯「和お姉ちゃ~ん」
和「もうやめさないって」
律(甘えた方が結構面白いかも) -
- 121 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 23:27:36.63 ID:ZJGA7hQa0
-
澪「ほら、梓だってこう言ってることだし、世間的に見たら私の方がお姉さんっぽい……」
律「澪お姉ちゃん」
澪「……え」
律「澪お姉ちゃんの可愛い妹りっちゃんでちゅ」
澪「うわっ、想像以上にきもっ……」
律「りっちゃんは寂しがりだから、澪お姉ちゃんに甘えちゃうんでちゅ」
澪「離れろ! くっつくな!!」
律「澪お姉ちゃんのおっぱいがほちいでちゅ」
澪「おい! や、やめ……!」
律「帰りにアイスが食べたいでちゅ」
澪「わかった買ってやる、買ってやるから!」
律「澪お姉ちゃんは優しいでちゅ」
澪「こ、こいつは……」 -
- 124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 23:31:14.68 ID:ZJGA7hQa0
-
唯「和お姉ちゃ~ん」
和「はぁ……」
律「澪お姉ちゃん、りっちゃんは甘えたい年頃なんでちゅ」
澪「もうやめよう、な? 謝るから」
梓「なんかすごいことになってきてるなぁ……」
紬 チラッ チラッ
梓(そしてムギ先輩が何かを求めるように私に視線を送ってくる……)
梓(無理もないか……。ムギ先輩こういうスキンシップ好きそうだし)
梓(仕方ない、ここは私がムギ先輩の為に一肌脱ごう!) -
- 127 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 23:36:00.19 ID:ZJGA7hQa0
-
梓「つ、紬お姉ちゃん……」
紬「……」ショボン…
梓(えっ!? 逆!? 私がお姉さん役ってこと!?)
梓(さすがにその発想はなかった!)
梓(っていうか私がお姉ちゃんは何かと無理がある気が……)
紬「お姉ちゃん……」
梓「!?」
紬「梓……お姉ちゃん」
梓「な、なんだい紬?」
紬「梓お姉さまっ!!」ギュッ!!
梓(こ、これはこれでっ!!) -
- 129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 23:39:37.08 ID:ZJGA7hQa0
-
紬「お姉さま」
梓「あはは、紬は甘えん坊さんだなぁ。もうすぐ大学生なのに恥ずかしくないのかい?」
紬「もう! お姉さまのイジワルっ!」
梓「冗談だよ、ほらおいで」
紬「嬉しいっ! お姉さまっ!」ダキッ!!
梓(ふぁぁぁぁぁっ!! なんだかすごくいい匂いがする)
梓(それに暖かくって柔らかくってふわふわだ)
梓(これ、柔軟剤使っただろ!!)
純「何やってんの? 梓……」
梓「!?」 -
- 131 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 23:44:44.15 ID:ZJGA7hQa0
-
梓「じ、純……いつからそこに……」
純「えっとね~、梓が『ムギ先輩いい香りだよ~クンカクンカ』ってことろからかな」
梓「ちょ!? それは口に出して言った覚えはない!」
純「あ、だったら心の中ではそう思ってたってことだ」
梓「……」
純「ところで先輩たちが抱き付き合ってる状況……なんなの?」
梓「え、ええっと……」
梓「って言うか、なんで純がここにいるの?」
純「梓がたまには一緒に帰ろうって誘ってくれたんじゃん」
梓「……そうでした」 -
- 133 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 23:46:39.83 ID:ZJGA7hQa0
-
純「それに……」
憂「やっほ~」
梓「なんで憂まで」
憂「今日は家にお母さん居るから夕食の支度しなくていいし
たまには帰りに純ちゃんや梓ちゃんと寄り道して遊ぼうかなって思って」
純「私も部活も終わったし。で、梓迎えに来たらなんか抱き合ってるし」
純「本当に軽音部って変わってるよね」
梓「ふ、普段からこんなんじゃないよ!
最近で一番おかしいのがたまたま今日だったってだけだから勘違いしないでね……」
唯「あ、憂~!」
律「おっ! 本物の妹様だ!」
憂「本物?」
紬「私たちさっきまで姉妹ごっこして遊んでたの」
憂「そうなんですか」 -
- 134 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 23:49:40.06 ID:ZJGA7hQa0
-
唯「実は私は次女で和ちゃんが長女だったんだよ!」
和「もう、くっつくのもいい加減にしてもらえないかしら? 憂からも何か言ってやりなさい」
憂「うわ~! 和ちゃんがお姉ちゃんになってくれたら私も嬉しいよ!」
和「……」
律「うむ、さすが本物の姉妹」
律「ところでそこのダスキンちゃんは……」
純「純です」
澪(よく自分のことだってわかったな……)
律「ごめんごめん、えっと、純ちゃんは兄弟はいるの?」
純「はい、ちょっと歳の離れた兄が2人いますけど」
純「いつも『純は可愛いな』って言ってよくお小遣いもくれます」
梓「ああ、なんか純はそうやって育ってきたって感じ」
律「なんとっ! ここにきて第三勢力の『妹』が登場だっ!」
梓「まださっきの一人っ子とお姉ちゃんの続きやるんですか!?」
紬「妹か……これは厳しい戦いになりそうね……」 -
- 136 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 23:51:04.63 ID:ZJGA7hQa0
-
純「なんです? それ」
律「いや~こっちにいるわがまま放題の一人っ子どもが私たちお姉ちゃんに対して宣戦を布告してきやがってさ」
純「は、はぁ……」
梓(さすがの純も呆れてる……)
澪「鈴木さん、あんまり相手しなくていいよ」
律「一人っ子は黙ってろ!」
澪「お前はさっきまで澪お姉ちゃんって抱きついてきてたのに……」
律「しかし妹である君たちがきてくれたことによって我々お姉ちゃんの勝ちは約束されたも同然だよ!」
紬「な、なんでそうなるの!? あくまで妹は第三の勢力!
言うなれば中立だし、どちらに対しても敵になりうるんじゃ……!」
律「ふっふっふ、甘いなムギ。姉というのは妹弟がいてこその存在!
その逆もまた然り! 姉の存在が妹の存在をも定義することになる」
律「姉と妹というのは切っても切れない縁なのだよっ!!
よってここに姉妹同盟を締結することを宣言するっ!」
紬「くっ……!!」
梓「なんだか説得力あるんだかないんだかわかりませんが、勢いだけは認めざるを得ません!」 -
- 138 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 23:52:20.66 ID:ZJGA7hQa0
-
純「あ、でも私お姉ちゃんにするんだったら澪先輩がいいなぁ」
律「な、なにっ!?」
梓「そうだった、純はこうやって空気を読まないやつだった」
紬「くっくっく、さっそくその同盟関係に綻びができたようね」
澪「ムギが悪そうな笑い方をしてる……」
純「だって澪先輩カッコイイし。私の憧れだから」
澪「あ、ありがとう」
律「クソッ、ファンクラブにしたってどいつもこいつも澪の容姿に騙されやがって」
澪「いつ私が騙した?」
唯「りっちゃん! まだまだ最強の妹が残ってるよ!」
律「おお! そうだった! この子がいればお姉ちゃんはあと10年は戦える!」
唯「憂はもちろん私たちお姉ちゃんの味方だよね?」
憂「う~ん……」
唯「う、憂っ!?」 -
- 140 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 23:54:01.55 ID:ZJGA7hQa0
-
律「な、なんでだ憂ちゃん!」
唯「お姉ちゃんとして不足なことは重々承知しております!
だけど憂に見捨てられたら私……私っ!!」
憂「そうじゃなくてね、私は皆さんにちゃんと良い部分があると思うんです」
憂「律さんは部長らしくポジティブな気持ちで皆さんを引っ張ってくれて
澪さんは逆にネガティブな観点から冷静な判断をしてくれて」
憂「そんなお二人は幼馴染らしくとてもいいコンビネーションだと思いますし」
澪「憂ちゃん……」
憂「紬さんは皆さんが楽しく過ごすための土台を築いた縁の下の力持ち的存在
お茶を美味しく淹れるのも実は結構大変なんですよ」
紬「そうやって想ってくれる人がいるってだけで嬉しいわ」
憂「梓ちゃんはそのまま軽音部の妹的存在だよね」
梓「先輩たちにも言われたけど、それって褒め言葉なの?」
憂「妹がしっかりするとお姉ちゃんもそれに釣られて引き締まるでしょ?」
憂「しっかり者の梓ちゃんが今の軽音部に刺激をあたえてるんだよ」
憂「山椒は小粒でもぴりりと辛いってね」
梓「まぁ、褒め言葉として受け止めておくよ」 -
- 142 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 23:55:22.86 ID:ZJGA7hQa0
-
憂「そしてお姉ちゃんは……」
唯「……」ゴクリ…
憂「私のお姉ちゃんだからっ!」
唯「う~い~!!」ダキッ
憂「お姉ちゃ~ん!!」ヒシッ
憂「そんな皆さんが今のこんな楽しい軽音部を形作ってるんです
誰一人欠けてもきっとこんな素晴らしい部にはならないと思います!」
律「なんか唯だけ誤魔化した感が……」
澪「さすがの憂ちゃんでも唯のしっかりした部分を探すのは難しかったのかもな……」
和「それは違うわ」
紬「和ちゃん?」
和「憂にとっては自分のお姉ちゃんというのは唯以外に考えられないっていうことなのよ」キラリッ
澪「なに言ってんだこいつ」
純「あ、メガネカッコイイ!」
梓(もう和先輩を見る目が変わっちゃいそう……) -
- 145 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/23(日) 23:58:19.39 ID:ZJGA7hQa0
-
律「まぁ、憂ちゃんのおかげでこの姉一人っ子戦争もやっと終結を迎えることができたわけだ」
律「本当は軽音部でこうやっていがみ合うなんて下らないってことだってわかってたんだ……」
紬「私も……憎しみは憎しみしか産まないものね……」
澪「2人ともノリノリだったじゃないか」
唯「やっぱりみんな仲良しが一番だね!」
梓「もちろんです!」
和「あら? もうこんな時間よ。早く帰らないと生活指導の先生に怒られちゃうわ」
純「これからみなさんで遊びに行きませんか?」
憂「学校帰りに遊びにいくなんて久しぶりだから楽しみ♪」 -
- 146 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/24(月) 00:00:10.32 ID:7HXsP5bl0
-
ガチャ
さわ子「こらこら、あなたたちまだこんなところでお喋りして。
こんな時間まで残ってちゃ駄目よ!
もうとっくに最終下校時刻過ぎちゃってるんだから」
律「おっと! ここで第四の勢力『独身』の登場だっ!」
唯「早く結婚しろ!」
紬「親が泣いてるぞ!」
さわ子「な、なにっ!?」
- おしまい
-
- 147 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/24(月) 00:02:15.76 ID:NysdaKO+0
-
面白かった乙
- 149 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/24(月) 00:03:44.50 ID:A+lK7KV/0
-
オチはさわちゃんかwww
おつおつ
- 152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/24(月) 00:05:14.77 ID:LVEn16Qo0
-
楽しかったよ!乙!
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| けいおん!!SS
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2011.01.22 Sat
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- 1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 23:11:06.90 ID:PIVFOy1C0
-
憂「ほら、みてみてお月さま!」
唯「ほんとうだ、綺麗だねえ」
皆さんこんにちは、平沢憂です
今日はお姉ちゃんと一緒に宇宙にやってきました!
まん丸な宇宙船の窓からは地球で見るよりも大きなお月さまの姿が見えます
憂「うん! とってもおっきいねえ!」
唯「ういーテンション上がりすぎだよー、あはは。
唯「でもねでもね、お月さまより憂の方がずっとずっと綺麗だからね」
憂「お、お姉ちゃん」
こんなこと言っちゃうなんて……どうやらお姉ちゃんの方が興奮してるみたいです
でも、それも不思議はありません。
だってこれから二人で、あのお月さままで行けるのですから -
- 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 23:14:20.78 ID:PIVFOy1C0
-
憂「地球も見えるよ」
唯「さっきよりずっと小さいや。もうこんなに遠くに来ちゃったんだねえ」
憂「そうだね・・・」
まっくらな空間にひとつきりで浮かぶ青い地球の姿は、なんだかさびしく見えます
何十億年もの間、地球はずっと孤独だったのでしょう
唯「どうしたの?」
憂「ううん、どうもしないよ?」
唯「なんか悲しそうな顔してたよー」
そんな顔をしたつもりはないのですが……
お姉ちゃんはこういうときとっても鋭くて、いつも私をびっくりさせるのです -
- 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 23:19:21.27 ID:PIVFOy1C0
-
私はお姉ちゃんにさっき感じたことを話しました
お姉ちゃんは話を聞き終えるとまじめな顔をして一回うなづくと、
それからにっこりと笑って私の手をつかみました
唯「大丈夫、一人じゃないよ」
憂「?」
唯「ほら、だって!」
お姉ちゃんは、私の手をつかんだまま窓の外を示しました
唯「地球はいつもお月さまと一緒なんだから」
憂「・・・うん! 一緒だね、お姉ちゃん!」
唯「それにね、毎日お日様も月と地球を照らしていてくれるし、
火星や水星や木星やテンモーセイも一緒なんだよ。」
唯「こんなに仲間がいっぱいいる地球は一人ぼっちじゃないからね」
憂「お姉ちゃん、テンモーセイじゃなくて天王星だよ」くす
唯「てへへ、そうでした」 -
- 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 23:24:21.72 ID:PIVFOy1C0
-
たしかに地球はひとりではありません
お姉ちゃんのぬくもりを手に感じながら眺める地球は
孤独な惑星なんかじゃなく、しあわせな宝石です。
憂(ずっと一緒・・・お月さまと地球って、私とお姉ちゃんみたいだな)
思わずそんな恥ずかしいことも考えてしまいます
唯「うーいー」
憂「ふえっ、なに!?」
また心の中を読まれてしまったのかと思って慌ててしまいます -
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 23:29:22.15 ID:PIVFOy1C0
-
唯「機械がピーピーなってるよ。これからどうするんだっけ」
憂「あ、そろそろ着陸が近付いてきたんだね」
唯「ボタンがいっぱいあって分からないよお」
憂「ちょっと待ってて、取扱説明書を読むから。えっと・・・」
唯「てきとーに押せば大丈夫かな?」
憂「うん、適当に・・・ってだめだよお姉ちゃん!」
唯「え・・・もう押しちゃった・・・」
憂「お姉ちゃんのばかあ!墜落しちゃうかもしれないのに!」
唯「どうしよう・・・」 -
- 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 23:34:22.59 ID:PIVFOy1C0
-
お姉ちゃんがどんな操作をしたのかは分かりませんが、
コンピュータの表示や窓外の様子からして宇宙船はますます月に近づきつつあるようです
唯「うい・・・ひらさわ号墜落しちゃうの?」
憂「わかんない、・・・たぶん、大丈夫だと思うけど」
憂「念のため宇宙服を着て椅子に座ろう?」
唯「うん」 -
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 23:39:23.03 ID:PIVFOy1C0
-
さっきまで静かだった船内はしだいに振動をましてきています
月の重力圏に捉えられた影響なのでしょうか
地球よりずっと弱く、人間の身体がふわふわと浮かびあがるような月の重力でも
金属製の宇宙船にははっきりと作用するのです。
私たちはコクピットに備えられた席につき、シートベルトを二重に巻いて着陸を待ちます
がたがたとした震えが、船の振動なのか、自分の身体の振動なのかわかりません
私は墜落のこわさからぎゅっと目をつぶっていました
ふと、右手に違和感を感じて目を開くと、お姉ちゃんの分厚い手袋越しの手が私に重ね合わさっていました
唯「ねえ、憂。お月さまで兎さんに会えるかなあ」 -
- 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 23:51:01.75 ID:PIVFOy1C0
-
憂「月に兎さんはいないと思うよ」
唯「ええー、いるよお。学校で習わなかったの」
憂「うーん・・・」
唯「月には兎さんが暮らしていて、お餅をついてて」
唯「あっ、それから海もあってお魚さんが獲れるかも!」
唯「兎さんいっぱいいたら一匹くらい連れて帰っちゃだめかなあ」
憂「ふふふ」
お姉ちゃん、本当に兎さんを信じてるのかなあ
あまり言ってお姉ちゃんの夢を壊したらいけません
けれど、お姉ちゃんのおかげでさっきまでの怖さはなくなってしまいました -
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 23:58:02.24 ID:PIVFOy1C0
-
唯「着いたっ!」
船は無事に月面へと辿り着きました
憂「うん、よかったあ」
唯「扉あけるよお」
憂「うん!」
そして三重構造の隔壁を越えた外の景色は、一面の月世界!
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 00:05:02.68 ID:U1TnjZkg0
-
憂「お姉ちゃん、月を歩くときはかるーくジャンプするんだよ?
あわてちゃ駄目だからね?ヘルメットも取ったら危ないよ、それから」
唯「そんなに言わないでも平気。憂こそ転ばないでね」
言うがはやいかお姉ちゃんはぴょんぴょんと飛んで先に行ってしまいます
唯「ぴょーん、ぴょーん」
憂「わっ、待ってお姉ちゃん」 -
- 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 00:16:59.31 ID:U1TnjZkg0
-
地球から遠く離れた大地を、ゆっくりと踏み締める
宇宙服ごしの脚に伝わる感触は、かたいようなやわらかいような不思議なものでした
唯「ふんす!」
憂「? お姉ちゃん、何やってるの?」
唯「この一歩は人類にとっては小さいが、平沢姉妹には大きな飛躍である!」
憂「それって逆なんじゃ」
唯「これでいいの。さあ、憂もどんどん一歩を踏み出そう」
私たちは二人並んで月面を進んでいきます
唯「ぴょーんぴょーん」
憂「ぴょーんぴょーん」
唯「ぴょーんぴょーん」
憂「ぴょーんぴょーんっ」 -
- 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 01:14:38.44 ID:U1TnjZkg0
-
私たちの宇宙服は臍帯のようなビニール被覆の長いケーブルでつながれています
あたりは静かで、ケーブルとスピーカが届けてくれるお姉ちゃんの息遣いと
自分の動作音しかしません。
小高い丘のてっぺんにさしかかったところで私たちは立ち止りました
唯「ぴょーんっ・・・と、ずいぶん進んだね。ひらさわ号があんなに小さく見えるや」
憂「お姉ちゃん、二人っきりだね」
なんだか急に照れくさくなります -
- 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 01:23:32.46 ID:U1TnjZkg0
-
唯「この景色ぜーんぶ憂のものだよ!」
憂「私そんなに欲張りじゃないよお。半分はお姉ちゃんにあげる」
唯「おお、こんなに広いとごろごろしきれませんな」
憂「えへへ・・・お掃除も大変そう」
唯「こんなに綺麗なのは兎さんがお掃除してるからかなあ」
憂「どうだろうねえ」
唯「どうなのかなあ」 -
- 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 01:58:24.50 ID:U1TnjZkg0
-
唯「ちょっと汗かいちった」
憂「・・・あれ、なんだろう?」
ひらさわ号とちょうど反対側の斜面の向こうに何か人工物らしきものが見えます
唯「行ってみよう」
憂「お姉ちゃん待って」
通信ケーブルでつながった二人は一定以上離れられないのです
憂「もしかしてアポロの忘れものかも・・・」
唯「ごみを捨てていくなんてひどいよ!」 -
- 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 02:13:47.66 ID:U1TnjZkg0
-
憂「これは、アポロではなさそう・・・」
人工物は何かの乗物から切り離された部品のようです
しかし、それはどうみても数十年も昔のものには見えません
ひらさわ号に搭載されているのと同系統のデザインでした
唯「あっ、向こうにも落ちてるよ!」
言われてみれば確かに、少し行った先にも、そのまた先にも人工物の影がありました -
- 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 02:18:56.90 ID:U1TnjZkg0
-
人工物は点々と曲線を描きながら遠くまでつながっています
唯「こんなお伽話ってあったよね。兄妹のお話」
ぴょーんぴょーん、と人工物の道筋を跳ねていきます
お姉ちゃんから離れないように気を使っていると、自然にリズムは同じになって
ぴょーん、ぴょーん 私たちは跳ねる二匹の兎さんみたいです
ぴょーんぴょーん
ぴょーんぴょーん -
- 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 02:27:31.33 ID:U1TnjZkg0
-
この乗物の持ち主は一体どうしたんだろう?
月ではものが風化しないので経年劣化のようなものは見られませんが、
しかし機械のつくりからしても、これは絶対に最近の宇宙工業製品です
ひょっとして、なにかのトラブルに巻き込まれてしまったのでしょうか……
宇宙でのトラブルは命の危険をもたらしかねない恐ろしいものです
だとしたら……この跡を辿ってその向こうに行こうとしてるのも、
危険な行動なのかもしれない
不安におそわれて「引き返そう」と提案しかけた、その時でした。 -
- 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 02:34:42.43 ID:U1TnjZkg0
-
「うわーん!」
急に声が聴こえたのです
二人して顔を見合せます
唯「今の憂・・・じゃないよね」
憂「うん、今のって・・・」
空気のない月面では音も声も存在しません
今のはどこかの無線電波をキャッチしたスピーカからの音声です
「誰か助けてー!」 -
- 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 02:44:58.42 ID:U1TnjZkg0
-
憂「お姉ちゃん・・・こわい」
唯「向こうに誰かいるんだ。助けに行かなくちゃ!」
私の手を引いてお姉ちゃんは駈け出しました
声は何度もとぎれとぎれに届きます
唯「ひょっとしてこの声・・・」
憂「?」
唯「なんだか聞き覚えのある声なんだけど・・・あっ、あれ!」
憂「えっ!?そんな!?」 -
- 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 02:53:48.63 ID:U1TnjZkg0
-
あまりの光景に目を疑ってしまいます
そこにいたのは身近な友人たちでした
唯「やっぱり、澪ちゃんだ!それにあずにゃんまで!」
憂「どうしてこんなところに・・・いや、そんなことより」
唯「おーい二人ともー」
お姉ちゃんは手を振りながら二人に駆け寄って行きます
目の前の出来ごとの異常さを気にしていないのかな
確かにあれは澪さんと梓ちゃん……
でもその二人は、たくさんの兎の群れに囲まれて立っていたのです! -
- 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 02:59:22.82 ID:U1TnjZkg0
-
梓「えっ、唯先輩!?」
唯「奇遇だねあずにゃん」
澪「ひっくひっく」
唯「どうして泣いてるの?」
澪「ひっく・・・唯の幽霊が見える。ということはここは天国なんだ・・・」
梓「先輩、落ち着いてください」
唯「私たち死んでないよ」
憂「お、お姉ちゃん、兎、兎だよお!」
唯「ほら見たことか、やっぱり兎はいたでしょ。お姉ちゃんの言ったとおり」
お姉ちゃんは自慢げに腰に手を当て親指を立てます
もうなにがなんだかわかりません -
- 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 03:03:23.09 ID:U1TnjZkg0
-
梓「憂たちもハネムーンに月旅行に来てたんだね」
憂「そんな梓ちゃん、ハネムーンだなんて・・・」
ハネムーン。ハネムーンなんでしょうか
月に来ている以上そうかもしれないけど、こうしてはっきり言われると恥ずかしいのです
憂「それより、これ・・・」
兎さんは輪に闖入した私たちをも取り囲んでしまいました
品定めをするように、赤い瞳でこちらを観察しています
憂「いったいどうなってるの?」 -
- 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 03:11:01.50 ID:U1TnjZkg0
-
梓「この兎たちが通せんぼして、宇宙船に帰してくれないんだ」
唯「それで澪ちゃん泣いてたんだね」
梓「はい・・・。この兎たちなにか怒ってるみたいで」
澪「うう、ぐすっ」
梓「もう、澪先輩しっかりしてくださいよ」
澪「ごめんよ梓・・・、私梓を守らなくちゃいけないのに」
澪さんはどうやら梓ちゃんのおしりにしかれてるようです -
- 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 03:19:29.15 ID:U1TnjZkg0
-
唯「ふむふむ、ほうほう」
梓「先輩、兎の言葉がわかるんですか!」
唯「うん。やっぱり第二外国語でロシア語とっといてよかったよ」
憂「お姉ちゃん、すごい!」
ソ連時代からの宇宙開発の名残でしょうか
お姉ちゃんによれば、兎さんたちの言葉はロシア語だったのです
月の共通語は最初に月面着陸をしたアメリカの言葉かとばかり思っていました
先入観というものはこわいものです -
- 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 03:28:18.55 ID:U1TnjZkg0
-
お姉ちゃんはしきりにうなづいたり、
身振り手振りをしながら兎さんとお話をしました
数分ばかりしてお姉ちゃんは振り返りました
唯「兎さんたちが怒ってる理由がわかったよ」
梓「なんだったんですか」
唯「あのね、あずにゃんたちが月の兎さんのお餅をふんづけちゃったのが原因だって」
梓「お餅・・・?」
澪「そういえば、途中でそんなの見たかも・・・」
唯「兎さんたちにとって、すっごく大切なものだって言ってるよ」 -
- 41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 03:35:05.21 ID:U1TnjZkg0
-
澪「そうだったのか・・・」
梓「兎さん、ごめんなさい! 許してくれませんか」
兎たちは小さな首を横に振ります
唯「ダメだって」
梓「そんな・・・」
澪「うう、やっぱり私たちは地球に帰れないんだ・・・!」
憂「ねえ、私たちが代わりのお餅をつくってのはどうかな」
梓「えっ、憂?」
憂「私、お餅をつくの上手なんだ。お正月用のお餅はいつも家でつくってるんだよ」 -
- 42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 03:42:00.79 ID:U1TnjZkg0
-
唯「兎さんたち、それなら良いって言ってるよ!」
憂「やったあ!」
さっそく杵と臼が運ばれてきました
人間サイズの臼も杵も、小さな兎さんには不釣り合いですが
重力の少ない月世界では彼らでも扱いにこまることはないのかもしれません
杵の先でふかしたもち米をぐりぐりとつぶします
唯「準備オーケーだよ」
憂「お姉ちゃんはお餅を返すのお願いね」
唯「よしきた!」 -
- 44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 03:46:19.13 ID:U1TnjZkg0
-
ぺったんぺったん 二人でお餅をつきます
私もお姉ちゃんも慣れたもので、つきと返しのタイミングに迷いはありません
ぺったんぺったん
ぺったんぺったん
ぺったんぺったん 月のお餅が出来上がっていきます
唯「ういー」
ぺったん
憂「お姉ちゃん!」
ぺったん -
- 45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 03:54:52.00 ID:U1TnjZkg0
-
梓「憂、私にも手伝わせて」
憂「うん、いいよ」
唯「あずにゃん、お餅を飛ばさないように気をつけるんだよ」
梓「分かってます・・・これ、けっこう軽いね」
澪「わ、私もやる!」
今度は梓ちゃんと澪さんに交替です
ぺったんぺったん
二人の動きはぎこちないけど、堅実にお餅をついています
これって二人の共同作業ですね
……ってそれは、私たちもだった
おかしな状況のせいか、へんなことばかり考えちゃうよ -
- 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 04:02:51.66 ID:U1TnjZkg0
-
唯「終わったー!」
憂「やったね、お姉ちゃん」
何度かの交替ののちついにお餅は完成しました
出来上がったお餅はシャンパンタワーのように高く積み上がっています
兎さんたちもとってもよろこんでるようです
唯「いっぱい働いたから許してくれるって言ってるよ」
梓「兎さん、本当にごめんなさい」
澪「ごめんなさい」
頭を下げる二人に、兎さんたちはあわてた風です
ロシア語は分からないけど、「まあまあ頭をおあげください」って感じなのかな? -
- 47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 04:15:48.04 ID:U1TnjZkg0
-
ぺったんぺったん
ぺったんぺったん
ぺったんぺったん
ぺったんぺったん
まだ耳の奥にお餅の音が残っています
ぺったんぺったん…… -
- 49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 04:22:50.00 ID:U1TnjZkg0
-
唯「兎さんかわいいね」
憂「そうだね」
月の兎さんたちは地球の兎さんとおなじでふわふわとした毛をもっていて
きっとじかに触れたらやわらかそうです
唯「ういー、この兎さんたち地球に連れ帰ったらだめかなあ」
憂「お姉ちゃん、ひらさわ号は積載量が限られてるから・・・」
唯「だめー?」
憂「ごめんね、お姉ちゃん」
唯「じゃあ、あずにゃんと澪ちゃんは」
澪「いや、私たちは自分の船があるから」
梓「それにこれ以上、お二人の邪魔はできませんよ」
憂「あ、梓ちゃん・・・」 -
- 50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 04:28:56.15 ID:U1TnjZkg0
-
そろそろお別れの時間がやってきました
不思議と名残惜しいですが、宇宙服の空気にも限りがあります
特に先に来ていた二人は、急いで船に戻らなくてはなりません。
梓「じゃあ、お世話になりました」
澪「二人とも本当にありがとう。二人で良い時間をすごしなよ」
唯「ばいばーい」
憂「さようならー」 -
- 52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 04:33:54.30 ID:U1TnjZkg0
-
唯「私たちもひらさわ号に帰ろうか」
憂「うん、お姉ちゃん。でもその前に背中にまわした手をこっちに見せてね」
唯「ぎくっ」
お姉ちゃんの手の中にはふわふわの兎さんがいました
憂「もうっ、誘拐するつもりだったの?」
唯「てへへ、冗談だよお」
どうでしょう、危ないところです
……けれど、もしお姉ちゃんがいなかったらこの状況はどうにもなりませんでした
梓ちゃんも澪さんもずっと船に帰れないままだったし、私だってそうでしょう
お姉ちゃんにはいっぱい感謝しないといけないね
憂「お姉ちゃん、ありがとね」
唯「???」
きょとんとした顔です -
- 53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 04:37:19.71 ID:U1TnjZkg0
-
ぴょーんぴょーんぴょーん
足跡をたどって、来た道を返していきます
お姉ちゃんの足跡と私の足跡
二人の痕跡はリズムよく月の大地に刻まれています
この足跡、ずっと残って行くのかなあ
ぴょーんぴょーんぴょーん -
- 55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 04:42:12.94 ID:U1TnjZkg0
-
兎さんたちも、船の入り口まで見送りに来てくれました
憂「さようならかわいい兎さん!」
唯「ダスビダーニヤ!」
憂「だすびだーにや!」
名残惜しくも、扉はしまります
いまや月世界は三重の隔壁と強化ガラスの向こう側です
唯「そういえば、海に行き忘れたねえ」
憂「そうだねえ」 -
- 56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 04:47:52.51 ID:U1TnjZkg0
-
唯「しまったなあ、月の海水浴したかったのに」
憂「お魚さんも見たかったね」
唯「でも、楽しかったよね!」
憂「・・・うん!」
お姉ちゃんと一緒で、いっぱい楽しかったよ
憂「また今度来ようね!」
唯「きっとだよ!」
ジェット噴射をはじめた船は
コンピュータの自動操縦によって目覚ましい速度で地球へと帰還して行きました -
- 57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 04:52:25.55 ID:U1TnjZkg0
-
私たちは暗い夜空に浮かぶ月を見るたびに思い出すでしょう
以上が私とお姉ちゃんの月旅行の顛末です
そういうわけで月の砂と、兎さんからもらった杵とは
いつまでも私たち姉妹の宝物なのでした
おしまい -
- 58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 04:55:18.73 ID:U1TnjZkg0
-
以上です
お付き合いくださった方ありがとうございました、おやすみなさい
- 66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 14:10:47.31 ID:6WaRpouP0
-
補足
書かなかったけど、落ちてた人工物は月面散策用のバギーかなんかの部品です
うさぎに追われて逃げるために軽量化したのです
- 60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 05:46:15.88 ID:VspDpT8j0
-
新しい世界観を開いてくれた。ありがとう!
- 63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/21(金) 11:22:24.56 ID:dptpWcW60
-
絵本みたいでよかった -
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2011.01.21 Fri
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- 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/19(水) 22:15:21.65 ID:rz37iOL50
-
律「充電器? 私のかしてやろうか?」
唯「ちがうよー私の充電器」
律「え? 唯もAUだろ?」
唯「わかってないなーりっちゃんは」
澪「あぁ、私わかったかも……」
律「ん?」
唯「はやく充電したいなー」
澪「もうちょっとの辛抱だろ……」
唯「そうなんだけど」
律「ん? ん?」
紬「あー充電器ねーふむふむ」
唯「もうすぐ来るよ。充電器」
ガチャリ
梓「遅れてすいません」 -
- 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/19(水) 22:18:49.01 ID:rz37iOL50
-
唯「やっほーあずにゃんこっちおいでー」
梓「なんですか? あ、まただらだらして!」
唯「いいからいいからー」
梓「?」
澪「気をつけろ梓。充電されるぞ」
梓「え?」
律「あーそれか」
紬「うふふふ」
梓「なんかあるんですか?」
唯「……あずにゃん!」ガバァ
梓「うわっ」
唯「んぅー充電開始ー」スリスリ
梓「暑いです! 離れてください!」
唯「充電中は本体はとても熱くなりますのでご注意ください!」 -
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/19(水) 22:23:16.59 ID:rz37iOL50
-
梓「もうっ! 私は充電器じゃありません!」
唯「あずにゃん分が……あずにゃん分がたりないよぉ」
梓「先輩達みてないでこの人なんとかしてください」
唯「うへぇ、最新の充電器はしゃべるんだねー」
梓「変なとこさわらないでください!」
唯「もっと深く接続しないとエネルギーたまらないよー」
梓「うにゃぁ! 離してください!」
澪「なんか見てるこっちが暑くなってきた」
律「最近の唯はところかまわずだな」
紬「私の充電もはじまりました」 -
- 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/19(水) 22:27:32.44 ID:rz37iOL50
-
唯「あずにゃんむちゅちゅー」
梓「ちょ、だめですよ! チューは無しですチューは!」
唯「えーチューしてよー接続ー」
梓「だめですったら! こんな人前で」
唯「ここじゃだめ? じゃあ家でたっぷり充電させてー」
梓「そういう意味じゃないです」
唯「むぅ、最近のあずにゃんはツンツンしてるねぇ」
梓「唯先輩が悪いんですよ」
唯「そうやってツンツンするなら私にも考えがあります!」
梓「えっ!?」
バッ
澪「やっと離れたぞ」
律「練習しようぜー」
紬「充電強制終了……」 -
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/19(水) 22:32:55.03 ID:rz37iOL50
-
梓「考えって……なんですか?」
唯「あずにゃんが一方的にツンツンなんて先輩として許せません!」
梓「はい……で?」
唯「私もツンツンする!」
梓「ツンツン……え?」
唯「……ツンツンする」
梓「そ、そうですか。か、勝手にすればいいじゃないですかっ!」
唯「うん、そうさせてもらうよ」
梓「……うぅ」
澪「梓がとまどってる」
律「あーあ。梓寂しそうな顔しちゃって」
紬「そんな……馬鹿な唯ちゃん……ほんと馬鹿よっ!」 -
- 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/19(水) 22:36:35.86 ID:rz37iOL50
-
唯「……」
梓「……」
唯「……はじめます」
梓「宣言いるんですか」
唯「……ツンツン」
つんつん
梓「ひゃぅ!?」
唯「ツンツンツンツン!!」
梓「にゃぁあ!?」
唯「おりゃああ、あずにゃんツンツンツンツンツンツン!」
つんつんつんつん
梓「だ、だめです……そんなつんつんしないでぇ……」
唯「ここだろー! ここが弱いんだろー!!」
つんつんつんつん
梓「んぅ……! だめですだめですっ」 -
- 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/19(水) 22:39:53.26 ID:rz37iOL50
-
澪「ほんとにつんつんはじめた……」
律「梓、口では嫌がってるけど」
紬「すごい嬉しそうな顔してる!」
澪「楽しそう……」
律「やってみる?」
澪「ち、違う! 梓が楽しそうな顔してるなぁって思っただけ!」
律「おやおや澪ちゅわんもツンツンですかな?」
澪「おい!」
律「へっへー。シャイニングフィンガー律様から逃れられるとおもったか!」
澪「ムギ! とめてくれ!」
紬「充電開始充電開始充電開始充電開始」 -
- 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/19(水) 22:45:26.33 ID:rz37iOL50
-
唯「おやおやあずにゃんこの程度かな?」
梓「う、うるさいでうひゃぁ!?」
唯「おっとまだツンツンする余力が残っていたか」
梓「脇下はほんと……ふふ、だめっです」
唯「汗ばんできたね」
梓「それはいわないでください!」
唯「あとはどこをツンツンしようかなー」
梓「あう、もういいでしょっ! くすぐったいですって」
唯「あ! まだここをツンツンしてなかった!」
梓「ここって……ひゃうん!?」
唯「あははーいい反応だねー」
梓「ヤ、そこは……んっ、だめです……って」
唯「ウィークポイントはっけーん!」 -
- 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/19(水) 22:49:37.05 ID:rz37iOL50
-
律「おらおらー」
澪「こらっ! スティックはなし! ってか危ない!」
律「つんつんつんつん!」
澪「シャイニングフィンガーじゃないのかっ!」
律「シャイニングフィンガーソードォ! メン! メン! メエエエン!」
澪「やめっ、あはははっくすぐったい! あはははっゴホッゴホッ」
律「もっと色っぽい声をださんかい!」
つんつんつんつん
澪「んあぁ! もう!」
紬「すごいわ……どんどん私のなかにエネルギーがたまっていく!」
紬「……」
紬「でも、私もすこし混ぜてほしいかも……」
紬「お茶いれて待っとこ……クスン」 -
- 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/19(水) 22:53:22.78 ID:rz37iOL50
-
5分後
唯「はぁ……はぁ……・」
律「ゼイ……ゼイ……」
唯「手ごわい相手だった」
律「こっちもだ……」
梓「 」ピクピク
澪「 」ピクピク
唯「残るは……!」
律「あぁ……いくぞ唯!」
唯「突撃ー!!」
紬「え? ちょっと二人とも!!? ふぁあああああん!」
お し ま い -
- 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/19(水) 22:56:47.51 ID:LuzjzJST0
-
乙
- 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/19(水) 22:56:57.06 ID:iPjY8LVT0
-
え?ああ、うん・・・
- 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/19(水) 23:00:12.14 ID:rz37iOL50
-
梓「またシール……」
唯「えへへー」
梓「えへへじゃないですよ」
唯「にへへー」
梓「もう! 勝手に貼ったらだめじゃないですか!」
唯「もーしわけない~」
梓「全然反省してないですね。これ結構はがした後ベタベタが残るんですよ?」
唯「そうなの? じゃあ剥がさなくても……」
梓「そもそも貼らないでください!」
唯「むぅ、またツンツンしちゃう?」
梓「い、いえ……すいません。なんでもありません」
唯「わかればよろしい!」
梓「でも何事もほどほどでお願いします」
唯「おっけーおっけー承知之助~」 -
- 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/19(水) 23:05:05.90 ID:rz37iOL50
-
梓「じゃあとりあえず剥がしてまわりましょっか?」
唯「えっ? そんな殺生な」
梓「みなさん迷惑してると思いますよ」
唯「んーでもでも。私そんなにみんなの物には貼ってないよー」
梓「え? そうなんですか?」
唯「うん! 貼るのはあずにゃんだけ!」
梓「そ、それは……嫌がらせで? それとも……どういう意味でしょうか」
唯「うーん、わかんないや!」
梓「……」
唯「でもなんだかあずにゃんの物にはいっぱい貼りたくなっちゃうんだぁ!」
梓「……? えっとそれは」
唯「あずにゃんどうしたの? 顔赤いよ? 怒った?」
梓「ち、ちがいます! 関係ありません!」
唯「不可解……」ジィー
梓「私のほうが……不可解ですよ」 -
- 36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/19(水) 23:10:40.86 ID:rz37iOL50
-
唯「あずにゃん」
梓「なんです?」
唯「えへへ、このシール可愛いでしょ?」
梓「え、えっと……可愛い……シロクマ?」
唯「犬だよ! あ、でもあずにゃんは猫のほうが好きかーごめんね」
梓「いえ、そんな。可愛いと思いますよ犬も」
唯「じゃあこの黒猫さんのシールあげるね」
梓「あ、ありがとうございます」
唯「さっそく貼っていいよ!」
梓「はい。んーっと、どこに貼ったらいいですか?」
唯「どこでもいいよ?」
梓「じゃあ唯先輩の物に貼っていいですか?」
唯「仕返し?」
梓「まぁそんなようなものです」 -
- 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/19(水) 23:17:59.18 ID:rz37iOL50
-
唯「んで、どれに貼る? 鉛筆? ピック? あ、ギー太はだめ!」
梓「わかってますよ。んと、そうですねぇ」
唯「あ、名前かいたほうがいいよ! せっかく名前欄あるんだから」
梓「私の名前書いたシールを唯先輩の持ち物にはってどうするんですか」
唯「じゃあさ! 貼った物は自由につかっていいことにしよう!」
梓「ということは私の持ち物はすでに大半唯先輩の物化してるんですね……」
唯「そゆこと! 俺のものは俺の物! あずにゃんの物も俺のものだー!」
梓「……そうですか」カキカキ
唯「相変わらず丸くて可愛い字だね!」
梓「書きました。貼りますね?」
唯「わくわく! わくわく!」
梓「じゃあここで」
ペタ -
- 40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/19(水) 23:22:06.94 ID:rz37iOL50
-
唯「髪の毛? ほえ?」
梓「……あ、や、やっぱなしで!」
唯「?」
梓「すいませんすいません、すぐ剥がしますっ!」
唯「NO!」
梓「うぇ?」
唯「そっかぁあずにゃん……」
梓「うっ……」
唯「あ、また顔真っ赤。可愛い!」
梓「いわないでください」
唯「あずにゃんってさ……その」
梓「あうぅ……」
唯「髪の毛が欲しいんだね!」
梓「……あ、あぁー、はいそうです……」
唯「なんだーびっくりしたよー。言ってくれたら髪の毛の一本や二本あげるのにー」 -
- 42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/19(水) 23:26:53.30 ID:rz37iOL50
-
梓「……ばか」
唯「え?」
梓「もうこんな馬鹿なことやめましょ」
唯「えーもっといっぱいぺたぺたしてよー」
唯「まだまだあまってるよー?」
梓「……あーもう! じゃあこれでどうですか!」
ペタッ
唯「むぐっ!」
唯「むぐむぐ……ふぁがしてぇ」
梓「あ、やってしまった……」
唯「あじゅにゃーん」
梓「すいません、剥がします」
ペリペリ -
- 43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/19(水) 23:31:42.26 ID:rz37iOL50
-
唯「もう! いきなり唇に貼るなんてそんなに私の唇……あっ……!」カァ
梓「……えっと」
唯「あ、あはは……あずにゃん……」
梓「ま、間違えたんです。ほんとはヘアピンに貼ろうかと」
唯「……そ、そうなんだ。すごい間違え方だねー」
梓「ほんとですよ? はい、ほんとに」
唯「あずにゃんのいけずぅ」
梓「あの、唯先輩は貼らなくていいんですか……?」
唯「……そだね。貼る」
梓「……顔真っ赤ですよ」
唯「いいのいいの。ちょっとまってねー名前かくから」
梓「……」
唯「えーっと、どこに貼ろうかなー」
梓「……」 -
- 45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/19(水) 23:35:16.21 ID:rz37iOL50
-
唯「よーし目つぶって貼ろうかなーっと」
梓「え?」
唯「目つぶってるんだからたまたまおかしなとこに貼っちゃってもしかたないよねー」
唯「うん、だって目つぶってるもん!」
梓「は、はい……そうかもしれませんね」
唯「よーし貼るよー貼るよー」
唯「えい!」
ペタッ
梓「……」
唯「どれどれー……あっ」
梓「……ハズレです」
唯「あーほっぺたねー、ほっぺたねーあー……」
唯「しかたないよねー目つぶってたもん」
梓「そうですね」 -
- 47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/19(水) 23:42:25.48 ID:rz37iOL50
-
唯「ね! もっかい! もっかい貼らせて!?」
梓「まだ貼るんですか?」
唯「シールならいっぱいあるから!」
梓「い、いいですけど……次はちゃんと……いえなんでもないです」
唯「もう目はつぶらない」
梓「そうですか」
唯「じゃあ……い、いきます」
梓「なんだか……ど、どきどきしますね!」
唯「そうだね!」
梓「その、何に貼るのかなーって意味でですよ!?」
唯「しってるよ……うん!」
梓「どうぞ」
唯「……」
ペタ -
- 48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/19(水) 23:49:08.41 ID:rz37iOL50
-
梓「ん?」
唯「あ、えへへ……えー、あぁー」
梓「なんで反対のほっぺたに貼ってるんですか」
唯「あのぅ……その……」
梓「……いくじなし」
唯「ご、ごめんなさい」
梓「唯先輩のばか」
唯「……い、いいじゃん! 私の勝手でしょ!」
梓「むぅ、そうですけど」
唯「ほんとはほっぺたがほしかったんだもーん!」
梓「そうですか、ならいいですけど」
唯「ほれたこ焼きー!」ムニュ
梓「しょれでいいにゃらいいでしゅけど!」
唯「たこ焼きあずにゃん可愛いーあははははー……ハァ……」
梓「……ハァ」 -
- 49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/19(水) 23:57:12.94 ID:rz37iOL50
-
唯「ため息なんてあずにゃんらしくないぞっ!」
梓「いや、もういいんです……なんか疲れました」
唯「私もー。なんか神経磨り減ったって言うかね」
梓「とりあえず今日は帰りましょっか?」
唯「そだね」
梓「これも剥がしますね」
唯「うん。もうほっぺたは貰ったし」
梓「……アイタタ」ペリペリ
唯「やっぱ体に直接はるもんじゃないね。ごめんね?」
梓「いいですよ。私も貼っちゃいましたし」
唯「どんまいどんまい!」バンバン!
梓「な、なんですかいきなり律先輩みたいなノリ」
唯「さぁ、お手手つないで帰りましょー」
梓「それは……ちょっと」 -
- 50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 00:02:51.77 ID:QTuTl9ba0
-
翌日
純「おいーっす梓」
梓「おはよ」
純「梓見た!? 昨日のドラマのさー! あれ?」
梓「ん?」
純「なんか制服の後ろについてるよ」
梓「何? とって」
純「……なにこれ、なんか猫みたいな、あぁー」
梓「?」
純「とれたとれた、糸くずだった」
梓「ありがと」
純「梓いいなー」
梓「なにが?」
純「私もいつか素敵な王子様に占有されたいー」
梓「ふえ?」 -
- 52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 00:13:31.02 ID:QTuTl9ba0
-
憂「おはよー梓ちゃん」
唯「あずにゃんおっはー!」
純「私には挨拶なし!?」
梓「憂おはよ。おはようございます唯先輩」
唯「えへへーまた新しいシールもってきたんだー」
梓「次こそはちゃんと貼ってくれるんですか?」
唯「ちゃんとって? むふ、あずにゃん……えへへ」
梓「ち、ちがいます! もう教室いきますね!」
スタスタ
唯「おやおや」
純「なんか急に怒った。てか私らおいてくなー!」
憂「あれ、梓ちゃん背中になんかついてるー」
唯「そりゃあ私の充電器だからねー」
お し ま い -
- 54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 00:15:57.63 ID:LgdCrOQq0
-
まだ充電が足りない
- 56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 00:21:19.74 ID:akSR/yTn0
-
乙
- 57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 00:22:09.99 ID:QTuTl9ba0
-
梓「唯先輩に首輪つけたい」
純「なにいきなり」
梓「いや、首輪でもつけようかなって」
純「なに? そういうプレイがお好み!?」
梓「あっ……ち、ちがうって! ほんとそういう意味じゃない!」
純「わかったわかった。顔赤くしない! で、首輪って何なのさ」
梓「えっと、ほら、なんていうか唯先輩っていつもふらふらしてるでしょ?」
梓「だからなんか見てて危なっかしくて……不安だよ」
純「……ほほう?」
梓「ホントに変な意味はないよ。ただなんとなく似合うかなぁって……」
梓「唯先輩ってちょっと犬っぽいとこあるし……」
梓「た、たまたま思いついただけ!」
純「常日頃考えてないとそういう発想には至らないとおもうけど……」
梓「純とは、あ、頭の回転とかイマジネーション力がちがうんだよ!」 -
- 61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 00:26:26.08 ID:QTuTl9ba0
-
純「梓がつければいいじゃん。あずにゃんなんだし」
梓「うるさいなぁ。私は飼猫はヤなの!」
純「そっか梓は『私のことをご主人様とお呼び!』『あう~ん』がやりたいんだ」
梓「だからそういうのじゃないってば! 馬鹿にしないでよ」
純「あーはいはいなんとなく言いたいことはわかるよ」
梓「そ、そう?」
純「つまり愛しの唯先輩が他の人になびかないように拘束したいんだー?」
梓「えっ、と、ちがうもん!」
純「平たく言えばそういうニュアンスでしょ?」
梓「そ、そうなのかな……」
純「おやおや御自分でもわかってらっしゃらないと?」
梓「うぅ……ちがうもん」
純「梓は憂のお姉ちゃんのこと大好きだもんねー」 -
- 63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 00:30:22.86 ID:QTuTl9ba0
-
梓「好きじゃないし……嘘、わりと好き……かも」
純「へぇ~?」
梓「……純むかつく」
純「突然だけど携帯みせて」
梓「え?」
純「けーたいでんわ!」
梓「い、いや」
純「なんでー? じゃあさ、待ち受けだけでいいから」
梓「む、無理……」
純「ふーん? いったい何が待ち受けになってるのかなー」
梓「……」
純「あ、もしかして『わりと』好きな先輩だったりして」
梓「……いじわる」
純「いーじゃんいーじゃんコイバナ大好き華の女子高生です!」
梓「私と唯先輩はそんなんじゃないもん……」 -
- 64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 00:37:15.38 ID:QTuTl9ba0
-
純「わかったわかった。そんな顔しない、いじめてるみたいじゃん」
梓「いじめてる……じゃん」
純「で、話もどるけど首輪ってさ」
梓「あーもう! なんで純にこんなこと話ちゃったんだろう!」
純「キレる十代……」
梓「もうはっきり言う! めんどくさい!」
純「おぉ! 吹っ切れたかあずにゃん一号!」
梓「常日頃から唯先輩はあっちいったりこっちいったり、ふらふらふらふら!」
梓「澪先輩に甘えてるを見るとなんだかイライラするし」
梓「律先輩とじゃれあってるとムカムカ!」
梓「ムギ先輩とおふざけで抱き合ってるときなんてもう!」
梓「あーなんかヤな気分!」
純「あんた……そりゃ嫉妬だよ」
梓「しってるよ! ていうか自分でもびっくりしてる……」
純「独占欲の強い女ってやだねー」 -
- 66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 00:43:19.99 ID:QTuTl9ba0
-
梓「憂とベタベタしてるのはまだ許せるかな……」
純「許すって、何様」
梓「うぅ……」
純「でも梓は唯先輩の物なんでしょ? それでいいじゃん」
梓「そうなの?」
純「そうなのって……気づいてないのか背中の」
梓「え?」
純「いやいやこっちの話」
梓「あ、もうすぐお昼終わるね」
純「なにか進展があったらぜひきかせてほしいね」
梓「もう純には何も言わないから」
純「えー私の密かな楽しみだったのにー」
梓「くそー人のこ、こい、恋路を……いやなんでもない……ハァ」
純「ま、唯先輩の天然をなんとかするのはあんたにとっての試練だね」
梓「……むむむ」 -
- 69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 01:02:34.23 ID:QTuTl9ba0
-
梓「ねぇ、どうすればいいとおもう?」
純「人にいきなり聞くかー。自分でなんとかせんかいっ!」
梓「だって……難しいし」
憂「ただいまー」
梓「あ、おかえり」
純「おっかえりぃ! 今ね今ね梓が!」
梓「わー! だめだってば!」
憂「なになに? またお姉ちゃんのこと?」
純「鋭い! さすが憂」
梓「そんなしょっちゅう唯先輩の話してるみたいな……」
純「してるよね?」
憂「してるよー」
梓「うそだぁ……」
憂「授業はじまるよー」
梓「唯先輩の天然か……どうしよほんと」 -
- 70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 01:06:31.38 ID:QTuTl9ba0
-
放課後
梓「あの……」
律「なんだよぉ! いま盛り上がってるんだって!」
澪「梓もここ座って! ほら」
紬「うふふふ、うふふふ」
梓「はぁ……で、なんの話してるんですか?」
唯「コイバナだよあずにゃん!」
律「そ! コイバナ!」
梓「!!」ドキッ
澪「いまさっきまで唯の初恋について聞いてたんだ」
梓「え……初恋……唯先輩の」
唯「うん! 初恋!」
梓「そ、そうですか……初恋……」
律「どしたー? あからさまに落ち込んで」 -
- 73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 01:11:05.07 ID:QTuTl9ba0
-
紬「あらあら、聞きたかった?」
澪「もっかい話す?」
唯「えー恥ずかしいよー」
梓「……初恋」
律「うーん、じゃあ梓に聞いてみよっか」
梓「え?」
唯「……あずにゃんの初恋か」
律「梓はどんな恋をしてきたのかなーって」
澪「興味ある……かも」
紬「うんうん!」
唯「わ、わたしはあんまりききたくないかなぁ……っていうか練習しよー」
律「おい、唯?」
紬「どうして聞きたくないの?」
唯「うぅ……まぁいいや、話してあずにゃん」
梓「はぁ。といって初恋話なんてあってないようなもんですけど」 -
- 77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 01:15:00.06 ID:QTuTl9ba0
-
唯「はは、きかせてみんしゃい……」
澪「なんだ唯。顔ひきつってるぞ」
唯「え、えへへそうかな……」
梓「話していいですか? あんまり言いたくないですけど」
律「カモンかもん!」
紬「中学生時代!? それとも最近!?」
梓「あーえっと……すっごく前です」
律「いつぐらいだ?」
梓「んー記憶は定かじゃないですけど、たぶん小学校低学年くらい……」
律「こりゃまたずいぶんと昔だな」
澪「そ、そんなころから恋を……大人だな」
梓「か、からかわないでくださいね?」
律「うい!」
紬「了解~」
梓「できれば黙ってきいてほしいです」 -
- 84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 01:23:51.51 ID:QTuTl9ba0
-
梓「あれは確か家族で県外のなんとか動物ランドにいったときの事です」
梓「ほら、あの動物とふれあえるっていうアレです」
梓「そこで私、家族とはぐれて迷子になっちゃったんですよ」
律「おうおうおうおう!」
梓「だまってきいてください」
唯「……」
梓「それで怖くなってわんわん泣きながら走りまわってたらですね」
梓「一人の女の子と出会ったんです」
澪「女の子? 女の子!?」
梓「あ、はい。聞いてください」
梓「その子も私と同じく迷子になったみたいだったんですが、なんだかそうは思えないくらいあっけらかんとしていて」
梓「泣いてる私をそっと抱きしめて慰めてくれたんですよ」
梓「少し歳上か同い年くらいの子でした」
梓「それでしばらく一緒に二人で歩きまわったんです」
紬「……」ゴクリ -
- 88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 01:31:57.22 ID:QTuTl9ba0
-
梓「その子がいるとなんだか気持ちが暖かくて、楽しかったんですよ」
梓「親をさがすことなんて忘れて夢中で遊びまわりました」
梓「いま思えばすごく危ないですよね」
梓「でも子供ながらにすごい冒険だったんです」
梓「それで、しばらくしてその子の家族が現れて、私はそのまま迷子センターへと届けられることになりました」
梓「そこには私の両親がいました」
梓「迷子になったはずの私が泣きもせずケロっとしていたので両親はびっくりしてました」
梓「でもそれは全部その子のおかげなんです」
梓「ずっと側にいてくれて、手をつないでくれて」
梓「笑顔が太陽みたいでした」
梓「あの温もりはいまでも忘れません」
梓「残念ながらそこでその子とはおわかれになりましたけど……」
梓「名前くらいきいとけば良かったなぁ……」
梓「あ、以上です。つまらなくてすいません」
梓「ていうかこれ初恋っていうんですかね?」 -
- 90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 01:36:02.56 ID:QTuTl9ba0
-
律「……」
澪「……」
紬「……」
唯「……」
梓「あれっ? いや、ほんとすいません期待外れでしたよね」
パチパチパチパチ パチパチパチ
梓「え?」
律「はぁーなんか嫉妬しちゃうんですけど」
梓「え?」
澪「カミサマっているんだな……」
紬「素敵……こんなことってあるのね」
梓「はぁ、でもそんなにロマンチックではないですよ? ずっと昔のことですし」
唯「……あずにゃん」
梓「はい?」 -
- 92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 01:40:48.49 ID:QTuTl9ba0
-
唯「あずにゃんだったんだ……」
梓「なにがです?」
唯「んーん、たまたまだよね」
律「いやいや! たまたまなわけあるか!」
澪「そうだぞ唯! 唯っ!!」
唯「あれれーなんか……混乱してるや」
梓「いまいち理解できないですけど」
紬「あのね、梓ちゃん。さっき唯ちゃんの」
律「あーまてムギ。それは絶対本人から!」
紬「そ、そうね。ごめんなさい……」
澪「ほら、唯。ちゃんと言わないとわからないぞ」
唯「だってぇ……」
梓「なんなんですか? 私だけわからないなんて不公平です」
唯「ん……あずにゃんさぁ」
梓「はい」 -
- 93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 01:44:35.92 ID:QTuTl9ba0
-
唯「あそこのおっきいハムスター気に入ってたよね……」
梓「え?」
唯「あと、わんわんゾーンで吠えられて泣いちゃってさ……でしょ?」
梓「な、なんで唯先輩が……あ!!」
梓「ああああああっ!!!」
唯「……えへ」
梓「う、うそ……」
唯「唯先輩でしたー……なんて」
梓「……う」
梓「あ、ちょ、ちょっとすいません、トイレいってきます」
唯「あずにゃん……」 -
- 96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 01:52:10.08 ID:QTuTl9ba0
-
律「なぁ唯……」
唯「な、なにかな」
澪「なんか、私たちのほうが恥ずかしい……」
紬「唯ちゃんの話きいた後だとなおさら……」
唯「う、うん……ごめん」
律「唯の出会ったキャワイイ泣き虫な天使って梓だったんだな」
唯「み、みたいだね……うへぇ、どうしよ」
澪「あー暑いっ! 窓あける」
紬「私はいま感動しているわ。素敵よ唯ちゃん!」
唯「こ、このあと戻ってきたあずにゃんとどう顔をあわせたらいいのかわかりません!」
律「ん……んー。それはだねぇ……」
澪「いつもどおり、は無理か」
紬「じゃあもういっそ!」
唯「いっそ……いっそ……」 -
- 97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 01:56:43.73 ID:QTuTl9ba0
-
律「そうそう、この際……ってなんでやねーん! ……アハハ」
澪「律、おデコだしなさい」
律「ほんとごめ、アイタっ!」
唯「……ふふっ……わかった」
紬「梓ちゃん、きっといまでも唯ちゃんのこと好きよ?」
唯「ムギちゃんありがとう。でも大丈夫、私逃げないよ」
律「おっしゃあ! そうと決まれば、梓はやくもどってこーい!」
澪「どきどきする……あ、私たち席外したほうがいい?」
唯「ここにいて? 二人だとまた黙りこんじゃうかもしれないし……」
律「以外とぴゅあでシャイだからなー」
紬「でもそれがいいとこよね?」
唯「あずにゃん……」
ガチャ
梓「お、お待たせしました……」 -
- 98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 02:00:38.46 ID:QTuTl9ba0
-
唯「おかえり」
梓「……」
唯「……」
律「おいっ!」
澪「しっ!」
紬「……」ハラハラ
梓「……」
唯「……」
律「……おいおい」
梓「あの、唯先輩」
唯「うん」
梓「すいませんでした!」
唯「えっ!?」
梓「唯先輩ご本人だとは露知らず、勝手にしゃべくり散らかして!」
唯「いや、その、違っ」 -
- 101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 02:06:18.40 ID:QTuTl9ba0
-
梓「ホントごめんなさい! もうあの日のことは忘れます! だからその」
唯「あずにゃん!」
梓「いままでどおり仲良くしてくださいっ!」
唯「……あずにゃん」
ギュウ
梓「あっ……」
唯「聞いて? 私の初恋」
梓「……えっと……い、いやです」
唯「どうして?」
梓「私の初恋は唯先輩なのに……なのにそんな唯先輩の初恋話をきくなんて」
梓「きっと……心が張り裂けます」
唯「遡ること、67、8年くらい前かな?」
梓「……」
唯「私はとっても可愛い天使に出会いました」
梓「……」 -
- 104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 02:14:14.36 ID:QTuTl9ba0
-
唯「ちっちゃくて、泣き虫で、ちょっとおこりんぼで、でも笑顔がとっても可愛い天使です」
梓「……」
唯「その天使、私の初恋の天使。当時の顔はあまり思い出せないけれど」
唯「長い時を経て今再び、私の腕の中にいます」
梓「!」
唯「わくわく動物ランド、楽しかったよね? あずにゃん」
梓「あっ……あっ……」
唯「あれ、泣き虫はあの時から治ってないの?」
梓「唯先輩……唯先輩……グス」
唯「グス……また会いたいと思ってた。ずっとずっと」
梓「私もです……私も思ってました」
唯「たった数時間一緒にいただけなのに、なんでかな、忘れられなかった」
梓「はい……そうなんです」
唯「でもこうしてまた会えたんだよ? おっきくなったねあずにゃん」
梓「……うぅ……グス、まだこんなに、差があるじゃないですか」 -
- 106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 02:23:00.39 ID:QTuTl9ba0
-
唯「またよしよししてあげよっか?」
梓「け、結構です……もうあの時とはちがいますから」
唯「天使なのはかわりないよ?」
梓「恥ずかしいこと言わないでください」
唯「あずにゃ~ん」スリスリ
梓「あ……そっかぁ」
唯「ん? 何?」
梓「あのですね、唯先輩抱きしめられると、どうしてこんなに落ち着くんだろうってずっと考えてたんですよ」
唯「へぇー」
梓「今わかりました。きっと、あの時の温もりをずっと私の体が覚えていたんですね」
唯「……私もね、ここであずにゃんを最初に抱きしめたとき、なんだかすっごく懐かしい感じがしてたんだ」
梓「えへへ、なんなんでしょうね」
唯「きっと私の抱き心地メモリーにしっかりと刻まれてたんだろうね」
梓「あは、なんですかそれ」 -
- 107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 02:28:01.06 ID:QTuTl9ba0
-
唯「もっと刻んでいい?」
梓「もうっ、特別ですよ」
唯「あたりまえだよ! あずにゃんは特別!」
ギュウウ
梓「うっ、くるしいですって! そんなに強く抱かなくてもどこへも行きません」
唯「もう迷子にならないでねー」
梓「唯先輩が言えた口ですかソレ」
唯「私はどこへもいかないよー。えへへーあずにゃんあったかーい」
梓「暑いですって……アハハッ」
唯「あじゅにゃ~ん」
梓「……最初から首輪なんていらなかったんですね」
唯「え?」
梓「体はともかく、心はずっとずっと……私のこと……う、恥ずかしい」
唯「首輪~?」
梓「忘れてください」 -
- 108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 02:33:02.94 ID:QTuTl9ba0
-
唯「あ、そうだ!」
梓「なんです?」
唯「もう一度あの場所へいこうよ! 私たちの出会った場所!」
梓「あ、いいですね! 私も行きたいです!」
唯「デートだねー」
梓「そ、そうなりますよね……えへへ」
唯「また前みたいに手つなぐー?」
梓「それも……あり、かな」
律「いい雰囲気な中、突然ですまんが凶報だ」
唯「え?」
梓「あっ……いたんでしたね」
律「こらぁ! 勝手にふたりだけの国に行ってんじゃねー!」
梓「す、すいません……えへ」
唯「で、なに? きょうほうって? きょうほうってきょうほう?」
澪「悪い知らせって事」 -
- 109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 02:38:03.90 ID:QTuTl9ba0
-
唯「えっ悪い知らせ!?」
律「実はその動物ランド、二年くらい前に閉園してる」
唯「えっ?」
梓「あ……嘘……」
唯「えええええっ!?」
澪「知らなかったのか……」
律「いまは遊園地だっけ? 動物園?」
澪「忘れた」
梓「私たちの、思い出の場所が……グス」
律「な、なくな~。あたしらだって残念に思う」
澪「うぅ……カミサマは意地悪だ」
紬「そうね……」
唯「あずにゃん、元気だして?」
梓「はい……でも……」
唯「大丈夫だよ。だってね……」 -
- 110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 02:44:39.94 ID:QTuTl9ba0
-
唯「見た目や中身がいくら代わっても、私たちがそこで出会った運命はかわらないよ?」
唯「あずにゃんがここにいる。それだけで充分!」
梓「唯先輩……グス」
唯「これ以上望まないくらい幸せだよ!」
梓「……はい」
律「心配ないみたいだな」
澪「唯は強いな」
紬「もしもし? 斉藤? あのね――」
律「ん? 何電話してるんだ?」
紬「実はね。いい知らせもあるの!」
唯「きっぽうって奴?」
紬「うん!」
梓「なんですか?」 -
- 111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 02:50:32.38 ID:QTuTl9ba0
-
紬「そのわくわく動物ランドが閉園した後、ウチの系列がそこへテーマパークを建てたの」
梓「ムギ先輩の……」
紬「ごめんなさい」
唯「ムギちゃんが謝ることじゃないよ」
紬「でもね、居抜きに近い形だから動物とのふれあいスペースやお店はほとんどそのままで残ってるし」
紬「きっといま行っても懐かしいんじゃないかしら」
唯「そうなんだ……」
梓「完全に取り壊したわけではない、ということですか?」
紬「うん! リニューアルっていうのが一番近いかなぁ」
律「なんだそれ! すげー」
澪「良かったな! 唯、梓!」
唯「……そっか!」
梓「行きましょう!」
紬「それでね。特別優待券があるからぜひうけとってほしいの」
唯「ほんと!? いいの!?」 -
- 112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 02:55:26.65 ID:QTuTl9ba0
-
紬「もちろん! もともと渡すつもりだったしちょうど良かった!」
律「いいなー」
紬「もちろんりっちゃんと澪ちゃんもうけとってね?」
澪「い、いいのか? もらっちゃって」
紬「うん! よければ今度の日曜日なんてどうかしら?」
梓「天気もいいみたいですしね!」
唯「みんなで行こうよ!」
律「おっけー! でもな、お前らはちゃーんとデートすることー」
唯「わかってるよ!」
澪「デートか……すごいなぁ」
梓「楽しみです……」
紬「うふふ、楽しみー!」 -
- 114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 03:01:34.51 ID:QTuTl9ba0
-
唯「よーしテンションもあがってきたし練習ー……の前にお茶しよー?」
律「おいっ!」
澪「梓、これから唯と付き合っていくとなると……大変だな」
梓「いえ、扱いはもう慣れてますので」
律「お、言うねぇ」
梓「いざとなったら首輪……は要らないんでした」
紬「それじゃあ、紅茶いれていい?」
唯「いえーいティータイム最高ー初恋最高ーあずにゃん最高ー!」
梓「もう、ほんと昔から落ち着きないんですから……」
律「その発言、なんだか熟年夫婦みたいだな……」
澪「いいんじゃないか、梓に手綱にぎらせておけば安心だ」
唯「あずにゃ~ん、ケーキあーんさせっこしようねー」
梓「はいはい……」
お し ま い -
- 115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 03:09:31.70 ID:4vNYrzpw0
-
とりあえず乙!
デートがどうなるのか非常に気になるが、とにかく和んだ
良い話だった
- 144 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 19:09:17.83 ID:QTuTl9ba0
- 土曜日
梓「ハァ……ついに明日だ」
梓「唯先輩と初デート……」
梓「あの場所へもう一度……」
梓「なんだか胸がキュンキュンしちゃう」
梓「私そんなに乙女ちっくじゃないはずなのにな」
梓「何着ていけばいいのかな。唯先輩は絶対絶対可愛い服着てくるよね」
梓「……いつものシャツだったらどうしよう」
梓「あ、それと持ち物準備しなきゃ」
梓「アトラクションに乗るからあんまりごちゃごちゃ持っていったら邪魔だよね」
梓「水筒とか……いるかな?」
梓「そういえばお昼はどうするんだろう。レストラン? たしかあったはず」 -
- 145 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 19:12:48.90 ID:QTuTl9ba0
-
梓「あ、でもリニューアルしてるならどうなんだろう」
梓「メールで聞いて……もう寝ちゃったかな」
梓「さっきおやすみなさい送ったばっかりだしね」
梓「服はこれでいいや、よし寝よ」モゾモゾ
梓「……」
梓「……」
梓「……眠れない」
梓「……唯先輩寝坊するかも」
梓「モーニングコールしないとね」
梓「その前に私がちゃんと起きなきゃ」
梓「おやすみ、唯先輩……」 -
- 147 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 19:18:18.84 ID:QTuTl9ba0
-
日曜日
律「やっと着いたー!! ハァーつっかれたー!」
澪「もたれかかって寝てただけだろ! うわぁ私の服、よだれの跡ついてるし!」
梓「シャトルバスなんてあるんですね」
唯「うぇ~あずにゃ~ん……」
梓「だ、大丈夫ですか……」
律「やれやれ、せっかくのデートでこれかよ」
澪「唯、酔い止め飲んでこなかったのか?」
紬「ど、どうしようお医者様呼んだほうが」
唯「ダメダメ! そこまでしなくていいって!」
梓「あ、ちょっとマシになりました?」
唯「う、うぇ~あずにゃ~ん……」 -
- 148 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 19:19:59.11 ID:QTuTl9ba0
-
律「バス酔いを理由に甘えてるだけなんじゃないのか?」
梓「なんかそんな気もしてきました。さぁ立ってください行きますよ」
澪「ここが唯と梓の思い出の場所か……なんかいいな」
律「お、でっかい観覧車あるじゃん!」
紬「うん! ジェットコースターもすっごく怖くて素敵なの!」
澪「私はメリーゴーランドとかでいい……」
律「よーしこっち三人は澪の恐怖症克服の旅だ!」
澪「絶対いやだからな!」
紬「じゃあそういうことで唯ちゃんと梓ちゃんは二人で回ってね?」
梓「お気遣いありがとうございます」 -
- 149 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 19:21:32.15 ID:QTuTl9ba0
-
唯「うぃ~了解。でお昼はどうするー?」
律「んじゃ昼どきになったらメールで!」
澪「怖いのヤダ怖いのヤダ怖いのヤダ」
紬「これ、渡しとくね。優待券。フリーパスだから目一杯楽しんできて!」
唯「さんきゅーべりまっち!」
梓「本当にありがとうございます。嬉しいです」
律「よっしゃぁ! 早速突撃だー!」
澪「お、おいいきなり走るなっ!」
紬「じゃあね~! りっちゃんまってー!」
唯「……いこっか?」
梓「はい!」 -
- 152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 19:28:51.76 ID:QTuTl9ba0
-
唯「あ、手つないでいい?」
梓「え?」
唯「まだバス酔いが……」
梓「そうですか、なら仕方ないですね。まだふらふらしてますもんね?」
唯「そそ、そゆこと!」
梓「はい、どうぞ。あ、荷物も持ちましょうか?」
唯「それはいいよー。はいじゃあお手手つなぎましょう」
ギュ
梓「~♪」
唯「あれー? なんだか嬉しそうだね」
梓「い、いえっ! そんなことないです??」
唯「何で聞くの?」
梓「さぁ……」
唯「まぁいいや、れっつごー!」 -
- 153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 19:34:15.14 ID:QTuTl9ba0
-
……
唯「あずにゃんや」
梓「はい」
唯「中の記憶ある?」
梓「えっと、あんまり覚えてないですね」
唯「どこで出会ったんだっけ」
梓「さぁ……? どこでしたっけ」
唯「ま、そのウチ思い出すよね」
梓「だといいですけど」
唯「「なんか乗ろ!」
梓「私最初はメリーゴーランドがいいです」
唯「お、いいねぇ! 一緒に乗ろうよ」
梓「はい!」
唯「当時はたしか馬じゃなくていろんな動物だったよねー」
梓「そんなような……その辺あやふやです」 -
- 154 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 19:41:20.08 ID:QTuTl9ba0
-
……
唯「どうして思い出せないんだろー」
梓「そりゃもう何年も前のことですし、仕方ないですよ」
唯「あずにゃんの笑顔はずっと覚えてたのになー」
梓「うっ、そういうのは心のなかにしまっておいて下さい」
唯「……それはそうと、この馬遅いね?」
梓「遅いですね」
唯「それに二人乗りだと狭いね?」
梓「あんまりくっつかないでください」
唯「えーん落ちちゃうよー」
梓「そんな危ない設計なわけないじゃないですか」
唯「おや?」
唯「あの3つ前の馬にのってるの澪ちゃんだよね?」
梓「そうですね」
唯「なんか楽しそうだね?」 -
- 157 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 19:48:41.25 ID:QTuTl9ba0
-
……
唯「目、まわった……」
梓「しっかりしてください、あんなスピードで……情けないです」
唯「ちょっとそこのベンチで休憩~」
梓「まだ全然時間経ってないんですけど」
唯「先が思いやられるね?」
梓「……はぁ」
唯「でもね、私は別に乗り物にのらなくてもあずにゃんと一緒にいれるだけで嬉しいよ?」
梓「……はいはい」
唯「えー、そこは照れてよー!」
梓「あんまりムード考えずぽんぽんそういうこと言うのやめてくれません?」
唯「申し訳ない! でもね、こう、真面目な空気だと私も恥ずかしいんだよ」
梓「そうなんですか?」
唯「乙女ですから!」
梓「唯先輩が乙女……うーん、なんだかなぁ」 -
- 159 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 20:03:19.22 ID:QTuTl9ba0
-
唯「あ、自販機あるしジュース買ってくる!」
梓「いえ、お茶もってきてますから結構です」
唯「え? 持参?」
梓「え? 水筒ですけど」
唯「いまどき水筒? なんだか珍しいね、あずにゃん」
梓「えっ? あ! いや、違うんです!」
唯「なにが違うの?」
梓「なんか舞い上がってて……つい……」
唯「おでかけで水筒みたのなんてひさしぶりだー」
梓「す、水筒を馬鹿にしないでください!」
唯「おぉ怒った!」
梓「とにかく、はい、これ」
唯「今度はハンカチ?」
梓「敷くんでしょ? どうぞ! 使ってください」
唯「え?」 -
- 160 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 20:10:21.63 ID:QTuTl9ba0
-
梓「わ、私……え?」
唯「なんだかずれてるねあずにゃんって」
梓「ずれてるんですか?」
唯「いやいや、品も趣もあっていいと思うよ!」
梓「そうですよね! あはは……」
唯「とりあえずあずにゃんの座るトコに敷いてあげる」
梓「えっと……ありがとうございます」
唯「ごめんねー私もハンカチもってくるつもりだったんだけど」
梓「これからは憂任せにしないでちゃんと自分で持ち物用意する癖つけてくださいよ」
唯「はーい」
梓「さ、お茶どうぞ」
唯「んぐんぐ、あずにゃんちのお茶の味だー!」
梓「当たり前です」 -
- 165 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 20:31:21.07 ID:QTuTl9ba0
-
唯「おいしーね?」
梓「そうでしょうか?」
唯「飲み慣れたものでもなんだかこういう所で飲むと一層おいしく感じるよ」
梓「私も飲んでいいですか?」
唯「ほい」
梓「んぐんぐ、朝から何も飲んでなかったのでおいしいです」
唯「はい関節キッスー! やーい!!」
梓「いえ違うとこで飲みました。残念でしたね」
唯「えぇ~!? つまんなーい!」
梓「少し休んだら次いきましょうね?」
唯「つめたい子!」
梓「普通です。最近の私はちょっと甘かっただけなんです。」
唯「優しいあずにゃんがいいよー」
梓「……こんな私は嫌いですか?」
唯「えっと……好き!」 -
- 166 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 20:36:21.58 ID:QTuTl9ba0
-
梓「私も甘えんぼな唯先輩はわりと好きです」
唯「わりと!?」
梓「さて、いきましょうか。もう酔いは醒めましたよね?」
唯「ひどいあずにゃん……これは帰ったらツンツンの刑だね」
梓「私そんなツンツンしてますかね」
唯「無自覚ツンツンだなんて……逆にいいね!」
梓「ハァ」
唯「よっこらせっと、さぁて何処から攻めようか。ふれあいゾーン?」
梓「それもいいですけど、私としては園内をぶらぶらしたいです」
唯「あー思い出探しねー」
梓「出会った場所だけはどうしても……」
唯「うん……わかった」
梓「ごめんなさい変なことに付きあわせて」
唯「いえ、どこまでもご一緒します姫」
梓「ふふ、なんですかそれ」 -
- 168 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 20:43:11.09 ID:QTuTl9ba0
-
……
律「おーい唯、こっちー!」
唯「りっちゃーんおまたせ!」
澪「遅いぞ!」
梓「すいません唯先輩が道間違えて」
唯「えぇ!? 私のせいじゃないよー、あずにゃんが自身満々であっちっていうから」
梓「ちがいます! 私はあっちから来ましたっけ?って尋ねただけです」
澪「道案内でてるだろ……」
紬「それより、午前中はたくさん回れた?」
唯「うーんまぁまぁかな。ほとんどぶらぶらしてたから」
澪「こっちはどこも結構並んでてさ、律が駄々こねて大変だったよ」
律「空いてたバイキングに乗ろって言ったのに澪のやつがー!!」
紬「私上下さかさまになるのって初めて! 楽しかった!」
梓「なんか充実してたみたいですね」
唯「こっちも楽しかったよ? ね? あずにゃん」 -
- 169 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 20:49:10.57 ID:QTuTl9ba0
-
律「先レストラン入ろうぜぃ!」
唯「私おなかぺこぺこー」
梓「澪先輩なにか怖いの乗りました?」
澪「う、うん……小さいほうのジェットコースター」
梓「あ、それ私たちも乗りました」
律「あんなの絶叫マシーンじゃなーい!」
唯「そうだー! なんだーあのやる気のない速度はー!」
梓「唯先輩半べそでしたよね?」
唯「ちょっとあれは目にゴミがね……」
梓「……」
紬「私午後からは大きい方のりたーい!」
澪「ムリムリ無理! あれ、だって足宙ぶらりん」
律「じゃー澪だけ留守番してればいいじゃん? あたしらだけで楽しんでくるからー」
澪「うぅ……」
律「一人下のベンチでお留守番。あー悲しい。知らない人に絡まれたらどうしましょう」 -
- 170 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 20:55:49.02 ID:QTuTl9ba0
-
澪「……ひどい」
唯「なんやかんやで乗ってしまう澪ちゃんでした!」
澪「絶対のらないからな!」
梓「唯先輩はのりますよね?」
唯「え?」
梓「乗らないんですか?」
唯「……」
梓「……乗りましょうよ」
唯「あずにゃん先輩がそういうなら」
律「あれ、唯ってこういうの苦手だっけ?」
梓「意外とこの人ビビリなんですよ」
唯「……」
梓「基本いくじなしですしね? シールの時とか」
唯「うえーんあずにゃんがいじめるよー」
澪「よしよし、恐怖は分かち合おう」 -
- 173 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 21:06:17.84 ID:QTuTl9ba0
-
紬「席あいたみたい」
律「よーしあたし琴吹ランド名物のハンバーグにしよーっと!」
唯「私ムギちゃんランド名物のナポリタン!」
紬「そんな名前じゃないけど……ふふ」
梓「午後はまた別れて行動ですか?」
澪「それでいいかも。梓も唯と二人っきりがいいだろ?」
梓「それはそうですけど、なんか疲れるんですよ……振り回されっぱなしというか」
澪「苦労するだろうけど、まぁ惚れた弱みだし頑張れ」
梓「惚れ……うっ、違いますって……そんな」
律「なにが違うんだよぉ! あんなに涙ながして喜んでたくせに」
唯「えっあずにゃん私のこと嫌いなの? 好きって言ってくれたじゃん!」
澪「梓」
紬「梓ちゃん!」
梓「……なんですかこれ、圧力ですか」
唯「えへ~あずにゃんが困ってるとついね~」 -
- 174 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 21:14:03.22 ID:QTuTl9ba0
-
梓「見ててください。いつか仕返ししますから」
唯「ツンツンで決着つける?」
澪「ひっ、あれはもう」
紬「結構です……」ブルブル
律「注文とるぞー」
……
唯「さてと、お腹いっぱい」
梓「律先輩たち元気ですねー」
唯「食べてすぐジェットコースター行くなんて気がしれないよ」
梓「あれ、案外まともなこと言いますね」
唯「あずにゃんの前でこれ以上醜態を晒すわけにはいかないからね!」
梓「お願いですからリバースだけはやめてくださいね……」
唯「一応トイレの場所かくにんしとかないと……」
梓「やめてくださいホントに!」 -
- 177 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 21:20:02.16 ID:QTuTl9ba0
-
唯「じゃあまずはふれあいコーナー行こうよ」
梓「さっきちょっとだけ行ったじゃないですか」
唯「チラっと見ただけじゃん。ふれあいたいよ」
梓「んーちょっとだけないいいですよ」
唯「あの時のおっきいハムスターいるかなぁ」
梓「いるわけないでしょ……とっくに……」
唯「それ、なんだか寂しいね」
梓「わかってましたけどね。やっぱり思い出って美しいものです」
唯「鮮明じゃないけど、綺麗に保存されてるよね」
梓「ムギ先輩には悪いですけど、なんだかんだ言ってここはもはや別物です」
唯「うん。なんかピンとくる場所もないよね」
梓「月日が流れたんですから当然ですけど……」
唯「噴水……見たような」
梓「噴水ですか……ありましたっけ?」
唯「うーん地図みてみようよ」 -
- 178 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 21:27:50.04 ID:QTuTl9ba0
-
梓「あ、たぶんこれですね」
唯「こんな真ん中だったっけなー」
梓「わかりません、とりあえず行ってみます?」
唯「ちょっとココからは遠いかも」
梓「じゃあ噴水行くついでにコレとコレまわりましょう」
唯「あー水がザップーンってやつね! 濡れ濡れのあずにゃん見れるかな?」
梓「濡れるんですかコレ?」
唯「しらない! 行こう行こう!」
梓「濡れるの嫌ですけど……」
唯「濡れたらお姉さんが拭いてあげる!」
梓「……わかりました」
唯「…………」
唯「ねぇあずにゃん、あんまり楽しくない?」
梓「え? いえっそんなことは」
唯「……そう」 -
- 180 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 21:37:34.21 ID:QTuTl9ba0
-
梓「なんていうか、拍子抜けなだけです」
唯「拍子抜け? うん、そうかもね」
梓「もっとたくさんいろんなコト思い出せると、そう思ってました」
唯「うんうん」
梓「もっと果てしなく広かったような気もしますし」
唯「だね」
梓「あ、でもがっかりとは決していいません。いいとこです、賑やかですし」
梓「でも……私」
ギュ
梓「えっ?」
唯「焦らなくていいよ。これからたくさんたくさん思い出が生まれるから」
梓「唯先輩……」
唯「いいんだよ、色あせてしまっても。だって、きっとそのために出会ったんだよ」
梓「あっ……」
唯「私たちは大丈夫。一緒にいる限り、消えてしまうことはないから」 -
- 182 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 21:45:53.61 ID:QTuTl9ba0
-
梓「……そう、ですね」
唯「だから目一杯たのしもう?」
唯「いつかうやむやな記憶になってしまっても、楽しかったことだけは思い出せるように」
唯「ふたりで笑って懐かしめるように……」
梓「はい……」
唯「ほら、行こっ! まだまだたくさんのアトラクションが私たちをまってるよ!」
梓「はい! 私、たくさん楽しんで帰ります! 唯先輩といーっぱい素敵な思い出つくります!」
唯「そうだよ! 私もあずにゃんと一緒に楽しみたい!」
梓「はい! だから、離してくださいいい加減恥ずかしいです」
唯「え"ぇ~~!?」
梓「すいません人目は結構きにするタイプなんで……」
唯「そんな~」
梓「抱きしめるのはまた……あとでお願いします」
唯「あずにゃん……うん! またいっぱい抱きしめてあげる」
梓「ほどほどで」 -
- 185 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 21:52:46.55 ID:QTuTl9ba0
-
……
唯「あずにゃんさん……」
梓「唯先輩……」
唯「どきどきするね……」
梓「私、泣いてませんか?」
唯「無理、顔みる余裕ない」
梓「あぁ、もう目前に。秒読み開始です」
唯「大丈夫。何があってもいっしょだよ」
梓「……はい、だからしっかり前のレバーもってください」
唯「いやああああ助けてえええ!! あずにゃん私もう帰るー!!」
梓「勝手に帰ればいいじゃなあああああああああっ!!」
ガコンガコン ゴオオオオ
律「ぷぷーアイツら叫びすぎー」
紬「まさか二人とおんなじタイミングでコレに乗るなんてね」
澪「 」 -
- 187 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 21:58:29.99 ID:QTuTl9ba0
-
律「んでなんで気絶するくせに乗るんだよぉ!」
澪「 」
紬「失禁してないだけマシかも……」
律「それシャレになんねぇ」
唯「よっこらせ、あー怖かった」
梓「もう、唯先輩怖がりすぎですよ」
唯「あずにゃんだって叫んでたじゃん」
梓「あれはー……ノリです」
唯「ほんとー?」
梓「あ、律先輩たち!」
律「よーっす、たまたまお前らの後ろに乗り合わせてた」
紬「えーん怖かったー!」
梓「全然そうは見えませんけど!」
唯「澪ちゃんは……?」 -
- 190 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 22:06:10.68 ID:QTuTl9ba0
-
澪「 」
律「おい澪」ユッサユッサ
澪「あ、律!」
唯「すごーい! 澪ちゃんなんだかんだで乗れたんだね!」
律「気絶ですんで良かった」
澪「そ、そうだな」
梓「いやいや、気絶とか普通に危なすぎるでしょ」
澪「気絶じゃない! 外界との遮断だ! 怖いものは自動でシャットアウト!」
律「便利な能力だなー」
紬「唯ちゃんたちはどうだった?」
唯「あずにゃんのツインテールが結構邪魔くさかったよ!」
梓「そんなこといわないでください!」
澪「あぁ……すっごい髪の毛乱れてる……」
律「よーし次いくぞ次ー!」
紬「おー!」 -
- 191 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 22:11:46.26 ID:QTuTl9ba0
-
唯「私たちはどうする?」
梓「また少し疲れたんで、なにかゆっくりできる乗り物ないですかね」
唯「んーあるにはあるけど」
律「じゃあなー! まった後で-!」
澪「おい、今日どんだけ走るんだ!」
紬「うふふふー帰りのバスは5時だから忘れないでねー」
梓「で、何があるんですか?」
梓「コーヒーカップとか? あ、スワンボートもありましたね」
唯「違う違う、あれだよ」スッ
梓「あれって。あぁ、観覧車ですか……観覧車」
唯「……」
梓「いいんじゃないですか?」
唯「でしょ?」
梓「あ、でも……」 -
- 193 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 22:21:20.81 ID:QTuTl9ba0
-
唯「ねぇあずにゃん。デートで、ふたりきりで観覧車といったらさ……」
梓「で、ですよね。もはや定番の……あれを」
唯「てっぺんまで上がったら? だよね」
梓「そ、そうなります……ね」
唯「じゃあ乗る?」
梓「乗ったら、唯先輩と……するってことですよね」
唯「……うん」
梓「……乗ります」
唯「うん! 私も乗りたい」
梓「別に唯先輩としたいとかそういうんじゃなくてですね」
唯「うんうん、わかってるわかってる」
梓「休憩には、ちょうどいいかなって」
唯「そうだねーあずにゃんの言うとおり!」
梓「ばかにしてません!?」
唯「べっつにぃ~」 -
- 195 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 22:27:47.00 ID:QTuTl9ba0
-
梓「とりあえず向かいましょう」
唯「……やっとだ」ボソ
梓「え?」
唯「んーん! なんでもない! いこっ!」
……
唯「徐々にあがってきたねー」
梓「まだ半分ものぼってませんけど、結構高いですね」
唯「怖い?」
梓「いえ」
唯「あ、ほら向こう、さっき見た噴水広場!」
梓「やっぱり何も思い出しませんでした?」
唯「残念ながらねー」
梓「あれ、噴水が……見てください唯先輩!」
唯「おぉ!?」 -
- 197 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 22:34:52.15 ID:QTuTl9ba0
-
梓「いっぱい吹き上がってて綺麗ですねー……あっ」
唯「あずにゃん……やっぱり噴水だよ」
梓「はい、なんとなくそんなような!」
唯「絶対噴水だよ! 私たち! あそこで出会った!」
梓「わかるんですか!」
唯「3時ぴったりになったら、ほら、あそこ12箇所からピューっと噴き出すの!」
梓「えぇ、見えてます」
唯「そっか、だからわからなかったんだ」
梓「私も思い出しました」
唯「うん、あずにゃんにきれーだねぇーって」
梓「言ってくれましたね」
唯「あの時、どうやって泣きやますか必死だったんだー」
梓「それはどうもご迷惑おかけしました……」
唯「噴水がタイミング良かったから、あずにゃん喜んで笑ってくれて……」
梓「はい。ほんとに、綺麗でした」 -
- 200 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 22:40:12.46 ID:QTuTl9ba0
-
唯「あ、止まっちゃった……」
梓「唯先輩」
唯「なぁに?」
梓「鮮明でした、思い出」
唯「そう? えへへ、良かった良かった」
梓「できれば間近でみたかったですけど」
唯「それは仕方ないねー」
梓「そ、そういえば」
唯「ん?」
梓「あ、あと何分くらいでてっぺんですかね」
唯「あずにゃんったらやらしーの! カウントダウンしてるなんて」
梓「うっ」
唯「そんなに楽しみなんだ? てっぺんの……えへへ」
梓「ち、ちがいます! 心の準備をですね」 -
- 203 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 22:45:38.44 ID:QTuTl9ba0
-
唯「ふーん、じゃああと3分くらい? 確か一周15分くらいって書いてたよね」
梓「3分……3分後には私……あぁっ」
唯「まだしてもいないのに顔真っ赤だよ?」
梓「ゆ、唯先輩こそ! 真っ赤です」
唯「う、うわー人が豆粒みたいだよー……」
梓「ごまかさないでください!」
唯「あとニ分」
梓「!」ドキッ -
- 204 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 22:48:59.37 ID:QTuTl9ba0
-
律「さぁーて唯と梓が乗ってるゴンドラはどれかなー」
澪「や、やめろぉ……のぞき見なんて」
律「あーそっかぁ! いまごろムチュチューな展開かもしれませんしねー!」
澪「うっ、だからやめろって……」
律「あれか? それともあっちかー? おおーう、上のほうはもうよく見えないな」
紬「たぶんあの水色のゴンドラじゃないかしら」
律「え? あの一番上の?」
澪「良く見えない……」
律「なんだよー澪も興味しんしんじゃん!」
澪「……唯、梓」 -
- 205 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 22:52:44.36 ID:QTuTl9ba0
-
唯「ねぇあずにゃん」
梓「はい……」
唯「もうてっぺんだよ」
梓「そうですね……」
唯「いい眺め。ほんとに世界に私たち二人だけしかいないみたい」
梓「はい」
唯「空に浮かんでるよ」
梓「唯先輩……」
唯「おいで?」 -
- 207 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 22:55:05.55 ID:QTuTl9ba0
-
梓「はい、あの……目、つぶっていいですか?」
唯「うん。いいよ」
梓「……大好きです」
唯「言葉はもういらないよ」
梓「んっ……――――
――――――
――――
―― -
- 210 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 23:00:48.60 ID:QTuTl9ba0
-
唯「……」
梓「……」
唯「あっというまだったねー」
梓「そんなもんじゃないですか?」
唯「さて、私のファーストキッスはいかがだったでしょうか」
梓「……そうですね」
唯「……どきどき、わくわく」
梓「短くてよくわからなかったので」
唯「えぇ!?」
梓「だから、もう一周……しませんか……?」
唯「……おぉ!?」
梓「あっ、や、やっぱいいです! 下着いたらすぐ降りましょう」
唯「ノーノー! 喜んでもう一周お供いたします!」
梓「うっ」
唯「でもさーそれってさ、もっかいてっぺんついたらさー」 -
- 211 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 23:05:17.19 ID:QTuTl9ba0
-
梓「……」
唯「また、していいってことでしょ?」
梓「あぅ……はい」
唯「んーということはあずにゃんと二回目のちゅーするまであと10分ってとこかー」
梓「もうっ! そういうのやめてください!」
唯「てかてっぺん以外じゃダメ?」
梓「だ、ダメです!」
唯「どうしてー?」
梓「だって……一番上じゃないと、見えちゃうじゃないですか!」
唯「あ、そっかそっか! ごめんね。あずにゃん恥ずかしがり屋さんだもんね」
梓「唯先輩も……意外とウブですよ」
唯「でも先輩ですからー! こういうときは頑張ってリードしなくちゃ!」
梓「それは、ありがとうございます……」 -
- 212 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 23:10:29.02 ID:QTuTl9ba0
-
唯「えへへー次のデートはどこにしよっかー」
梓「もう次のこと考えてるんですか?」
唯「うん! 毎日でもしたいよー! だってデートだよー?」
梓「じゃあ次は……バス無しでいけるとこにしましょう」
唯「りょ、了解です!」
……
律「で、こんな時間までずっと二人でグルグルしてたってのかー!!」
澪「いったい何周したんだ……」
紬「あらあらあらあら」
梓「すいません……」
唯「だってあずにゃんが何度もふがぁもがっ!」
律「んぁ?」
梓「なんでもありません! ほんと!」 -
- 214 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 23:14:32.79 ID:QTuTl9ba0
-
唯「ふがぁ、もう! なにすんの!」
梓「何いいだすんですか! バカですか!」
唯「にゃにぃ~?」
澪「あの、もう帰るけど唯はバス大丈夫か?」
唯「あ、それは大丈夫大丈夫! 帰りは寝るから」
澪「そっか」
唯「あずにゃんの膝でね!」
梓「しりません!」
唯「ツンツン!」
梓「ひゃあっ! つんつんはダメです!」
唯「ツンツンツン! ほら乗るよーちゃんと枕になってねー」
梓「うぅ、私だって疲れてるんですから……」
唯「そっか、じゃあ一緒に寝よ!」
梓「それなら……いいですけど」
律「くぁ~、今朝とは見違えるほどおアツくなってますなー」 -
- 215 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 23:19:16.16 ID:QTuTl9ba0
-
澪「なぁ、こんなこと聞いていいのかわからないけど」
唯「なんだい澪ちゃん!」
澪「観覧車で……その、済ませたのかなって……」
梓「!」ボン
唯「うん! えっとねー何回だっけ」
梓「なぁー! 言わないって約束したじゃないですか!!」
紬「あら、素敵なことじゃない」
澪「そ、そうか……したんだ……何回も……」
律「なんで澪が赤くなってるんだよー」
澪「だってぇ……」
梓「もう、唯先輩はおとなしく寝ててください」
唯「うーい、よっこらせっと」ゴロン
梓「……やっぱり膝なんですね。結局私寝れないじゃないですか」
唯「あずにゃんのお膝きもちー」
梓「……」 -
- 218 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 23:28:03.66 ID:QTuTl9ba0
-
唯「ねぇあずにゃん」
梓「はい」
唯「なんだか人生の意味がわかった気がするよ」
梓「はい?」
唯「私ね、きっとあずにゃんに出会うためにあの日迷子になったんだー」
梓「……」
唯「運命だよね?」
梓「そう、かもしれませんね」
唯「えへへーあずにゃんもそう? 私に見つけてもらうために迷子になったの?」
梓「……えぇ。そうですよきっと」
唯「そっかぁ。嬉しいな」
梓「このまま唯先輩とずっとずっと一緒にいれたらいいですね」
唯「うんどんなときでもずっと横にいるからね」
梓「はい。約束しましたよ」
唯「あ、もう眠たいや……今日は疲れたな」 -
- 220 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 23:31:56.52 ID:QTuTl9ba0
-
梓「いろいろありましたから」
唯「うーっん……あずにゃん」
梓「はい?」
唯「手握ってー」
梓「はい」
ギュ
唯「着くころにはあずにゃん分、充電おわってるといいなー……」
唯「……」
唯「zzz」
梓「おやすみなさい、唯先輩」
お し ま い -
- 222 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 23:34:10.37 ID:4vNYrzpw0
-
おっと完結か?
乙。わざわざ続けてくれてサンクス
- 223 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 23:34:28.21 ID:2dTuoJid0
-
乙でした~!!
たっぷり楽しませてもらったよ -
- 231 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/20(木) 23:51:14.77 ID:XNlM+gtJ0
-
乙です
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2011.01.17 Mon
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- 1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /16(日) 03:03:03.51 ID:b4FDC+Zc0
-
梓「……どうしよう」
梓「外側から鍵かけられて開けられない……」
梓「ついうとうとしちゃって、寝たのが間違いだったなぁ……」
梓「放課後だから誰もいないし……」
梓「……軽音部にも行けないなぁ……」
梓「! あ、そうだ、携帯!」
梓「鞄の中にあるはず………………、ない」
梓「ああ……家に忘れてきたんだった」 -
- 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /16(日) 03:03:50.32 ID:b4FDC+Zc0
-
梓「……誰か来るまで待ってるしかないなぁ」
梓「……………………」
梓「……………………」
梓「…………誰も来ない」
梓「……………………」
ガララッ
梓「あ! 誰か来た!」 -
- 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /16(日) 03:05:46.01 ID:b4FDC+Zc0
-
女子A「それで何? 相談って」
女子B「…………あの、実は」
梓「………………あの、すいません!」
女子A「何なのよ。早く言ってくれない?」
梓(聞こえてないのかなぁ…………)
女子B「…………私、妊娠しちゃって……」
女子A「嘘!?」
梓(声かけづらくなってきた……) -
- 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /16(日) 03:06:40.91 ID:b4FDC+Zc0
-
女子B「…………本当。もう、一月半行ってるって」
女子A「……でも、あんた彼氏なんかいたっけ?」
女子B「…………ごめんね。隠してて」
梓(………………あー、心底どうでもいい)
梓(でも、シリアスな空気になってるし、関わりたくないし…………)
梓(…………まぁいいや。他の人に助けを頼もう) -
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /16(日) 03:07:25.34 ID:b4FDC+Zc0
-
五分後……
女子B「ありがとう…………私、少し元気が出たよ」
女子A「そう……よかったわ」
女子B「私、頑張ってお母さん説得するよ」
女子A「うん、きっと、お母さんもあなたの強い意志を見せればわかってくれるはずよ」
梓(…………ああ、やっと終わった)
梓(…………足音が遠ざかって行く……教室を出て行った、かな?)
梓(…………それにしても、暇だ…………)
梓(………………唯先輩たち、心配してるかな?)
梓(…………早くここから出て軽音部に行かないと…………) -
- 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /16(日) 03:08:13.62 ID:b4FDC+Zc0
-
梓(……あれ、今日は確か金曜日…………)
梓(…………明日からは休日。と、いうことは…………?)
梓(…………今日出ないとヤバい! あー! さっきの人たちに出してもらうんだった!)
梓(…………いや、後悔してももう遅い……。次来た人に開けてもらおう)
女子C「ほら、早く来てよ!」
女子D「あ、先輩、そんなに強く引っ張らないでください……」
梓(…………誰か、来た?) -
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /16(日) 03:09:00.61 ID:b4FDC+Zc0
-
女子D「…………あの、何ですか? 話って」
女子C「…………あのさ、あんたに伝えとこうと思ってね」
女子D「……はい」
梓(う、また声かけづらい雰囲気に…………)
梓(構うもんか! 早くここを出なきゃ!)
女子C「わたし、あんたの彼氏と寝たから」
女子D「………………はい?」
梓「あの、出して下s 女子C「だからぁ! あんたの彼氏寝取ったから!」 -
- 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /16(日) 03:09:47.00 ID:b4FDC+Zc0
-
女子D「………………何言ってるんですか? 先輩」
女子C「あんたセックス下手なんだって? 言ってたよ、あいつ」
女子D「…………はぁ?」
女子C「あいつさ、あんたが鬱陶しくてたまらないんだって。あんたに別れてほしいって言ってるよ。いつもね」
女子D「…………ちょっと、何を言ってるか分かりませんね」
梓「……あの! ここのカギを開けt 女子C「とにかく! あんたはあいつと別れろって言ってるんだよ!」
女子D「………………冗談でしょう?」
女子C「冗談なもんか。私たちはもう肉体関係もあるんだ。証拠だってあるよ? ほら。私とあいつのハメ撮り画像」
女子D「……………………そん、な」 -
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /16(日) 03:10:39.73 ID:b4FDC+Zc0
-
女子C「あいつとはさ、私、体の相性も合うみたいなんだよね。いやー、いい男だわ顔も身体も」
女子D「………………何がしたいんです? 先輩」
女子C「あんたの彼氏を奪っただけだよ。それ以外の何物でもないね」
梓「あの、話を聞いt 女子D「ふざけるなぁっ!!」
女子C「おっと、逆ギレ? いいから早く別れてよ。正式に付き合えないじゃん」
女子D「…………何で、何で?」
女子C「ま、言いたいことは伝えたから。数日中に別れてよね」
梓(…………あ、一人教室を出て行ったのかな? よし、今なら開けてもらえる――)
梓「あの、すいません、ここをあk 女子D「――っ、あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」 -
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /16(日) 03:11:25.74 ID:b4FDC+Zc0
-
女子D「…………赦さない、あのビッチ」
梓「あの、ここを開けて!」
梓「………………」
梓「もう、どっか行っちゃったかな…………」
梓「………………また開けてもらえなかった…………」
梓「…………次こそ、ここから出よう」
梓「大丈夫、まだ出る機会はある……」 -
- 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /16(日) 03:12:27.22 ID:b4FDC+Zc0
-
数十分後……
?「おーい、梓―。どこだ?」
梓(…………私を呼ぶ声?)
prrrr prrrr
?「あ、律? そっちの方にはいたか?」
?「……そっか、一階にはいない、か」
?「…………まったく、困ったもんだよな。休むかどうかも言わないで部活に来ないなんて」
?「でもまぁ、学校には来てるらしいから、まだ校舎のどこかにいるんだろうけどさ」
?「サボり? ないない。梓が一言も無しにサボるなんてありえないだろ」
?「…………ああ、わかってるって。見つけたら連絡するから」
梓(携帯か何かで話してる?) -
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /16(日) 03:13:21.39 ID:b4FDC+Zc0
-
?「じゃあ、私は二年生の教室をしらみつぶしに探すよ。ああ、うん。大丈夫だって」
梓(……あ、この声! 澪先輩!)
澪「…………さて、まずは二年一組から、か」
梓(――来る! ここから出れる!)
澪「梓、いるか?」
梓(来たあああああああああああああああああああああああああ!!!)
梓「澪先輩! ここです! ここにいます!」
澪「!」
澪「そ、そ、そ、そ、掃除用具箱が…………喋った!?」 -
- 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /16(日) 03:14:16.37 ID:b4FDC+Zc0
-
梓「! 違います! 澪先輩! 私です! 梓です!」
澪「あああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!喋ってるううううううううううううううう!!!!」
梓「私が喋ってるんです!!」
澪「ミエナイキコエナイミエナイキコエナイミエナイキコエナイ………………」
梓(………………教室を出て行く音……ああ、救いの女神は私を見逃した…………)
梓(いや、澪先輩が来たってことは、唯先輩たちも来るはず!)
梓(落ち着け、唯先輩たちが来てくれる……) -
- 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /16(日) 03:15:05.76 ID:b4FDC+Zc0
-
数分後
唯「あずにゃんはどこかな~」
梓(来た! 今度こそ出れる!)
唯「この教室にはいないかな?」
梓(ドアを開く音…………よし、チャンス!)
梓「先輩! 私はここに 憂「あ、お姉ちゃんどうしたの?」
唯「あ、憂。実はあずにゃんを探してるんだよ。どこにいるかしらない?」
梓「だからここにいm 憂「梓ちゃんは見てないけど……。もしかしたら、お姉ちゃん達とすれ違ってるんじゃない? もう部室にいたりして」 -
- 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /16(日) 03:15:51.68 ID:b4FDC+Zc0
-
唯「あ、そっか! そうかもね!」
憂「お姉ちゃん、どれくらい探してるの?」
唯「うーんと、二十分くらい前から探してるよ」
憂「それだけ探しても見つからないってことは、間違いなく部室にいるんだと思うよ」
梓「行かないで! 唯先輩! 待って!」
唯「…………あれ? 何か声聞こえない?」
憂「え、嘘?」
唯「ほら、この教室から」 -
- 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /16(日) 03:16:37.88 ID:b4FDC+Zc0
-
憂「えっ、……って、ここ私たちの教室」
梓「先輩! 唯先輩!」
唯「ほら、聞こえるよ」
澪「唯! その教室には行かない方がいい!」
唯「澪ちゃん!?」
澪「その教室にはお化けがいるんだ! …………ああ、思い出すだけで恐ろしい」
唯「…………ほ、本当? お化け?」
梓「お化けじゃないです! 梓です!」 -
- 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /16(日) 03:17:32.41 ID:b4FDC+Zc0
-
唯「実は…………私、さっきから変な声聞こえるんだよ」
澪「それは…………間違いなく幽霊だ! 逃げるぞ唯! いつ襲ってくるかわからん!」
唯「う、うん!」
梓(………………あぁ、また逃した)
梓(澪先輩と唯先輩はもう助けには来ないかな? …………と、なると律先輩かムギ先輩しか)
カツ・・・カツ・・・カツ・・・カツ
梓(…………足音?)
梓(…………律先輩? それとも……)
紬「梓ちゃん? どこにいるの?」
梓(――ムギ先輩!) -
- 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /16(日) 03:18:17.56 ID:b4FDC+Zc0
-
紬「この教室には……」
梓「ムギ先輩! ここです! ここ!」
紬「…………空耳かしら?」
梓「空耳じゃありません! 梓です!」
紬「…………変ね? 掃除用具箱が喋ってるような…………」
梓「私が喋ってるんです!」
紬「…………ああ、疲れてるのね。私」
梓「ムギ先ぱ………………い……………………」
梓(……………………ムギ先輩の足音が、どんどん離れていく…………) -
- 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /16(日) 03:19:32.67 ID:b4FDC+Zc0
-
梓(…………頼みの綱は、律先輩しか…………)
数分後
律「梓―、いるかー?」
梓(! …………律先輩の声。だんだん近づいてきてる…………。律先輩を逃したら、土日をここで過ごす羽目になる!)
律「うーん、二年生の教室は澪が探したって言ってたしな。探しても無駄か」
梓(!? え、ちょっと、まさか)
律「こんだけ探してもいないってことは帰ったんだな、きっと。ったく、梓の奴、今度来たらおしおきものだ」
梓(ちょ、ちょっと待って!)
梓「律先輩! 私は! 私はここです!」
律「…………気のせいか? 一瞬名前を呼ばれた気が…………。ま、気のせいだな。部室に戻ろうっと」
梓「律先輩いいい!!」 -
- 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /16(日) 03:20:17.81 ID:b4FDC+Zc0
-
梓「………………ああ、だめだ。聞こえてない」
梓「サボっちゃったことになるなぁ…………ここから出たら謝ろう」
梓「それにしても………………まさか、嘘でしょ? 土日をここで過ごすなんて」
梓(………………他に頼れる人は………………)
梓(…………純? そうだ、まだ純がいた!)
一時間後
梓(………………誰も来ない…………)
梓(純も来ないだろうなあ………………、ああ、もう頼れる人間がいない…………) -
- 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /16(日) 03:21:30.86 ID:b4FDC+Zc0
-
梓(…………埃って美味しいのかな?)
梓(食べ物も飲み物もない………………どうやって土日を過ごそう)
梓(いや、一日二日飲まず食わずでも死なないってテレビでやってたから……うん。大丈夫かな)
梓(………………うん。大丈夫)
梓(……………………寂しいなぁ)
梓(……………………お母さんとかも心配するだろうなぁ…………どうしよう)
梓(………………出たい)
梓(………………ここから出たい!) -
- 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /16(日) 03:22:26.94 ID:b4FDC+Zc0
-
梓「誰か! 誰かいませんか! ここから出してくれませんか!」
梓「廊下通ってる人とか! 誰でもいいんで! 出して下さい!」
梓「……………………」
梓「……………………誰もいないや」
梓「……………………いやだ」
梓「埃は食べたくない! 出して! 誰か!」
梓「誰か……………………外に、だしてください………………」
?「誰か居るの? その中に」
キィ、ガチャ
梓「………………へ?」 -
- 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /16(日) 03:23:22.45 ID:b4FDC+Zc0
-
和「………………そこで何をやっているの?」
梓「………………え、え、え?」
和「『埃は食べたくない!』っていう叫びが聞こえたから来てみたら…………何しているの?」
梓「あ、あ、開けてくれたんですよね? 和先輩?」
和「? ええ」
梓「あ、ありがとうございます!」
和「…………誰かに苛められてたの? この中に閉じ込められたりとか」
梓「いえ、自業自得です…………ああ、あぁぁあ、助かった……本当にありがとう、ございます」
和「ちょっと梓。泣かないで。唯達は?」
梓「……あ、そうだ! 唯先輩たちに謝ってこないと!」
和「? よくわからないけど、掃除用具箱の中には今後入らないようにしてね」 -
- 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /16(日) 03:24:07.95 ID:b4FDC+Zc0
-
音楽室
梓「あの、すみません。遅れました」
律「あー! 梓! どこに行ってたんだ!」
唯「あずにゃん! 心配したんだよ? 保健室とかに行ってたの?」
梓「いえ…………いたずらが失敗してしまっただけです」
澪「まぁ、無事で何よりだよ。梓」
梓「あ、はい。心配をかけて本当にごめんなさい…………」 -
- 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /16(日) 03:24:52.59 ID:b4FDC+Zc0
-
憂「梓ちゃん、純ちゃんのこと知らない?」
梓「あ、憂。いたんだ…………、純? ジャズ研部室じゃないの?」
憂「それが、放課後になって突然行方をくらましたんだよ。ジャズ研部室にもいないし……」
梓「携帯は?」
憂「かけたら、純ちゃんのお母さんが出てきた。家に忘れちゃってるみたい」
梓「ふぅん。…………まぁ、純のことだから心配しなくても大丈夫だと思うよ」
そのころ、女子トイレ内掃除用具箱では……。
純「掃除用具箱に隠れて誰か脅かそうとしたら出られなくなった」 -
終わり -
- 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /16(日) 03:31:23.73 ID:BxMZlgu60
-
乙
- 40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /16(日) 03:43:31.43 ID:/f4JndDWP
-
乙
嫌いじゃなかったよ -
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2011.01.16 Sun
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- 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /15(土) 16:42:37.22 ID:xH6DKXrb0
-
澪「あぁ」
和「律が休みなんて珍しいわね。どうしたのかしら」
唯「りっちゃんのことだから寒いのに裸で寝たんじゃない」
和「いくら律でもそれはないんじゃないかしら」
紬(裸のりっちゃん…)ポワポワ
澪「おーいムギー帰ってこーい」
唯「澪ちゃんは理由知ってるの?」
澪「あぁ。朝メールが来たんだけど、
なんか聡とどっちが寒さに耐えれるかーって勝負したらしく
この寒い中ベランダに5時間くらいいて風邪引いたらしい。
馬鹿だな」
和「…馬鹿ね」
唯「りっちゃんのバーカ」
和「いや、さすがに唯がそれをいうのはどうかと思うわ」 -
- 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /15(土) 16:44:57.29 ID:xH6DKXrb0
-
紬(馬鹿なりっちゃんかわいい…)ポワポワ
和「ムギ?どうしかしたの?」
澪「いつものことだからほっといていいよ」
唯「それじゃあさ!みんなでお見舞いに行かない?馬鹿なりっちゃん喜ぶよ!」
和「唯、律になにか恨みでもあるの?」
澪「そうだな。それじゃ放課後になったら梓も誘ってみんなで行こうか」
唯「行っちゃお行っちゃお行っちゃおー!」
紬(そうだー行っちゃおー!)
- 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /15(土) 16:45:58.04 ID:xH6DKXrb0
-
ほうかご!
梓「律先輩が風邪だなんて珍しいですね」
唯「だよね~。馬鹿は風邪引かないって言うのにね~」
和「…梓ちゃん。唯と律って仲悪いの?」
梓「そんなことあるわけないじゃないですか。どうかしました?」
和「…いえ。気のせいね
それにしても、私が来てもよかったのかしら?
軽音部のみんなの中にいてお邪魔じゃない?」
澪「いやいや、和がお邪魔なわけないだろ
いつも世話になってるんだから。
それに大勢で行ったほうが律も喜ぶだろ」
紬(りっちゃんパジャマ姿かなぁ…)ポワポワ -
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /15(土) 16:47:34.00 ID:xH6DKXrb0
-
梓「和先輩なら大歓迎です!ウェルカムです!どんとこいです!やってやるです!」
和「最後の言葉がひっかかるけどまぁいいわ
それにしても、梓ちゃんなら『律先輩なんてどうでもいいんで練習するです!』
って言うかと思ったわ」
澪「今の梓のマネうますぎじゃないか…?」
梓「私のこと鬼か悪魔と思ってませんか?」
和「唯ったら梓ちゃんの話するときいつもそんな感じだからてっきりそうかと思ったわ」
梓「唯先輩!」
唯「いやだなぁ~冗談に決まってるじゃない~」
和「でも唯ったら私の肩ガッシリ掴んで真剣な眼で
『あずにゃんったら怖いんだよ~!』って言ってたからつい」
梓「ゆ~い~せ~ん~ぱ~い~!」
唯「あずにゃんおこっちゃやん~」アズニャンギュー
梓「にゃっ!唯先輩ったらもう///」
和「ふふっ、仲がよくて羨ましいわね」 -
- 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /15(土) 16:48:41.39 ID:xH6DKXrb0
-
唯「和ちゃんとも仲いいもんー」ノドカチャンギュー
和「寒いから唯カイロも丁度いいわね」
紬(唯ちゃんカイロ暖かそう…)ポワポワ
唯「ムギちゃんギュー」ムギチャンギュー
紬(あぁ!幸せすぎるっ!)ドバドバ
澪「ほら、遊んでないで行くぞ」
唯「澪ちゃんもー」ミオチャンギュー
澪「ほんと唯は暖かいなぁ」
- 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /15(土) 16:53:23.26 ID:xH6DKXrb0
-
りつんち!!
インターホン「ピンポーン」
ドア「ガチャ」
聡「はいー」
澪「よっ聡」
聡「あっ澪姉ちゃん、姉ちゃんのお見舞い来てくれたの?」
澪「あぁ、お前らこんな寒いのに姉弟してなにやってんだよ」
聡「だって姉ちゃんが、負けたほうが皿洗いなっていうから」
- 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /15(土) 16:58:49.50 ID:xH6DKXrb0
-
澪「だからって風邪引くまでやるか
…ってか聡は風邪引いてないんだな」
聡「子供は風の子だからね!」
唯「子供っていうか馬k」モガモガ
和「はいはい、そこまで」
聡「あ、軽音部の皆さんで来てくれたんですね
姉ちゃんも喜びます」
澪「それじゃお邪魔するな」
紬(姉ショタかぁ…私の専門外ね…)ポワポワ
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /15(土) 17:04:12.01 ID:xH6DKXrb0
-
りつのへや!!
ドア「コンコン」
聡「姉ちゃんー軽音部の人たち来てくれたよー」
律「えっ!?ちょ…ちょっと待って…!」
ドア「ガチャ」
澪「律ー大丈夫かー」
唯「あー!りっちゃんのパジャマかわいー!」
律「ちょ…かわいくねーし…///」
和「ピンクの花柄のパジャマね」
紬(っしゃー!俺の時代きたー!!)ボタボタ -
- 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /15(土) 17:11:00.50 ID:xH6DKXrb0
-
聡「そんじゃ姉ちゃん、何か必要なもんあったら言えよー」
唯「りっちゃんかわいー!りっちゃんかわいー!」
律「かわいくねーし…///
だからちょっと待てって言ったのに…」
和「いいじゃない可愛くて。律は女の子なんだから」
律「和も来てくれたのか。ありがとな。可愛いは余計だけど///」
唯「あとりっちゃんのおでこに冷えピタが貼ってあるってよくわかんないけど面白いね」
律「平沢ーーーーーー!!!どういうことだーーーー!!!…ゴホッゴホッ」
澪「ほら、病人なんだから大人しくしてろ」
唯「深い意味はないよ。うん」
紬(冷えピタ姿のりっちゃんかわいい…)ポワポワ -
- 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /15(土) 17:17:28.02 ID:xH6DKXrb0
-
澪「熱はあるのか?」
律「あぁ、でも朝よりかは下がってきたと思う」
和「律がいなかったら教室がさびしくなるから早く治してね」
律「和…」ジーン
唯「りっちゃんが先生に怒られてる姿見ないとやっぱ落ち着かないね!」
律「ひらさわーーーーーー!ゴホッゴホッ」
和「梓ちゃん、この二人はいつもこんな調子なの?」
梓「えぇ。いつもどおりですよ?」
和「そう…仲…いいのよね…?」 -
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /15(土) 17:25:26.65 ID:xH6DKXrb0
-
梓「律先輩ちゃんとご飯食べてます?」
律「あー、今日親朝早くから出てるからカップラーメンくらいかな」
梓「そんなんじゃ早くよくなりませんよ」
律「だって聡は料理できないし、私はそんな元気ないしなぁ」
澪「んじゃ、私たちで作るか」
梓「ですね。律先輩のためにやってやるです!」
和「私も手伝うわ」
紬(私もー!) -
- 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /15(土) 17:29:44.92 ID:xH6DKXrb0
-
律「お前ら…いいやつらだなぁ」ジーン
唯「私もー」
和「いや、唯料理できるの?」
唯「料理は根性!!」
律「やっぱ不安だ…」
澪「んじゃ、台所借りるぞー」
律「あぁ、冷蔵庫の中好きに使ってくれ」
あ!和、ちょっと待って!」
和「?何かしら?」
梓「私たち先何か作ってますねー」
ドア「ガチャ バタン」 -
- 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /15(土) 17:34:33.70 ID:xH6DKXrb0
-
和「どうかしたの?」
律「いや…別に何もないんだけど…」
和「そう?じゃあ私も手伝いに行くわね」
律「だからちょっと待てって!」
和「…ふぅ。そうね。じゃあ私は律の看病でもするわ」
律「ありがと…」
和「まったく。素直に寂しいって言ったらいいのに」
律「…そんなの言えないだろ…キャラじゃないし」
和「部長として部員に弱いところは見せられないってところかしら」
律「うるへー…」
和「ふふっ、律らしい悪態ね」
律「ふんっ」 -
- 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /15(土) 17:47:49.29 ID:xH6DKXrb0
-
和「別に素のままの律でいいと思うわよ」
律「素の私って、今でも十分素だと思うけど」
和「まぁ元気いっぱいでたまにやりすぎで怒られたりするところとかね」
律「やっぱ私そういうキャラかい」
和「でもね。実はすごく女の子らしくて周りの子に気を配れる優しい子だって知ってるわ」
律「…」
和「そして素直で、本当は寂しがりやなところとか。
だからつい澪にもちょっかいだしちゃうのかしらね」
律「なんで和は私のことそんだけ知ってんだよ…」
和「ずっと軽音部を見てたらわかるわよ
律が優しくて寂しがり屋ってのは軽音部全員が知ってるはずよ」
律「…なんか悔しいなぁ」
和「え?」 -
- 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /15(土) 17:52:46.68 ID:xH6DKXrb0
-
律「和は私のことよく知ってるのに…
私は和のこと、あんまり知らない」
和「別にいいのよ」
律「嫌だよ!和はこんなにみんなのことちゃんと見てくれてるのに、
私が和のことを知らないのは嫌だ!」
和「…ふふっ」
律「なにがおかしいんだよ…」
和「律は優しいわね」
律「!…///」
和「律のそういうところ、私は大好きよ」
律「からかうなよ…」
和「あら、本当よ?私は律はもっと素直になったほうがもっと可愛いと思うわよ」
律「うー…かわいく…ねーし…」
和「素直じゃないわね」 -
- 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /15(土) 17:56:39.01 ID:xH6DKXrb0
-
律「…和はだな」
和「うん?」
律「…和は、いっつもクールで、冷静で、生徒会長で、少し冷たそうに見えるけど」
和「うん」
律「でも、本当は、本当はすごく面倒見がよくて、
私が申請書出し忘れたり、部長会議に出なかったときはいつも教えてくれて、
とても優しくて、暖かいんだ」
和「うん」
律「人望もあって、…私とは正反対だ」
和「そんなことないと思うわよ」
律「…」
和「軽音部のみんなからすごく人望があるし、
第一に私が律のこと信頼してるからね」
律「和…」 -
- 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /15(土) 18:09:10.90 ID:xH6DKXrb0
-
和「私と律は正反対なんかじゃない。きっと平行線よ」
律「平行線?私にはわかりにくい例えだな」
和「私だって、律の元気があって、みんなに好かれるところが羨ましいもの
生徒会長やってると全員に好かれるなんて無理だもの。
しっかり注意しないといけないところはしっかりしないといけないから、
私のことを疎ましく思ってる人も少なからずいると思うわ」
律「和のことそう思う人なんているわけないだろ!
いたら私がぶっとばしてやる!」
和「…ふふっ、ありがと。律
まぁでも、律のそういうところは羨ましいし、私は大好きよ」
律「うー///…卑怯だーーー!!」ノドカギュー
和「な…なによ急に」
律「和ばっかり大好き大好きって…私だって和のこと大好きなんだからなー!」
和「…律」 -
- 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /15(土) 18:22:29.00 ID:xH6DKXrb0
-
律「和は優しいし、暖かいし、すごくしっかりしてて、自分に厳しいけど、でも私に優しいし、
あと…えっと…えー…生徒会長だしすごいんだぞー!」
和「ぷっ…何よそれ」
律「うるさーい!生徒会長なんだからすごいんだー!」
和「はいはい。ありがとう」ギュー -
- 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /15(土) 18:25:02.97 ID:xH6DKXrb0
-
ドア「ガチャ」
梓「もー和先輩遅いですよーもうおかゆ作っちゃ…
何やってるんですk」
紬「キマシタワーーーーーーーーーーーーーー!!!」
唯澪律梓和「!?」ビクッ
律和「…」パッ
唯「あららーお二人さんおあついですねー」
律「こ…これはだな!そういうんじゃなくて…えー…
あれだ!病気になったら暖かくしないといけないだろ!だからだ!」
澪「…まぁそのために布団があるっていうツッコミは置いておこうか」
律「…はい」
澪「まぁなんだ。おかゆ作ったから」
律「ありがとうな。みんな」
和「ごめんね、手伝えなくて」 -
- 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /15(土) 18:31:33.00 ID:xH6DKXrb0
-
梓「もー。でも別に大丈夫ですよ、まぁ一番大変だったのが唯先輩の相手でしたけどね」
唯「え~そんなことないよ~」
梓「大アリですよ!おかゆなのにチョコレート入れようとするし、
ジュース入れようとするし、お菓子入れようとするし」
和「それおかゆじゃなくて闇鍋ね」
律「ひらさわーーーーーーーーーーー!」
唯「ヒュ~ヒュ~~♪」
和「唯、口笛できてないわよ」
澪「でもなんかよくなったみたいだな。咳もしてないし」
律「…あっ」
和「ふふっ、よかったじゃない。これで明日にはよくなって…コホッ」
唯律澪梓紬「あっ」 -
- 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01 /15(土) 18:35:46.09 ID:xH6DKXrb0
-
律「…そうだよな。うつしたらよくなるっていうもんな
…ごめん和」
唯「も~りっちゃん~和ちゃんに風邪うつしちゃだめだよ~
ホントりっちゃんは馬鹿だなぁ~」
和「もう何もいわないでおくわ」コホッ
律「ホントごめんな」
和「あら。別にいいわよ」
律「え?」
コソット
和「だって…今度は律がお見舞いに来てくれるんでしょ?」リツノミミモト
律「…うん///
私、もっと和のこと知りたいしな!」
和「えぇ。私もよ」
紬「キキマシタワーーーーーーーーーーーー!」
唯律澪梓和「!」ビクッ
おしまい -
- 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /15(土) 18:36:35.86 ID:xH6DKXrb0
-
以上です
支援してくれたかたありがとうございましたー!
- 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /15(土) 18:37:45.01 ID:Y+17ZsqK0
-
お疲れ様
- 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /15(土) 19:26:46.87 ID:dWvbN5tW0
-
むぎちゃんやっと喋った…おつおつ!
久しぶりに和律読んだ気がする
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| けいおん!!SS
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2011.01.13 Thu
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- 1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 06:28:11.44 ID:7j6ahPr30
-
唯「……『あなた達は今、無人島にふたりきりです』?」
梓「ぼやっと固まってないで、早く続きを読んでもらえませんか。ムギ先輩からの手紙ですよねそれ」
覚えているのは、ムギ先輩のお誘いをありがたく受けて、クルーザーに乗って、みんなで船室に入ったところまで。
最後まで通路に残っていたムギ先輩が笑顔で扉を閉じると、急に眠くなって……目が覚めたら、唯先輩とふたりきりで砂浜の近くの木陰に横たわってた。
うん、自分でもわけがわからない。
唯「う、うん。えーとね……」
私達が今いる場所が、日本のどこかにある、琴吹家所有の無人島ということ。
律先輩と澪先輩も、私達と同じようにふたり組になって、他の島で同じ状況に陥っていること。
数日間サバイバル生活をして、先にギブアップしたタッグが負けという意味不明なゲームが始まっているらしいこと。
最低限必要な道具と一日分の食料、三日分の水が支給されること。
- 2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 06:36:05.02 ID:7j6ahPr30
-
唯「『それじゃみんな、くれぐれもお腹だけは冷やさないように気を付けてね』……だって。ムギちゃん優しいねぇ~」
梓「はあ? 南の島の別荘で特訓合宿しましょうって、ムギ先輩が誘ってくれたはずですよね? サバイバル生活だなんて聞いてませんよ!?」
唯「……あずにゃん、あずにゃん。私達、水着姿だね。まぁムギちゃんが下に着てくるように言ったからなんだけど」
梓「はい……そういえば服は剥かれてますね」
唯「ムギちゃんちのおっきな船に乗った時、メイドさんぽい人が何人もいたから、きっとあの人達の仕業だよ!」
梓「……そう思いたいですし、脱がされてること自体が大問題ですが……じゃなくて、話が全然違うって言いたいんですよ!」
唯「えーっと……あ、あそこ! 行ってみよ、あずにゃん!」
唯先輩は頭をくるりと巡らせて、砂浜の向こうに何かを見付けた様子。
手を握られて、私も仕方なく半分引きずられる形で駆け出した。
っていうか、砂が暑いの平気なんですか唯先輩。
唯「やっぱり! きっとあれ、ムギちゃんの用意したチェックポイントだよ!」
梓「えー……日除けにしか見えませんけど……」
唯「まぁまぁ、何か置いてあるから見るだけ見てみようよ。ご飯用意してくれてるんだよね?」
梓「手紙には『食料』と書いてあったはずですが。期待しない方がいいですよ、絶対」
唯「何だろなー。オリエンテーリングみたいでわくわくしちゃうなー♪」
丸っきり、縁日やら体育祭なんかの運営本部ですが。
謎の箱の他にもテーブルとか色々置いてあるし、まさかここをサバイバル生活の拠点にしろと? -
- 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 06:46:47.06 ID:7j6ahPr30
-
唯「……ねぇ、あずにゃん? この箱は何だと思う?」
梓「はい……貼ってあるラベルの通りなんじゃないですか?」
『食料』『狩り道具』『調理道具』『寝具』『着替え』……と、そんな感じのラベルの貼られたコンテナがいくつも並べてあった。
勿論、私達の他には誰もいないし、快適そうなベッドもお風呂もあるわけがない。
唯「うっ、ううっ……ご馳走は!? ご馳走じゃなくてもいいけど、ご飯どこぉ!?」
梓「あ、唯先輩。ギブアップの時はあのボタン押せばいいみたいですね」
唯「んう? あ、そっか。ギブアップしちゃえば、多分助けに来てくれるよね」
……と。
早速、『緊急』と書かれた自爆ボタンみたいな箱へ駆け寄る唯先輩。
慌てて抱き着いて止めつつ、ムギ先輩の手紙の意味を考えてみる。
唯「やーん! 放してあずにゃん! 私、早く帰って憂のご飯食べてアイス食べて寝るのー!」 -
- 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 06:53:59.68 ID:7j6ahPr30
-
梓「待ってください! さっきの手紙には、律先輩達もふたりになってるって書いてありましたよね!」
唯「うん……でも、それがどうしたの?」
梓「先にギブアップしたら負けということは、勝ったら何かしらのご褒美があるに違いないです!」
唯「……おお、確かに!」
梓「こんなバラエティ番組の企画みたいなサバイバル生活をさせられるんですから、苦労に見合うだけのご褒美が……」
あるに違いないです。
仮に頑張って勝ったとして……何もなかったらやだなぁ。
梓「ご褒美、ないかもしれませんね……やっぱりボタン押してもいいですよ」
唯「ちょ、ちょっと待った! 折角ムギちゃんが私達にサバイバル体験をさせようと準備したのに、いきなりギブアップしたら泣いちゃうかもしんないよ!?」
梓「どの口が言いますか」
唯「うん、じゃ、あずにゃんもれっつサバイバル。まずは装備の確認だね~」
梓「いきなり切り替え早いですね……でも、とりあえず『食料』とやらで腹ごしらえしましょう」
唯「うんっ!」
- 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 07:04:19.96 ID:7j6ahPr30
-
お腹も空いてきてるし、ちょっと不安だけど、スタッフがいないバラエティ番組の撮影だと思えば、うん。
そこかしこにカメラがセットしてありそうだから、その点だけ気を付けてればいいよね。
唯「では! 食料の箱、オープン!」
梓「……カ□リーメイト、ですね」
唯「ひーふーみー……あり? 六箱しかないよ? 一日分には全然足りないよ?」
梓「ひとり一食一箱、それで三日分というわけですか」
唯「どうしようあずにゃん!? カ□リーメイトなんて、おやつで二箱食べちゃうよ!? それに夜食の分も入ってないよ!」
梓「カ□リーメイトをおやつにするってゆーのが気にかかりますけど、あれですね。もっと食べたければ自分で調達しろっていう意味かと」
むしろカ□リーメイトだなんて、手ぬるいんじゃないですか。
どっかの軍用レーションでも入ってるかと思いましたよ。
唯「ううっ……これ食べたらボタン押そうね、あずにゃん……んっ、んぐ、ぷはー」
梓「水っ!? ちょっ、待ってください! 水はカ□リーメイトより貴重なんですから!」
唯「へ? でも、もそもそして食べづらいし、喉渇いてたし。ケチって飲まなかったら、逆に熱中症になって大変だよ?」
梓「……ぐびぐび飲まないように気を付けて欲しいんです。ええと、三日分ってことは、確か人間の一日の必要量が……」
- 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 07:16:16.20 ID:7j6ahPr30
-
私が指折り数えていると、ちゃぁんと隣の箱の中に沢山ペットボトルが用意してあった。
ムギ先輩……手ぬるいんだか厳しいんだか、どっちかに徹してくださいよ。
どうせ用意してくれるんなら、給水タンクみたいな設備をですね。
唯「うー、全然足りないよぉ」
梓「我慢ですよ、我慢。手紙に書いてなかったんでわかりませんが、ご褒美の為に。ご褒美がなかったらキレていいレベルだと思います」
私も食事……とは言えないか。栄養補給、カロリー補給っと。
……確かにもそもそするけど、久しぶりに食べると美味しいかも。
蛇の人が叫ぶ理由もわかるってもんです。
梓「んっ、んく……はぁ。さて、他の箱の中身を改めましょうか、唯先輩」
ご丁寧にも設置されていたゴミ箱にゴミを丸めて放り投げて、次は何をしたいか考えてみる。
……着替え、かな。
梓「こ、これは……」
唯「探検隊だ! 探検隊の服だよ、あずにゃん……あれ、袖が長いね」
梓「私はそっちのが助かりますけど。あとは靴とかシャツとかタオルとか軍手……ま、何であれ清潔な服があってよかったですね」 -
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 07:26:43.84 ID:7j6ahPr30
-
唯「パジャマは?」
梓「なさそうです。あるわけないです。寝る時は水着かシャツを……ああ、寝具っていう箱がありましたっけ」
ぱかっとな。
唯「……毛布と、銀色の……何かなこれ。ぐるぐる巻いてあるけど」
梓「断熱マット、ですかね。あと寝袋ふたつでこの箱は終わりみたいです」
唯「うーん、サバイバルっぽくなってきたねぇ」
梓「サバイバルと呼ぶには条件が甘々ですけどね。まだ『家族でキャンプに来たら食材全部忘れてきちゃった』って雰囲気だと思います」
唯「……今の気分を的確に表現してるね、それ」
梓「はい。先輩達とたっぷり遊ぶいえ練習するのを楽しみにしてたのに……本当にがっかりですよね」
雨や夜露をしのぐ天蓋は用意されている。
太陽や影から察するに、まだ午前中……なのに早くもじりじり暑いってことは、南の島というのは嘘じゃなさそう。
昼間の暑ささえ何とかすれば、夜は特に寒くて凍えることもないんじゃないかな。
唯「他の箱を開けたら、ムギちゃんの本気度がわかるんだね」
梓「そういうことです……さて、と。調理道具は何があるんでしょう」
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 07:37:00.92 ID:7j6ahPr30
-
ぱかっと。
唯「こりは……サバイバルナイフかな? あとまな板? と、小さなお鍋と……おお! お鍋開けたらもっと小さいお鍋とかコップとか出てきたよ!?」
梓「……登山グッズじゃないですか! まな板入れるくらいなら携帯コンロでも入れといてくださいよ!」
唯「ひい!? あ、あずにゃん……私が入れたんじゃないよ、だからそんな怖い顔して怒らないで?」
梓「あっ、いえ、唯先輩に対して怒ったわけじゃないんです。ムギ先輩が意地悪だなと思って、つい……」
怯えた風の唯先輩を慌ててなだめながら、箱の中を漁る。
残っているのは、本。
『野草図鑑』と、『お魚図鑑』に『明日の夕食』……はあ。
薄々そうなんじゃないかと思ってたけど、サバイバルを続けるなら『狩り道具』って物騒な名前の箱を開けるしかないんだ。
梓「本が調理道具に分類してあるのってどうなんですかね」
唯「あ、でもほら。付箋が……毒のある魚? こっちは……毒草だって」
梓「ムギ先輩は優しいですねぇ、ほんと」
唯「そうだねぇ、私達サバイバラーにとって毒は大敵だもんね」
梓「サバイバー、です」
唯「あうち」 -
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 07:45:46.69 ID:7j6ahPr30
-
何だかんだ言って、唯先輩も割と乗り気になってきてるのかな?
ま、いつでもリタイア出来るみたいだし、普通のキャンプ気分で楽しんでみるのもいいかも。
……さてさて、いよいよ『狩り道具』の箱ですよ。
の前に、蓋の上にメモが貼ってある。
梓「……『テーブルの裏を見てね』?」
唯「……おおう、銛だ! お魚をずばっと刺すやつ! 使い方知ってるよ、このゴムを引っかけてこう持って……」
梓「わああああ!? こっち向けないでくださいよ! 危ないじゃないですか!?」
唯「あ、ごめんごめん。別にあずにゃんを食べようと思ったわけじゃないからね、ごめんね」
梓「どんだけ極限状況なんですか」
唯「食べちゃいたいくらい可愛いなぁ、とはいつも思ってるけどね」
梓「…………」
いきなりこの状況でそんなこと言われても、反応に困りますよ。 -
- 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 07:53:33.13 ID:7j6ahPr30
-
もう、唯先輩ったら、サバイバル生活する気になったんなら、もう少し真面目に……あれ?
梓「あの、唯先輩」
唯「何かな、あずにゃん?」
梓「本気でサバイバルする気になったんですか? そこのボタン押せば、すぐ家に帰って憂のご飯食べてアイス食べて寝られますよ?」
唯「うん、折角ムギちゃんが用意してくれたんだし、食べるものがなくなるまでならいいかなって」
まぁ、唯先輩がそう言うなら。
梓「それじゃ、私もとりあえず付き合います。ご褒美に期待しつつ! 期待してますからね! ムギ先輩!」
テレビでこういう番組を見る時、必ずカメラが仕掛けてあるような場所を向きながら、何度も念を押す。
例えば調理に最適なテーブルの辺りとか。
こうして支給された道具を確認してる時の正面とか、緊急ボタンの近くとか。
唯「ひゃっ!? ど、どうしたのあずにゃん、また急に叫んで」 -
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 07:59:29.57 ID:7j6ahPr30
-
梓「唯先輩も真似してください。ムギ先輩が隠しカメラを仕掛けてる可能性が非常に高いですから」
唯「う、うん……期待してるよ! ムギちゃん! ね! あと……え、こっちにも? ムギちゃん、ご褒美に超期待してるからね~♪」
とりあえず、これでよし。
今の唯先輩の無邪気な笑顔のアピールを見たら、ムギ先輩も心を痛め……なさそう、はあ。
梓「じゃ、箱開けますね」
ぱか。
梓「水筒……空っぽですね。同じく空っぽのリュック」
唯「あっ、またサバイバルナイフ。同じのが二本目だよ、どうしようあずにゃん?」
梓「一人一本ってことですかね。それか片方はここに置いといて、綺麗なまま調理に使って……その方がよさそうですね」
唯「うん、そうしよう。こっちは敵をバシバシ斬り倒すナイフ! これさえあれば、ゾンビだって楽勝だよ!」
梓「ひゃああ!? 危ないから振り回さないでくださいってばぁ!」
唯「あ、ごめんね。別にあずにゃんを……」
梓「はいはい、私は食べ物じゃありませんから……えっと、ゴーグルセットに足ひれ」
つまりさっきの銛を使って海に潜って魚を撃て、と。
甘いかと思えば何気に難しいこと要求しますね、ムギ先輩。
- 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 08:05:52.45 ID:7j6ahPr30
-
唯「これがあると泳ぐの楽だよね~。あずにゃん、一緒に海で泳ご♪」
梓「はいはい、あとでいくらでも……救急箱は、うわ。消毒薬と絆創膏とガーゼと包帯だけで本当に最低限……ん、これは何でしょう?」
銀色の金属の塊、黒い棒がくっついてる細くて小さな四角いブロック。鉄じゃなさそうだけど、これって何に使うんだろ?
唯「ああ、火打ち石みたいな? 原始人みたく木の棒をぐりぐり回さなくても、簡単に火起こし出来るんだよ」
へー。
そんな便利なモノが……っていうかムギ先輩、それならライターかマッチでも同じじゃないですか。
っていうか狩り道具じゃないですよね火打ち石って。
梓「はあ……意外に物知りなんですね、唯先輩」
唯「ふふん、もっと誉めて誉めて!」
梓「これも知ってたらそんな得意気な顔してられないと思いますけど」
私はそれだけ言って、箱から離れて他の道具を使いやすそうなとこに配置することにした。
無人島っていうのが本当だったとしても、日本国内でこれはマズいですよね、ムギ先輩。
唯「……あずにゃん。私、かまどを作る石を探してくるね」
梓「お願いします」
何年も前に法律で使用禁止になったトラバサミなんて、別の意味で危なくて使えませんよ。
梓「はあ……って、え? かまど?」
- 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 08:16:20.62 ID:7j6ahPr30
-
箱から出しておいた衣類のうち、軍手がなくなってる。
唯先輩なら勢いで飛び出して海へ……と思ったのに、意外としっかりしてるんですね。
唯「ぃよいしょーお!」
梓「…………」
ああ、あんなに無駄に叫んで無駄に勢い付けて、かまど作るには無駄に大きな石を放り投げちゃって。
すぐに喉が乾いたって戻ってきそう……えっと、唯先輩の水はここに置いて、っと。
梓「……同じナイフに見えるけど、微妙に違う? 箱の通りに使えばいいのかな」
唯「そりゃー!」
調理用の刃物はサバイバルナイフじゃなくって包丁だったらよかったのに、変なところでサバイバル縛りになってるなあ。
まな板は……百均で売ってるような薄っぺらい、ふにふに曲がるやつ。
ないよりはかなりマシだけどね。木製より洗うの楽そうだし。
唯「とぉりゃー!」
梓「……唯先輩は火打ち石って言ってたけど、これ、何なんだろ」
銀色の小さなブロックを手の中で転がしながら、元気一杯に石を集める唯先輩の姿を眺める。
……あれ、いつの間に靴はいたんだろ。
私が箱の中を物色してる間に、唯先輩は唯先輩なりに準備してたのかな? -
- 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 08:23:20.81 ID:7j6ahPr30
-
唯「ちぇすとー! 腰のことじゃないよ!」
梓「そもそも元の意味からして違います」
ほんの呟きだから聞こえないだろうけど、何だか思わずツッコミを入れちゃう。
元気だなぁ、本当に。
楽しそうだし、余裕もあるみたいだし……いつまで続くか、ちょっと不安だけど。
梓「唯せんぱーい! かまど手伝います、完成したら泳ぐついでにお魚獲りましょう!」
靴をはいて、軍手をはめて、唯先輩のいる方へ駆け出す。
私だって小さな石とか、薪に使えそうな流木くらいは運ばなきゃ。
唯「あっ、あずにゃん。かまどはどの辺に作ろっか?」
梓「考えないで石放り投げてたんですか……えっと、テントの近くでいいと思います」
唯「テントの中がよくない? 雨降ったらお料理出来なくなっちゃうよ」
梓「あー……」
テントって言っても支柱と屋根だけだし、そっちの方が便利かも。
梓「じゃ、テントの中にしましょうか。少し風ありますし、煙は気にしないでよさそうですもんね」
- 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 08:31:21.94 ID:7j6ahPr30
-
唯「うん。テントおっきいし、火柱でも上げない限り燃えないよね~」
梓「……やっぱ、テントの外、すぐ傍に作ってください」
唯「え! 雨降ったら!?」
梓「かまどの熱でテントの屋根が溶けたり燃えたりしないか心配なので」
唯「う、うん……」
この時期、夜になっても冷えることはなさそうだから、大丈夫だよね。
毛布だってあるし、寝袋だってあるし……もし、どうしても寒かったら、唯先輩と一緒に寝ればいいだろうし。
……どうしても、の時はね?
唯「ひとつ積んではあずにゃんの為ぇ~♪」
梓「…………」
唯「ふたつ積んでもあずにゃんの為ぇ~♪」
梓「あの」
唯「みっつ積んでもやっぱりあずにゃんの為ぇ~♪」
梓「その変な歌の通りなら、私の為に作ったかまどで焼いたお魚は、私の空腹と栄養の為に、私ひとりで食べちゃっていいんですね?」
唯「……よっつ積んでは、私達の為ぇ~……」 -
- 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 08:37:52.28 ID:7j6ahPr30
-
そりゃぁ、重い石を運んでもらってるのは申し訳ないと思いますけど。
私だって頑張りますから、ちゃんと、ふたりでサバイバるんだってわかってくださいよもう。
唯「とりあえずおおまかな形は出来たかな! あとは、あずにゃんが運んでくれた石を隙間に詰めて……」
梓「かまど、何か思ってたより小さいですね」
唯「うん? だって、さっきのお鍋がちっちゃかったもん。大きすぎると使いづらいんじゃないかな」
梓「……なるほど」
そういやテレビ番組じゃ、焚き火は滅多にやんなかったけ。
うん、割と……薪代わりの枝とか枯れ草とか入りそうだし、火力は問題なさそう。
唯「さ、出来た! あずにゃん、そっち側から砂かけて! ずばーっと、砂で山を作る感じでね!」
梓「は、はいっ」
言われるまま、ざーっと砂をすくって簡素な石組みのかまどに砂を浴びせる。
やってる最中、大きな石と小さな石の隙間を埋めてるんだな、って気付いた。
唯「もういいかな……あずにゃん、そこら辺に木の枝が埋まってるから、つまずかないようにしてね~」
梓「はい……ん……っと? はい、ちょっと離れて歩くようにしますけど……木の枝、ですか?」
唯「それ抜くと、かまどの中に風が入る予定なんだよ。なかなか燃えなかったら抜くし、調子よかったらそのまんま。抜いた時にかまどが崩れたらやだから、よ く燃えてくれるといいんだけど」
梓「そおですか」
- 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 08:46:48.11 ID:7j6ahPr30
-
わかんない。
唯先輩、さっきまで石を積んでる時は砂遊びしてる子供にしか見えなかったのに、そんなことまで考えてたなんて。
私、唯先輩のことが本当にわかんない。
唯「はー、お水お水! あずにゃんも飲んだ方がいいよ!」
梓「はっ、はい!」
ほんと、わかんない。
唯「次はお魚さんをズビシ! だね。やったことないし、あんまりやりたくないけど」
梓「あの……森の方に行ってみませんか? 海水飲んだら余計に喉が渇くらしいですし、果物とか、水とか見付かるかもしれないですし」
唯「そうだねぇ……甘いフルーツが欲しいよね! カ□リーメイトだけじゃどうにもこうにも物足りないよ!」
ああ、いつもの唯先輩に戻った。
きっと、森に一歩踏み込んだ途端にバナナやリンゴの木があって、たわわに実ってると思ってるんだろうなあ……。
唯「んじゃ着替えないとね、っていうか着るだけかな」
梓「あ。はい、そうですね」
唯「水筒にお水入れて……持ってくのは絆創膏と包帯と消毒液だけでいいかな。あずにゃん、お願いしていい?」
梓「はい」
割と的確な持ち物選び、なのかな。
うん、いくらムギ先輩でも、とても対応出来ないような大怪我するとこに私達を放り込むはずないもんね。 -
- 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 08:52:42.71 ID:7j6ahPr30
-
唯「はー。ただのぬるいお水がこんなに美味しいなんて、今まで思いもしなかったねー」
梓「んく、んっ……そうですね。でも、あんまり飲みすぎないでくださいね?」
唯「うん。サバイバラ……バーとして、自分が飲むお水は自分で調達しないとね!」
いえ、まぁ、少しは分けてあげても構いませんけど。
限界だと思ったらリタイアすればいいだけですし。
唯「よーし! 着替えたらすぐ出発だよ、あずにゃん!」
梓「はいです!」
唯先輩いわく、長袖の探検隊の格好になって。
沢山あるポケットのうち、手が届きやすい場所に応急手当グッズを入れて。
水筒を首からかけたら、準備オッケーですよ。
唯「さすがにそろそろ暑くなってきたね。この服はちょっち厳しいかも」
梓「あ、お昼近いかもしれませんから、カ□リーメイト食べましょうか?」
唯「持っていこ。途中で歩きながら食べればいいよ、どうせお腹ぺこぺこなのは変わんないんだし」 -
- 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 08:58:24.73 ID:7j6ahPr30
-
梓「はい」
私もだけど、やっぱり食べた気がしないのは唯先輩も同じみたい。
カロリー的には間に合ってるんだけど、ね。
唯「じゃ、行こっか」
梓「はい」
唯「ここの場所覚えててね~。迷ったらあずにゃんだけが頼りだから」
梓「わっ、私だって唯先輩だけが頼りなんですよ!? そんな不安になるようなこと言わないでくださいっ」
唯「えへへへ、冗談だよ。すぐそこ、私が石を集めてたとこに獣道っぽいのがあったから、今日はそこから外れないように気を付けて探検しようね」
梓「はぁ……冗談は時と場所を選んで言ってください」
唯「えへへ」
悪びれない唯先輩だけど、今は頼もしく思える。
ちょっと離れているとはいえ、私に向かってナイフの素振りをするのは勘弁して欲しいけど。
唯「んじゃ、しゅっぱーつ!」
……はあ。
きっと、森の中の至るところにもムギ先輩がカメラ仕掛けてるんだろうなぁ……。 -
- 33 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 09:11:34.22 ID:7j6ahPr30
-
梓「無人島っていうのが本当なら、真水は期待出来そうにないですね」
唯「あるかもしれないよ? こう、伝説の何とかの泉がこんこんとわき出てて……『あなたが欲しいのは金の水? それとも銀の水?』とかさ」
梓「どっちも飲めないですよね?」
唯「だよねー。金でも銀でも、水ってことはすっごく熱い溶けた金属なんだもんねー」
梓「泉の話から離れませんか」
水のことばっかり言ってたら、早くも喉が渇いてきた感じ。
水筒からひと口だけ、ごくり。
唯「…………」
梓「あれ? どうしたんですか、唯先輩?」
唯「ちょっとお水飲むのが早かったね、あずにゃん。文明世界の安心して飲める貴重なお水だったのに」
梓「はい?」
唯「あれ! あの木知ってる! 枝を切ると、切り口からお水が出てくるんだよ!」
梓「……えぇー」
安心して飲める水なんですか、それが。
とか思っている間に唯先輩は自分が指差した木の、手が届く部分を切って、その下で口を開ける。
唯「あーん……」 -
- 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 09:20:06.33 ID:7j6ahPr30
-
出てきたのは、透明だったけど、樹液のはず。
それがぽたぽたと唯先輩の舌に垂れ落ちて、唯先輩は美味しそうに樹液を飲み下す。
唯「ん、んっ……んく……」
梓「あの、唯先輩? そういうの、お腹壊しちゃうんじゃないですか?」
唯「テレビでやってたし、さっきの図鑑でも見たもん。大丈夫だよ」
いえ、だから図鑑はともかくテレビってどうなんですかね。
ああいうのは視聴率を稼ぐ為にわざと派手に火柱を上げたり、夜中の海に潜って魚を捕ったり。
何かあったらすぐにボートとかで搬送してもらえるし、撮影用のライトに照らされていたら銛突きもそりゃあ楽でしょうねっていう。
唯「んぐ、んんっ……はー。美味しいよ、あずにゃんも飲む?」
梓「いえ……今、水飲んだばかりですから」
いくら唯先輩が飲んだ樹液でも、ちょっと、怖い。
それにふたりでお腹壊したり病気になったりしたら大変。
唯「んじゃ、今日はここら辺の野草を集めて戻ろっか」
梓「はい?」
唯先輩はそう言って、適当に掴んだ草をナイフでぐしぐしと切り取ってリュックに詰めていく。
食べられるのか、そうでないのか、私にはわからない。
本当、わからない。
唯「あ、あずにゃんはそこの木の実を集めてくれる?」 -
- 36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 09:27:59.72 ID:7j6ahPr30
-
唯先輩と一緒なら、もしかしたらこの島に定住出来るんじゃないかな、って思えてきちゃう。
生活力というか適応力ありすぎ。今のでお腹壊さなきゃだけど。
梓「木の実ですね」
……うわあ、何か嫌な形の粒が木の枝に沢山連なってる。
でもあとで図鑑で調べて、食べられないやつだったら捨てればいいか。
梓「手が届くところまでで許してくださいね」
唯「うん。こっちが結構あるから、お腹一杯食べられるよ」
食べられたら、ですけどね。
唯「ふぃ~……落ちてる枝を集めながら戻ろう、あずにゃん。燃やすものはいくらあっても困らないからね」
梓「あ、はい……」
適当に草を刈り取ってたようにしか見えなかったんだけど……本当に食べられるのかなぁ。
まぁ、カ□リーメイトが尽きたら唯先輩がすごい勢いでギブアップするんだろうけど。
唯「ああ、あのちっちゃなお鍋、ひとつ潰すけどいいよね」
梓「えっ? 潰すって、べこんって踏むんですか?」
唯「ううん、そうじゃなくって。せめて塩がないと、私はくまさんじゃないんだから、野草でもお魚でも食べられないよ」
梓「あ、海水を煮詰めるんですか」
それはそうと、くまさんって誰のことかな? -
- 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 09:40:13.23 ID:7j6ahPr30
-
唯「うん、調味料が全然なかったもんね。さしすせそくらいは揃えてくれてもいいのに、ムギちゃんでも意地悪なことするんだね」
いえ、既に充分すぎるくらい意地悪だと思いますが。
いえ、唯先輩がそれでいいなら、あえて黙っていますが。
唯「かまどの出来が楽しみだねぇ~」
梓「そ、そうですね……」
カ□リーメイトはあと二食分。
それがなくなったらリタイアかな、やっぱり。
……とか、何てムギ先輩に言い訳しようか悩んでいるうちにテントに戻ってきて。
唯「ほい、あずにゃん。薪もうちょっと入れて」
梓「はい」
あれ。
火打ち石って、新聞みたいなどうでもいい紙クズが必要じゃないんですか?
唯先輩、ナイフで木を削っておがくずみたいにしてますけど、とても火種にするのに充分だとは思えませんが。
唯「あずにゃん、銀色のやつ持ってきてー」
梓「はっ、はい? 火打ち石ですね?」
唯「うん」
積んだ薪の下に帰り道に集めた枯れ枝の細いとこを折って重ねながら、唯先輩は自信満々。
これで火がつかなかったら、私どう反応すればいいのかな。 -
- 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 09:55:53.99 ID:7j6ahPr30
-
梓「どおぞ」
唯「ありがとー……ん、ほりゃ! とぉ! そぉい!」
え。
銀色の、金属を、ナイフで削ってる。
ナイフの刃が駄目になっちゃうんじゃないですか、それ。
梓「唯先輩? それ、火打ち石って……」
唯「あー……うん。火打ち石は、横に付いてる黒い棒だよ」
しょりしょりしょり、と銀色の削りカスが積み重なってく。
そして、ん、と何がいいのか私が理解出来ないまま頷いてから、唯先輩が振り向いた。
唯「あずにゃん。ちょぉっと眩しくなるから、あっち向いてた方がいいかもだよー」
梓「ちょっとなら平気です。っていうか、それの使い方を知りたいのでずっと見てますけど」
唯「そっか。んじゃいくよー」
唯先輩が、くるっと両手に握ったアイテムを持ち替えた。
ナイフの刃は峰に、銀ブロックの削ってたとこは、黒い棒に。
唯「とお! 着火!」
梓「にゃあああ!?」
ガキンと黒い棒にナイフがぶつかった瞬間、視界がホワイトアウト。
あ、でも、何かこれ前に見たことあるかも。 -
- 41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 10:00:53.42 ID:7j6ahPr30
-
唯「あずにゃん、あずにゃん、大丈夫? 私の顔、見える?」
梓「ん……は、い……それ、もしかして、マグネシウムなんですか?」
唯「おお!? すごいねあずにゃん! よくわかりました!」
なるほど、火起こしに自信があったのも納得ですよ。
火打ち石……すなわちフリントロックなのは黒い棒部分だけで、まぁ嘘ではないですけど、先に教えてくれてたらこんなにびっくりしなくて済んだのに。
唯「ほら、枝がちゃんと燃えてるよ、成功だよ」
梓「……ムギ先輩って、優しいんだか意地悪なんだか、わけわかんないですね」
唯「うん。まぁ、ナイフと燃え種さえあれば、正直なとこどうとでもなるんだけどね」
梓「……今、唯先輩をちょっと格好いいと思っちゃいました」
唯「おお!? じゃ、じゃあ、草だけじゃ何だから、お魚もゲットしてくるよ!」
梓「いえ、その前に塩がどうとか言ってませんでしたか?」
唯「あ、そうだった……味がないと食べた気しないもんね。でも、海水をそのまま飲むのは抵抗あるしね」
梓「海水には大腸菌がうじゃうじゃいるって……自分で確かめたわけじゃありませんけど、今の状況で進んで飲みたいとは思いません」
唯「そんなあずにゃんには、煮沸消毒! 大抵はぶくぶく煮れば平気だから!」
- 42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 10:07:31.76 ID:7j6ahPr30
-
と、唯先輩は小鍋をひとつ取って波打ち際まで走っていって、すぐに戻ってきた。
海水の入ったそれをかまどの端に置いて、今度は銛やらゴーグルやらを拾って。
唯「次はどーぶつ性タンパク質! あずにゃんの為に大物ゲットしてくるよ!」
梓「あっ……あのっ……」
唯「火の番、お願いねっ!」
紐をほどいて靴を脱いで、探検装束を脱いで、あっという間に潜水モード。
一瞬下着が見えるかと……いや、ううん、期待なんかしてないよ私。
唯先輩は水着に足ひれ、ゴーグルとシュノーケルに銛という実に似合わないワイルドな姿になって、海に飛び込んだ。
梓「気を付けてくださいね!? 溺れないでくださいよ!?」
……もう、私の言葉は唯先輩に届かない。
言い付け通り、火が消えないように枯れ木の枝をくべ続けるしかない。
気温が暑いけど、火も熱いけど、唯先輩が戻ってくるのを待つ。
梓「…………」
波間にちょこちょこと、唯先輩が息継ぎをしに頭を出すのが見える。
声をかけようとしても、『魚はいらないから戻ってきてください』って叫ぼうとしても、声を出す前に潜られちゃう。 -
- 43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 10:13:58.39 ID:7j6ahPr30
-
梓「……火の番なんて、する必要ないじゃないですか」
あんな簡単に、ふーふーしなくてもいいぐらい楽に火を起こせるんだから。
このブロックがマグネシウムだって最初に教えてもらってたら、一緒にお魚獲りに潜ってましたよ?
ええ、私は唯先輩の為に、唯先輩は私の為に。
お魚の大きさが違っても、食べさせっこして、結局食べる量は変わらないんですよねきっと。
梓「唯せんぱぁい……」
今度はなかなか、息継ぎに上がってこない。
ちょっと、ううん……かなり心配。
梓「あ」
唯先輩の頭が見えた。
ほっとして、思わず溜め息が出た。
ああ……銛の先にお魚。
そんなの自慢しなくていいですから、早くここまで戻ってきてくださいよ。
梓「……はぁ」
唯「あっずにゃーん! お昼のメニューに、よくわかんないお魚追加だよ!」 -
- 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 10:19:48.02 ID:7j6ahPr30
-
梓「そんなの、どうでもいいです」
唯「え? 折角頑張って追いかけたのになあ、あはは。見た目美味しそうじゃないけど、ちゃんと私が毒味するから大丈夫だよっ」
梓「そんな、毒味とかっ……全然大丈夫じゃないですよっ!」
気が付くと、立ち上がってた。
走ってテントの中に入って、緊急ボタンを押してた。
私も唯先輩も何ともなくて、どこからどう見ても緊急事態じゃないのに。
唯「……あずにゃん、どうして? ムギちゃんのご褒美が欲しかったんじゃないの?」
私の手の下の箱から、ピピッと電子音が鳴った。
何かの機械が入ってて、それが無事に動いたんだとわかったら、急に身体の力が抜けちゃった。
梓「もう……嫌なんです、こんなの。もしこの島の食べ物や水が豊富だとしても、今みたいに唯先輩が海に潜って、なかなか上がってこなくて……それを見てる 私の気にもなってください!」
唯「……心配してくれてたの?」
梓「心配しないわけないじゃないですか! 唯先輩が海に入って、溺れちゃうかもしれないのに、私はここで見てるだけだったんですよ!?」
唯「でも、どーぶつ性タンパク質が……」
梓「だからそんなのどうでもいいんです! 一生この島でふたりっきりなわけじゃないんですから!」
唯「えー。私は別に、ここで新世紀のアダムとイブになってもよかったんだけどなあ」
梓「……アダムは男ですよ」 -
- 47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 10:25:13.07 ID:7j6ahPr30
-
唯先輩の行動力は、後先考えてないせいかもしれないけど、私より上。
図鑑があるから時間さえあれば……と思うけど、自信も知識も私より上。
唯「じゃあじゃあ! イブとイブ! この無人島から世界を作るつもりで頑張ろうよ、あずにゃん!」
お気楽さはこの通り、比べるまでもなく、上。
……こういう馬鹿っぽいところも敵わないし、わかってて言ってるんだったら尚更どうしようもない、と思う。
梓「蛇……はともかく、リンゴの木はなさそうですから、何にしろ無理です。そもそも私達がいる時点で無人島じゃなくなっちゃってます」
唯「それは屁理屈だよぉ。リンゴだって、探せばあるかもしんないじゃん?」
梓「……もうボタン押しちゃいましたから。あったとしても、やっぱり無理なんです」
私自身が幕を引いちゃったのに、そういう『かもしれない』は、胸が苦しいです。
唯先輩は、もっと私と無人島ライフを満喫したかったのかもしれない。
ちょっと嫌がってたっぽい銛突きも、私の為にやってくれたし、戻ってきてくれたし、食べ物には困らないのかもしれない。
でも、海って自分の意思ではどうにもなりませんよね?
唯先輩、あんな遠くまで泳いで行っちゃったら、無事に戻ってこられなかったかもしれないんですよ? -
- 48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 10:31:01.36 ID:7j6ahPr30
-
唯「ま、いっか。ムギちゃんが迎えにきてくれるまで、お魚と野草でお鍋でも作ろ?」
梓「……はい。私、こういう生活は向いてないみたいです」
唯「海水は……っと、塩だけになってる。んじゃ、あっちの鍋で……」
梓「唯先輩」
唯「なぁに? お魚からダシが出るから、結構美味しいお鍋になるかもしんないよ~?」
梓「海は……もう、海水浴場くらいにして、お魚を捕る為に潜るとか、しないでください……ぐすっ」
ああ、やだなあ、もう。
涙はどうにか堪えたのに、鼻声になっちゃった。
唯「うん……実はね、私もちょっと怖かったんだ。波が強くて、引っ張られて……でも、あずにゃんのところに戻らなきゃいけないからって、頑張ったんだよ」
梓「うっ、う……ありがとぉ、ございます……戻ってきてくれて、とっても、嬉しいです……」
唯「……あ、あれー? わざわざ海水煮詰めなくても、あずにゃんの涙で味付けしたらよかったかなー?」
梓「……塩辛くて、食べられたもんじゃないと思いますよ」
もうリタイア決定したせいかな、唯先輩はおどけながら残りの水を贅沢に使って野草を洗ったりお魚をさばいたりして。
っていうか、お魚さばけるのが意外……ま、まぁ、上手とはお世辞にも言えませんけどね。 -
- 49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 10:38:33.43 ID:7j6ahPr30
-
唯「あずにゃん、ちょっと離れてね。危ないから」
梓「ん……ま、またマグネシウムですか?」
唯「そうじゃなくって、本当に危ないんだよ……ま、見てて」
『危ない』の意味がわからなかったけど、唯先輩が困った表情だったから、大人しく離れる。
そうすると、唯先輩はお魚の切り身や野草が入った鍋をかまどに乗せる。
唯「前にテレビで見た、郷土料理のパフォーマンスなんだけどね」
苦笑いしつつ、枯れ木を器用に箸のように使って、かまどの内側に転がっていた小石を拾い、鍋に放り込んだ。
途端に蒸気が立ち上って、焼けた石に触れた水の蒸発する音が響く。
梓「わぁ……」
唯「ね? 離れてないと危ないでしょ?」
そんなことを言うくせに、唯先輩は鍋のすぐ傍にいたわけで。
沸騰と蒸発の勢いで跳ねたお湯も、小石だったせいかな、言う程危なくなかったわけで。
- 50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 10:42:23.50 ID:7j6ahPr30
-
梓「追加です、唯先輩。危ないことしないでください」
唯「え~? 今の、危なかったかなぁ?」
梓「ついさっき今し方、私に『危ない』って言ったばかりですよね?」
唯「おおぅ……あうち」
梓「ま、何ともなさそうだから今回は許してあげますけど」
唯「うん。じゃ、私のサバイバル料理なんか食べたくないかもしんないけど……味見だけでも、ねっ?」
って、カップに鍋の中身を取り分けて、渡してくれる。
でもって、私が口を付ける前に、唯先輩が別のカップで味見をして。
唯「ずずっ……え? 思ってた以上に美味しい?」
梓「……何なんですかそれ!? 思ってた以上って!?」
唯「まーまー、煮込まれたお魚さんが頑張ってくれたんだよ。沸騰消毒も充分っぽいし、ゲテモノ料理かもしんないけどひと口だけ!」
野草とお魚と塩しか入ってないのに、ゲテモノって卑下するのはどうかと思いますよ。
でもまぁ、まずはひと口……。
- 51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 10:48:57.80 ID:7j6ahPr30
-
梓「ん……」
唯「……どお? 塩しか使ってないんだよ!」
梓「ええ、塩だけにしては美味しい部類だと思います」
唯「でしょでしょ!? やったぁ、あずにゃんに美味しいって言ってもらえたよ!」
梓「こういう特殊な状況、っていう限定条件がありますけどね」
唯「んむー」
……しょっからいだけかと思ってたのに、うん、お魚のダシが出てるのかな。
草はむしろ薬味みたいな?
こんな限られた材料と環境で作ったお鍋とは思えませんよ、愛じょ……じゃない、空腹は最高の調味料ですね。
梓「……美味しいです、唯先輩。お世辞抜きで」
唯「わっほう! 嬉しいねえ、けど帰ったらもっぺん、ちゃんとお料理作らせてね!」
梓「普通に材料を揃えて、調味料も揃ってたら、採点厳しくなりますけど」
唯「うん、それでも真心込めて作るから。あずにゃんの為に、ね」
梓「……楽しみにしてます」
- 52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 10:54:40.62 ID:7j6ahPr30
-
あ、水平線の遠く向こうに見たことのある船影確認。
本当の意味での『ご馳走』なんだから、早く食べちゃわないと。
あと、ムギ先輩に言う文句も沢山考えておかなきゃ。
唯「んん、ずずぅ……はあ。暑い時期でもお鍋はほっこりするねぇ」
梓「はい。でも、次のお鍋は冬に食べたいですね」
唯「やっぱしお鍋は寒い時期じゃないとねえ……んむんむ、ん……美味しー♪」
梓「んっ、んく……はむっ……そおですねぇ」
多分、ムギ先輩は大量の料理を用意してくれているんだろうけど。
私は、唯先輩が作ってくれたこのご馳走の味を、ずうっと忘れない。
~りたいあ!~ -
- 53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 10:58:56.91 ID:7j6ahPr30
-
読んでくれた人どうもです。乙でした。
サバイバル技術に関しては、前提条件で長くても数日ってことにしてたので、楽に出来ることしか
書きませんでした。じゃあ樹液飲ませたりすんなよって話になりそうですが、そこら辺はご容赦ください。
- 56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 11:11:54.97 ID:i6SxhgJ10
-
もっと二人の共同サバイバルが見たかったけど乙
- 66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 14:18:02.94 ID:rTfEKZdn0
-
唯梓が可愛かった!乙 -
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| けいおん!!SS
| 18:00
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≫ EDIT
2011.01.12 Wed
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- 1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 04:12:00.15 ID:EJF79NAu0
-
部室
梓 「お兄ちゃん」
唯 「一緒に帰ろっか、あずにゃん」
梓 「手つないでくれますか?」
唯 「うん! いいよ」
律 「おい! ちょっと待て唯」
澪 「いつから兄妹になったんだよ」
唯 「そんなことボクに言われても……あずにゃんまだ幼いんだし」 -
- 2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 04:17:20.77 ID:EJF79NAu0
-
澪 「だいたい、女なのに自分ことボクって」
唯 「おかしいかな?」
紬 「いいんじゃないかしらぁ~」
澪 「いや、でも……」
梓 「お兄ちゃんをいじめないで下さい!」
唯 「ほらっ、あずにゃん泣いちゃうよ」
律 「あー、悪かった。ごめんな」 -
- 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 04:24:45.68 ID:EJF79NAu0
-
帰り道
唯 「コンビニで肉まん買って帰ろうよ」
梓 「だめですよ、晩ご飯に食べちゃだめです」
唯 「え~、あずにゃんのケチ」
梓 「憂お姉ちゃんにいいつけますよ」
唯 「でも、あずにゃんもほんとは食べたいんでしょっ」
梓 「ううう」 -
- 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 04:30:05.61 ID:EJF79NAu0
-
唯 「おいしいねっ」
梓 「はい! うまいです」
唯 「憂には内緒だよ」
梓 「内緒です」
- 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 04:34:29.69 ID:EJF79NAu0
-
平沢家
憂 「いたただきま~す」
唯梓 「……いただきます」
梓 (やばい、おなかいっぱい……)
憂 「あれ、梓ちゃん、食べないの?」
梓 「なっ、内緒です」
憂 「え?」
唯 (あずにゃん! それじゃバレちゃうよ) -
- 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 04:39:43.21 ID:EJF79NAu0
-
憂 「さては、お菓子食べちゃったんでしょ」
梓 「内緒です。お兄ちゃんと約束したから」
憂 「お姉ちゃんっ!」
唯 「ぼっ、ボクは関係ないよ……」
憂 「めっ、でしょ」
唯 「はい、ごめんなさい」 -
- 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 05:02:42.27 ID:EJF79NAu0
-
唯の部屋
コンコンコン
唯 「入っていいよ」
梓 「お兄ちゃん……」
唯 「一緒に寝てほしいの?」
梓 コクリ
唯 「ほら、ベットに入っておいで」
梓 「いいんですか」
唯 「いいから、いいから」 -
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 05:06:50.12 ID:EJF79NAu0
-
梓 「抱っこしてください」
唯 「あずにゃんは甘えん坊さんだねぇ」
梓 「あ、甘えんぼじゃありません。やっぱり、抱っこはいいです」
唯 「ごめん♪ ごめん♪」ギュッ
梓 「ひゃっ」
唯 「あずにゃん、あったこい♪」 -
- 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 05:11:47.91 ID:EJF79NAu0
-
梓 「お兄ちゃんもおコタみたいにあったかいです」
唯 「ねぇ、あずにゃん」
梓 「何ですか?」
唯 「どうしボクがお兄ちゃんなの?」
梓 「ボクって言うからお兄ちゃんです」
唯 「でも、女だよ」
梓 「ボクって言うヒトはお兄ちゃんです」
唯 「そっか、そっか」 -
- 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 05:19:22.71 ID:EJF79NAu0
-
唯 「じゃあ、電気消すね」
梓 「ダメです」
唯 「でも、もう寝ないと」
梓 「暗いのいやです」
唯 (仕方ないなぁ)
唯 「じゃあ、昔話してあげるね」
梓 「ほんとですか!」
唯 「ほんとうだよ♪ むかぁ~し、むかし、あるところに……」 -
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 05:23:41.51 ID:EJF79NAu0
-
唯 「……というわけで二人はしあわせに暮らしましたとさっ」
梓 「ぐぅ~す~」
唯 「あずにゃん、寝ちゃった」
唯 「じゃあ、ボクも電気消して寝よっと」
梓 「す~す~」
唯 「あずにゃんの寝顔かわいいなぁ」 -
- 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 05:27:19.20 ID:EJF79NAu0
-
唯 「ちょっといたずらしてみよっ、つんつん」
梓 「ふにゅぅ」
唯 「ほっぺ、やらこい♪」
唯 「ほれ、つんつん」
梓 「ぅぅぅぅ」
唯 「ごめんね♪ おやすみ、あずにゃん♪」 -
- 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 05:34:33.07 ID:EJF79NAu0
-
次の日の朝
唯 「おはよぅ……あれっ、あずにゃんがいない」
憂 「お姉ちゃん、学校遅刻するよ」
唯 「えっ、は、はちじぃ! 遅刻遅刻!」
憂 「私、日直だから先、行ってるね」
唯 「はやく着替えないと」
憂 「朝ごはん作っておいたから」
唯 「憂、ありがとう」
憂 「梓ちゃん、ちゃんと学校に連れてってあげてね」
唯 「うん、いってらっしゃ~い」 -
- 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 05:38:40.05 ID:EJF79NAu0
-
梓 「憂の目玉焼き、おいしいな~」
ジリリリン ジリリリリン
梓 「電話だ!」
ジリリリン ジリリリリン
唯 「あずにゃん、出てぇ~」
梓 「はい、わかりました。任せてください」
梓 「もしもし」 -
- 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 05:42:35.43 ID:EJF79NAu0
-
唯 「ああ、遅刻遅刻」
梓 「たいへんです!」
唯 「大丈夫、もう着替えたからっ」
梓 「ちがいます! もっと、ずっとたいへんです!」
唯 「どうしたの?」
梓 「パパから電話でした!」 -
- 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 05:48:06.45 ID:EJF79NAu0
-
唯 「えっ、お父さんから?」
梓 「ちがいますよ! あずさのパパからです!」
唯 (でも、あずにゃんのパパは……)
唯 「でも、あずにゃんのお父さんは、遠い外国でお仕事してるんだよ」
梓 「でも、パパからでした!」
唯 (あずにゃんが生まれる前に死んでるはず)
梓 「会議に使う書類忘れたから会社に届けてくれって言ってました!」
唯 (まちがい電話かなぁ)
梓 「たいへんです! たいへんです!」 -
- 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 05:54:04.63 ID:EJF79NAu0
-
唯 「ほんとうに、あずにゃんのお父さんからだった?」
梓 「はい! パパからでした!」
唯 「そっかぁ」(困ったなぁ)
梓 「早く行かないと! パパはほんとに、おちょこちょいです」
唯 (あずにゃん、嬉しそうだなぁ……)
梓 「あずさだけじゃなくて書類も忘れるなんて、困ったパパです」
唯 「そうだね……じゃあ、届に行こうか書類」
梓 「はい!」
唯 (今日は学校休まなくちゃ) -
- 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 06:00:02.49 ID:EJF79NAu0
-
唯 (とりあえず、書類は適当にプリントを封筒に入れて……)
梓 「早くっ、早く行きましょう!」
唯 「はい、はい。って、そのリュックは?」
梓 「ここに書類入れてください」
唯 「遠足みたいだね」
梓 「ほんとに困りました! もう、てんてこまいです」
唯 (問題は、どこに行くか……だよね) -
- 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 06:07:18.81 ID:EJF79NAu0
-
唯 「じゃあ、行こっか」
梓 「あっ、忘れてました!」
唯 「どうしたの?」
梓 「おみやげ忘れてました」
唯 「おみやげ?」
梓 「この前かいたイヌの絵と折りツルもっていかないと」
唯 「あずにゃん……」
梓 「お気に入りだけど、パパにあげます」 -
- 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 06:19:42.69 ID:EJF79NAu0
-
唯 「準備できた?」
梓 「はいっ」
唯 「じゃあ、行こうか」
梓 「いってきま~す」
唯 (とりあえず電車に乗るしかないよね)
唯 「あずにゃん、今日はいい天気だね」
梓 「葉っぱがきらきらしてます」 -
- 51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 21:08:18.30 ID:EJF79NAu0
-
ワンワンワン
梓 「わんこです!」
唯 「ほんとだ!」
ワンワンワン
梓 「わんこ、なでてきます」
唯 「あずにゃん! 走っちゃダメだよ」
梓 「あいてっ」
唯 「こけた!」 -
- 52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /09(日) 21:10:29.42 ID:EJF79NAu0
-
唯 「あずにゃん、だいじょうぶ?」
梓 「泣きません、梓、泣きませんよ」
ワンワンワン くぅ
梓 「あははは、ぺろぺろしちゃだめです」
唯 「あずにゃん、手つなごっか」
梓 「はい」
- 72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 07:52:24.90 ID:s3QEyKEo0
-
唯 「えーと、とりあえず終点まで切符を買っておこう」
梓 「ボタン押したいです」
唯 「じゃあ、大人一枚と小人一枚で一番高いボタン押して」
梓 「とっ、届きません」
唯 「あずにゃん、小さいもんね」
梓 「抱っこしてください」
唯 「はい、はい――よいしょ」 -
- 73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 07:55:44.60 ID:s3QEyKEo0
-
唯 「電車こないね」
梓 「ここ各駅停車しかとまりません。がまんです」
唯 「あずにゃん、退屈?」
梓 「だいじょうぶです」
唯 「……」
梓 「……」
唯 「空、きれいだね」
梓 「雲が真っ白です」
唯 「もうすぐ、春だね」 -
- 74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 07:58:29.27 ID:s3QEyKEo0
-
梓 「お兄ちゃん、見てください」
唯 「イスがどうかしたの?」
梓 「落書きがいっぱいです」
唯 「ほんとだ。木の長椅子だから彫ってあるんだね」
梓 「あいあい傘がいっぱいです」
唯 「みんなしあわせそうだね」 -
- 75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 08:02:33.22 ID:s3QEyKEo0
-
梓 「あいあい傘書きたいです」
唯 「え? ボクとあずにゃんの」
梓 「だめですか……」
唯 「うううん、書こう――こうやって、傘を書いて――」
梓 「あ・ず・さ」
唯 「ゆ・いっと」
梓 「できました」
1番線に電車が参りま~す
唯 「あ! 電車が来たよ」 -
- 76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 08:05:27.83 ID:s3QEyKEo0
-
ガタンガタン ゴトンゴトン
唯 「あずにゃん、窓の外見ておもしろい?」
梓 「はい」
唯 「靴脱がないとだめだよ」
梓 「脱がしてください」
唯 「もう、仕方ないなぁ」
ガタンガタン ゴトンゴトン -
- 77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 08:09:25.48 ID:s3QEyKEo0
-
ガタンガタン ゴトンゴトン
唯 「あずにゃんは電車大好きだね」
梓 「はい、大好きです。これからとまる駅の名前全部言えます」
唯 「将来は電車の運転手さんになるんだもんね」
梓 「各駅電車の運転手がいいです」
唯 「どうして?」
梓 「ゆっくりいろんな駅が見れます」
唯 「そうだね」
ガタンガタン ゴトンゴトン -
- 78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 08:15:47.50 ID:s3QEyKEo0
-
ガタンガタン ゴトンゴトン
梓 「……」モゾモゾ
唯 「? どうしたの、あずにゃん」
梓 「……おしっこ行きたいです」
唯 「ええ! 次の駅までがまんできる?」
梓 「おしっこに聞かないとわかりません」
唯 「そんな……がまんだよ! あずにゃん、もう少しだから」
梓 「はっ、はい」
ガタンガタン ゴトンゴトン -
- 79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 08:21:34.60 ID:s3QEyKEo0
-
山の里ぉ~ 山の里ぉに到着です
唯 「着いたよ! あずにゃん」
梓 「はい」
唯 「あそこにトイレがあるよ 走ろっ」
梓 「はっ、はい」
唯 「あずにゃん、頑張れ」 -
- 80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 08:23:50.49 ID:s3QEyKEo0
-
唯 「間に合ってよかったね」
梓 「よかったです」
唯 「静かな駅だね」
梓 「ここ、無人駅です」
ぐぅ~
唯 「おなかすいたね」 -
- 88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 12:52:01.09 ID:s3QEyKEo0
-
梓 「駅の外におそば屋さんが見えます」
唯 「あそこで、食べよっか」
梓 「はい」
唯 「あっ、でももう財布からっぽだ……」
梓 「大丈夫です。あずさ、お金持ってますよ」
唯 「ほんとに!」
梓 「はい、お兄ちゃんみたいに無駄遣いしませんから」 -
- 89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 12:53:45.99 ID:s3QEyKEo0
-
唯 「いくら持ってるの?」
梓 「100円玉5枚です。うまい棒いっぱい買えます」
唯 「あずにゃん、うまい棒好きだもんね」
梓 「はい」
唯 「となりのコンビニで小さいお弁当買おっか」 -
- 90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 12:57:09.69 ID:s3QEyKEo0
-
唯 「駅で食べるお弁当、おいしいね」
梓 「はい。おいしいです」
唯 「あずにゃん、いっぱい食べていいからね」
梓 「タマゴ焼きおいしい」
唯 「うん」
梓 「お兄ちゃんには梅干しあげます」
唯 「あずにゃん、梅干しきらいなの?」
梓 「そっ、そんなことないですよ!」 -
- 91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 12:59:51.43 ID:s3QEyKEo0
-
唯 「じゃあ、梅干しいただきまーす」
にゃあ
梓 「ネコです」
唯 「野らかなぁ」
にゃ~ん
唯 「そっか、おなかすいてるんだ」
梓 「分けてあげましょう」
唯 「あずにゃん、優しいね」 -
- 92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 13:02:03.16 ID:s3QEyKEo0
-
唯 「ごちそうさま~♪」
梓 「ごちそうさまでした」
1番線に電車が参りま~す
唯 「電車、来たよ」
梓 「にゃんこ、ばいばい」
にゃあ~ -
- 94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 13:06:49.40 ID:s3QEyKEo0
-
ガタンゴトン ゴトンガタン
梓 「パパの駅はまだですか?」
唯 「う~ん……もうちょっとかな」
梓 「もうちょっとってどのくらいですか?」
唯 「次の次の次くらいの駅だよ」
梓 「つぎのつぎのつぎ」
唯 「そうだよ」
ガタンゴトン ゴトンガタン -
- 95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 13:11:15.70 ID:s3QEyKEo0
-
ガタンゴトン ゴトンガタン
梓 「あずさ、気になってることがあります」
唯 「どうしたの? あずにゃん」
梓 「宇宙はどこまで続いてるんですか?」
唯 「さあ、どこまでなんだろうねぇ」
梓 「お布団に入るとそれが心配で眠れないんです」
唯 「あずにゃんが、心配しなくていいんだよ♪」
ガタンゴトン ゴトンガタン -
- 96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 13:14:08.97 ID:s3QEyKEo0
-
ガタンゴトン ゴトンガタン
梓 「もうひとつ、気になってることがあります」
唯 「なに? あずにゃん」
梓 「みんな、死んだらどうなるんですか?」
唯 「さあ……どうなるんだろうね」
ゴーゴーゴー
唯 「あっ、最後のトンネルに入ったよ」
梓 「すごいです。 真っ暗です!」 -
- 97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 13:19:58.56 ID:s3QEyKEo0
-
ゴーゴーゴー
梓 「電燈が弓矢みたいに飛んでいきます」
唯 「ほんとだ、面白いね」
梓 「窓にあずさたちの顔映ってます」
唯 「窓に映ってるわたしたち、仲良しさんだね」
梓 「はい――でもトンネル長いです」
唯 「5分くらいだったかな」
梓 「トンネル、ほんとに出口あるんですか?」
唯 「だいじょうぶ♪ もうすぐだよ」 -
- 98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 13:24:29.96 ID:s3QEyKEo0
-
梓 「トンネル抜けました!」
ガタンゴトン ゴトンガタン
唯 「ねっ」
次はしおみ町、しおみ町ぃ~ 終点です
唯 「着いたよ、あずにゃん」
梓 「長かったですね」 -
- 99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 13:36:52.29 ID:s3QEyKEo0
-
唯 「あずにゃん、ドアとホームの間、空いてるから気をつけてね」
梓 「はい――さっちゃんはねっ♪ さっちこってゆ~んだ ほんとはねっ♪」
唯 (あずにゃん、ご機嫌だなぁ)
梓 「だけどちっちゃいか~ら ふふんふ ふん ふんふん……」
唯 (歌詞覚えてないんだ……かわいい)
唯 「改札通るから切符持った?」
梓 「はい」
唯 「……あれっ!?」
梓 「どうしたんですか」
唯 「わたしの切符がない!」 -
- 100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 13:39:53.42 ID:s3QEyKEo0
-
梓 「どうしよう、どうしよう」
唯 「どこかに落としたのかなぁ」
梓 「困った、困った」
唯 「大丈夫だよ! 駅員さんに説明すれば」
梓 「本当ですか」
唯 「たぶん……」 -
- 102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 13:46:24.09 ID:s3QEyKEo0
-
唯 「だから、そのぅ、ボクがどこかで切符落としたみたいで……」
駅員 「はぁ」 (弱ったなぁ)
唯 「その、だから、えーとボクは……」
駅員 (自分のことボクとか言って変な子だな)
唯 「だから、ボクはちゃんと切符は買ってて」
駅員 「できれば、料金を払ってくれないかな」
唯 「そんなぁ……」
梓 「お兄ちゃんをいじめるな!」
駅員 「 !? 」 -
- 105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 13:52:42.80 ID:s3QEyKEo0
-
梓 「お兄ちゃん、ちゃんと切符買いました! あずさ、知ってます!」
駅員 「お兄ちゃんって……別に疑ってるわけじゃ」
梓 「ウソです! お兄ちゃんをいじめるヤツ、悪者です!」
唯 「あずにゃん……」
駅員 「こっちは、料金を払えばいいって言ってるんだから」
梓 「いじめるな! えいっ! えいっ! えいっ!」
駅員 「痛っ、ちょっとおい」
唯 「あずにゃん、そんなことしちゃ……」
梓 「うあああああああああああああああああああああん」
駅員 (そんな大声で泣くなよ。うるさいなぁ)
梓 「ああああああああああああああああああああああああ」 -
- 106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 13:57:02.72 ID:s3QEyKEo0
-
梓 「ああああああああああああああああああああ」
駅員 「わっかたから、もう改札通っていいよ」
唯 「はい」
駅員 「今度同じことがあったら絶対、払ってもらうからね」
唯 「はい、ごめんなさい」
梓 「ああああああん うああああああああああああああ」
駅員 「絶対だからね」
唯 「あずにゃん……行こう……」
梓 「あああああああああああああああああああん」
唯 「よしよし」
- 110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 14:02:00.60 ID:s3QEyKEo0
-
梓 「ひくっ、ひぅ……ひぅっ」
唯 「もうすぐ着くよ。あずにゃん」
梓 「もう……ひくっ……すぐですか」
唯 「まだ、歩ける?」
梓 「へっちゃらです」
唯 「あの坂をのぼったらだよ」
梓 「坂の向こうに、パパがいるんですか?」
唯 「そうだよ」
梓 「坂、長いです。ずっと続いてます」 -
- 111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 14:05:01.80 ID:s3QEyKEo0
-
梓 「いち、にっ」
唯 「さん、しっ」
梓 「よいこらしょっ」
唯 「はあ~、もうちょっとだね♪」
梓 「はい――あっ! この匂い!」
テテテテテテッ
唯 「走ったら危ないよ♪」 -
- 113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 14:10:11.47 ID:s3QEyKEo0
-
梓 「海です!」
ザブ~ン ざぁざぁ
梓 「カモメもいます!」
唯 「あずにゃん、待ってよぉ」
梓 「お兄ちゃん、はやくっ、海ですよ!」
唯 「広いね」
梓 「波です! 誰もいません」
唯 「ちょっと、砂浜、歩こう」 -
- 116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 14:33:17.42 ID:s3QEyKEo0
-
梓 「足元、ざくさく言ってます」
唯 「裸足になると気持ちいよ」
梓 「くすぐったいです」
唯 「足の指に入ってくるね」
梓 「あそこに、ビン落ちてますよ」
唯 「あずにゃんは見つけるのうまいね」
梓 「緑のビン、きらきらきれいです」 -
- 117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 14:37:34.54 ID:s3QEyKEo0
-
唯 「疲れたね。ちょっと座ろう」
梓 「ひざで抱っこしてください」
唯 「ほらっ、おいで」
ザブ~ン ざぁざぁ
梓 「パパ、どこにいるんですか?」 -
- 119 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 14:40:10.23 ID:s3QEyKEo0
-
唯 「きっと、あの海のずっとむこうだよ」
梓 「あの夕日が沈んでるところですか」
唯 「そうだよ」
梓 「遠いです」
唯 「だからビンに書類いれて送ってあげようね」
梓 「はい」 -
- 120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 14:42:46.25 ID:s3QEyKEo0
-
梓 「イヌの絵も折りツルも入れます」
ザブ~ン ざぁざぁ
梓 「じゃあね、ばいばい」
唯 「ばいばい」
梓 「ちゃんと届けてください、お願いです」
ザブ~ン ざぁざぁ -
- 121 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 14:45:18.93 ID:s3QEyKEo0
-
唯 「あずにゃん、こっちおいで」
梓 「ちょっと寒くなってきました」
唯 「でも、あずにゃんがいれば、わたしはあったかいよ」
梓 「お兄ちゃん、大好きです」
唯 「夕日……きれいだね」
- ~ 終わり ~
保守ありがとうございました -
- 122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 14:46:25.91 ID:Q8Xiehf40
-
おつー
- 124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 15:04:46.90 ID:rhtwPxOT0
-
乙
- 126 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01 /10(月) 16:00:54.26 ID:NVE00cz10
-
オウフ、終わりでござるか・・・
乙 -
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| けいおん!!SS
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